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『歳月』読了。 江藤新平。 初期明治政府の司法卿としていちはやく時代の寵児となるも<明治六年の政変>で論に破れ下野し、 佐賀ノ乱の首謀として捕らえられ、晒し首にせられた男の「ふしぎ」な生涯。 極貧にして気質はなはだ悪し。回りすぎる頭脳と鋭利な舌鋒。 法整備への激烈な正義感と想像を絶する世渡り下手。 人間にたいするウブさ。(しかし可愛げは皆無) それゆえ政治人として決定的な欠陥を露わにし、政略としての惨刑へまっしぐらに落とし込まれた男の物語り。 ・・・・・ おもしろかった。そりゃもう…半端なくおもしろかったんだが^^; うーむ。 これ、ひどくない?ちょっとねえ。 終章の「大久保日記」を読んでいて気持ちが沈んでしまいました。 人間が人間に一番やってはいけないことをやった記録をここまでこくめいに書かれてはゲンナリする^^; 解説で多田道太郎氏が書かれていますが。 「小説『歳月』の後半は、大久保と江藤の死闘である。しかし読者の眼に明らかなように江藤の無力は悲惨である。」 ほんとうにその通りで…(涙) ・・・・・・ 「ねえ、司馬先生を嫌いになりそうなんだけど」 と姉に相談したら。 「『峠』を読め」 と事務的に的確な処方を受けました。 よみますよみます。 改めて司馬先生の絶大な威力を知った作品でございました。 (文庫あらすじより) 明治維新の激動期を司法卿として敏腕を振るいながらも、明治六年、征韓論争で反対派の大久保利通、岩倉具視らと対立。敗れて下野した江藤新平は佐賀の地から、明治中央政府への反乱を企てたが…。 34歳から41歳までのわずか七年間に、栄光と転落を味わった「ふしぎ」な生涯を描く傑作歴史長編。 「おれは元来、馬鹿と話す気になれない。一瞬でも馬鹿と対座することは生涯のむだである」 ↑江藤もこういう性格を直したほうがいいよ。命とりになるよ。 (あ、だから命とられちゃったのか!) ・・・・・ お気に入りのくだりは、部下の香月経五郎の江藤評。 <もう一度うまれ直せるものならオックスフォードの寄宿舎でストーヴを燃やしながら、金文字をきざんだ表紙の本をひろげてみたいものだ>などと妙にかわいらしいことを江藤が独言するシーン。 「(このひとは、それにふさわしい)」 「かれは英国貴族の家にうまれたほうがよかったであろう。田舎に領地と城館をもち、オックスフォードで学ぶ。それも専門はおそらく法律であるにちがいない。かれは学者になるより実務家の道をえらぶであろう。卒業すれば、法律事務所をひらくにちがいない。やがて国会に出てその雄弁と、つるぎのようにするどい論理をもって政敵を一人ずつ倒しつつ、おそらくは最後に首相の位置につく。外務大臣を兼務し、大陸の列強をむこうにまわして手の込んだ教会建築の外装彫刻のように華麗で複雑な、ときには滑稽きわまりない外交をやってみせるだろう。が、現実の江藤は、日本の佐賀藩士である。(略)いまは佐賀の田舎にいる。山麓の寺にいる。火鉢をかかえている。」 最後にひとこと。 大久保、すごいよね。 ☆☆☆ 『歳月(上・下)』司馬遼太郎 (講談社文庫 税抜・各714円)
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