石の思い

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読書メモ

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ご無沙汰です。もう4月も後半戦だなんて信じられませんね。
一年の1/3が過ぎようとしているんですよ。まって。いろいろ待って…!!(心の叫び)

そんなこんなで相も変わらず、つらつらと読んだ本の事などを。
忘れないうちにメモメモ。

『文豪』 松本清張 (文春文庫)
坪内逍遥の死と妻をめぐる異説。尾崎紅葉=泉鏡花師弟の確執。ひそかに樋口一葉を想う斎藤緑雨の孤高…。
従来の評論家・文学研究者と異なる角度から光を当て、取材と推理を駆使して定説の盲点を突く。
明治文壇史にさんぜんと輝く強烈な個性の栄光と悲惨を描き、文学研究者からも高い評価を受けた評伝的連作小説。(文庫あとがきより)

明治の文豪を題材にした推理小説?といえばいいのかな??
通史・通説の後ろに隠された、文豪たちの横顔、その陰影に迫った迫力の文章。

「行者神髄(ぎょうじゃしんずい)」 

娼妓あがりの妻の前身をひた隠しにし、山田美妙の天才へ激しい嫉妬から、文壇から美妙を追い落とそうとする坪内逍遥の暗い心中とは…。

「葉花星宿(ようかせいしゅく)」

今をときめく弟子・泉鏡花(いずみ・きょうか)への複雑な思いを秘めた文壇の重鎮・尾崎紅葉(おざき・こうよう)。
理想的な師弟の陰に隠れた各々の思いとは…。

「正太夫の舌(しょうだゆうのした)」

舌鋒するどく、世の中を文学者を、めったぎりにしつつも、ついに貧困と病のうちに死んだ斉藤緑雨(さいとう・りょくう)の樋口一葉(ひぐち・いちよう)に対する秘められた恋とは?
(※正直正太夫(しょうじき・しょうだゆう)は斉藤緑雨の別ペンネーム。)

全体的に「暗い情熱。暗い執念」といった感じで、読んでいてとてもしんどかったのですが。
↑これ、短編だといいのですが、中編以上でやられるとチョット疲れてしまう^^;

ただ、同じ題材で他作家さんの作品を読んだことがあるのですが、松本清張の文章の方が段違いで迫力があります。厚みが違うというか…。やっぱりすごい作家さんですね…。ふぅ〜。

一番面白く場面展開も巧みで「読みで」があったのは「行者神髄」でしたが。

年明けに樋口一葉(ひぐち・いちよう)の天才ぶりにKOされ。

「緑雨という男は幸福になるには骨がありすぎた。小骨もね。」
(辰野隆 『忘れ得ぬ人々』より)

のフレーズで、緑雨の生き様(っていうか死に様?)に痺れた身といたしましては。

ふたりが登場する「正太夫の舌」を楽しく読みました^^



斎藤緑雨の評伝をとある書肆から依頼された売れない老作家・「自分」が緑雨の足跡を辿る、といった内容。

主人公「自分」は、(どうやら緑雨は一葉に岡惚れしていたようだ)と指摘しています。

当時一葉の家は『文学界』の同人のサロンのようなものになっていて、緑雨もそこに足繁く通います。

一葉の日記より。緑雨を評して。(清張訳)

「この男、敵としてもおもしろいが、味方につけるとなおさらに妙味がありそうである。
 眉山や禿木など気骨のない男にくらべて一段と格は上と見た。」

(注:眉山…川上眉山(かわかみ・びざん)、禿木…平田禿木(ひらた・とくぼく)両者とも文学界同人。)


みごとな値踏みです。「敵にしても、味方にしてもおもしろい男」って…!!どんだけ魅力的。

こんな風にいわれる男も男なら女も女。絶品です。しかも書いているのは天才・樋口一葉なのですから。


どうやら一葉は、自分をもてはやすだけの当時の世間の評をあまり好まなかったらしく。

世間中が「熱涙を流した」とほめそやす「にごりえ」に対して、ひとり緑雨だけは、

「君が作中には、此冷笑(あざわらい)の心みちたりとおもふはいかに。」

と突きつけています。

「されど、世人のいふが如き涙もいかでなからざらん。そは泣きて後の冷笑なれば、正しく涙はみちたるべし」


「泣いた後の冷笑」とはすごい表現ですね。


貧しく苦しい生活。家長として母や妹の面倒を見、食べさせていかなくてはならない責任。うまくいかない商売。女が小説を書くということ。世間の評判。自身の才能への自負、などなど…。
苦の娑婆でぎらりと光る刃物のように冷たい目を光らせている一葉の姿が目に浮かぶようです。

めそめそ泣いて苛め抜かれているばかりではない、底光りする力の凄みのようなものを感じさせられます。

一葉もこの評を受けて、緑雨のことを「おもしろい男だ」と一目を置いたのでしょうか。

天才同士の火花の散る応酬です。

結局ふたりとも、貧困と病の中で早くに命を失ってしまうのですが。(一葉24歳。緑雨37歳。)
何かしら境遇にもシンパシーがあったのかなぁ?


うーん、緑雨と一葉についてもう少し調べたくなってきました〜^^


・・・・・・・・


『木に学べ』 西岡常一 (小学館文庫)

法隆寺金堂の大修理、法輪寺三重塔、薬師寺金堂や西塔などの復元を果たした最後の宮大工棟梁・西岡常一氏が語り下ろしたベストセラー。待望の文庫化。(文庫あらすじより)

西岡常一棟梁の聞き書き。聞き手は塩野米松さんです。

第六章の「棟梁の言い分」が面白かった〜。

「法隆寺の鬼」のエピソードをかいつまんで。(注:文章はこの通りではありません)


時は戦後まもない昭和24年。法隆寺で火を出してしまい、金堂の壁画を焼いてしまった時のお話。

国から「法隆寺の壁画を上野の博物館へ持っていってそこで保管することにした」

と通達があるんですね。

で、法隆寺サイドとしては、そりゃ嫌です。

でも強く言えない。火を出してしまっていますから。「お前らのせいだろう」となりますから。

当時の住職・佐伯定胤(さえき・じょういん)さんは困り果てて、西岡棟梁に相談しました。

「(壁画をもっていくのを)なんとか止めてもらえんかいな」

「はあ、さよか、ほなまかしておきなはれ」

***

さて、役人さんが来たので西岡棟梁が出てゆく。

「あんな、あんたな、よう考えてみい。あの壁画は法隆寺の本尊さまみたいなもんやろ。
やから持っていったりしたら、あかんよ」

こうお願いするわけです。(法隆寺から魂をぬくようなものだからやめてくれ)と説くんですね。

でも、役人さんは、決めたことだからそういうお願いは聞き届けない。

まあ、行政ですから。決めたことは履行するだけなんです。

「きさま、国の方針に手向かうのか」になっちゃう。

「定胤サンも悲しんでおられるし、ほんでな、どうしても、持ってくっていうんならな」



「あんたの首、ノコギリで挽いてしまうで」



棟梁!!棟梁!!

それ、脅しですよね?ハイ、わかります。まごうことなき脅しです

ちょうど50人くらい若い大工もいるしって。

実力行使ですね。棟梁!!


「ときにはそういう無茶なことを言わんと道理が通りませんのや」


す、すごいです…。

国としても文化財保護は急務だったので、どっちが良い悪いの話ではないのでしょうが^^;

「自分は法隆寺の大工だから法隆寺がわに付く」とはっきり言い切る西岡棟梁の毅然とした態度には胸を打たれます。

どっちつかずだと、結局どこにも行けないし、何にもならないんですよね^^;
…なんだかそういうこともいろいろ考えさせられました。

西岡棟梁の尽力もあって、壁画は法隆寺が保存することになったそうです^^

そしてこの火災をきっかけに毎年1月26日の「文化財防火デー」が設けられたそうです。

へええー。

・・・・・・・

そんなこんなで。こんな感じで。

ではまたー。

閉じる コメント(19)

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清張さんにこんな作品があるなんて知りませんでした。
これは是非にも読みたい。
いい本を教わりました。

美妙は昔、1冊だけ読みました。
忘れているので読み返さなくっちゃ。

で、樋口一葉、実はまだ読んだことがないんですよ。
2ヶ月くらい前に一葉の話が出たことがあって、読まなくちゃいけないと言われたばかりだったんです。
いいタイミングだから、一葉にも手を出してみます。

背中を押してくれる記事だったのでポチ!

2012/4/22(日) 午後 6:49 [ sho*ha*ng*5 ]

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あんごさんの読む本は、毎回重厚です。まだまだ読まなくてならないものがたくさんあるぞと毎回思い知らされる。いいなあ。

2012/4/22(日) 午後 7:33 miffy_toe

早いですね。一年の1/3ですか。まだ凄く寒いのに。^^;

松本清張最近読んでないけど凄く面白いですよね。
本当にすごい迫力をもった作家だと思います。

棟梁の本はベストセラーなんですね。
「あんたの首、ノコギリで挽いてしまうで」には爆笑してしまいました。
でもマジなんでしょうね。命を張ってるのが伝わってきます。
只者でないし、おもしろそうですね。

2012/4/22(日) 午後 8:56 [ Across the Universe ]

松本清張は、こういう話も書くんですね。これは読んでみたいです(^-^)
緑雨、気になる男ですね。惚れてしまうかも(笑)

「木に学べ」も、このエピソードだけでも、読んでみたくなりました♪

2012/4/22(日) 午後 11:09 [ タカ ]

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斎藤緑雨は好きですねえ。もう、20年前に明治の作家の作品を逍遥している時に見つけて、これぞ明治の作家と思いました。露伴、鴎外、緑雨という三傑の中で緑雨一人が忘れ去られたようになっているのは非常に残念でした。
全集が出たときにはありがたいことだと思いました。
緑雨は一葉のなくなった後に、随分遺族の面倒を見たり、遺稿を預かって保存したりしていて、非常に信頼されていたようです。
「按ずるに筆は一本也、箸は二本也。衆寡敵せずと知るべし」
まさにその通り。しかし、この言葉、現代の作家に聞かせてやりたいですね。

2012/4/23(月) 午後 7:38 [ bat**yu2*01 ]

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この2冊も凄い!美味しいわぁ。。
「敵にするにも味方にするにも・・」って痺れます
棟梁の脅しに思わず吹き出したwww
いいなぁこうゆうピンとした人物最近少なくて詰まらないですね
キリばっか。。私もキリだがな。。(嘆息

2012/4/23(月) 午後 11:03 [ 金の木馬 ]

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shoさん、こんなマニアックな記事にコメントありがとうございます!おお、shoさんは山田美妙を読まれたことがあるのですね!どんな作風なのかな??最近岩波文庫で復刊(?)されていたので読んでみたいです^^おおおそのうえ樋口一葉にもご縁が?偶然ですね〜^^ぜひぜひ!
ポチありがとうございます。うれしいです^^

2012/4/24(火) 午後 11:28 ang*1jp

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すてさん、松本清張の小説は読んでいるとちょっとシンドイのですが、やはり執念と迫力にやられてしまいます。ただ、女性が読むとちょっと「…」と思う部分もあるかもです〜^^;(特に「行者神髄」^^;)
西岡棟梁の聞き書きは本当に面白いです!写真もいっぱい掲載されていて、塔にかける宮大工の「本気」というもがをひしひしと伝わってくる素晴らしい一冊でした〜。ベストセラーになるワケだわ。

2012/4/24(火) 午後 11:42 ang*1jp

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タカさん、緑雨いいです。そうとうなひねくれ者だったようですね。露伴翁いわく、「ほんとうは、内気な、遠慮深い、気のまわり過ぎるほどまわった人」なのだそうです。「気がまわったから、まわらぬ奴が馬鹿にみえた」←このあたりは笑うしかないですが^^;
惚れるには勇気がいりそうな御仁です(笑)
あっ、「木に学べ」にもご興味がありますか?西岡棟梁もそりゃいい男で、いい男で。それこそ惚れちゃいます!

2012/4/25(水) 午前 0:03 ang*1jp

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東行さん、もう3/1ですよ!どうしましょうどうしましょう(落ち着け)コメントの順番がずれてしまってすみません。動揺しすぎました(笑)
松本清張は実はあまり読んでいないのですが、文章の迫力と執念に圧倒されました。そうそう坂口安吾も「文章甚だ老練、また正確で、静かでもある。(中略)この文章は実は殺人犯人をも追跡しうる自在な力」がある、と絶賛しています。芥川賞受賞の時のコメントです。松本清張って直木賞かと思ったら芥川賞なんですねー。と、無理やり安吾ネタをねじ込んでみました(笑)
西岡棟梁の本、本当に面白かったです。ノコギリ云々の所は、言葉のあやではなくて、本気で言っているところが凄いですよね!自分の命を法隆寺の再建に捧げている姿に感動しました…。

2012/4/25(水) 午前 0:35 ang*1jp

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バタイユさんは緑雨お好きなんですね!なんとなく分かるような^0^ヤセ我慢が人間の姿をして歩いているみたいです。歩いた結果が早死にでも、それは別にかまわないような人なんですね。
「按ずるに筆は一本也、箸は二本也。衆寡敵せずと知るべし」
ううん・・・・ここまでわかっていて負け戦に臨むってスゴイですね。一葉の死後も遺族の面倒をみていたんですか?そういったやさしさもある人だったんですね^^

2012/4/25(水) 午前 0:36 ang*1jp

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金の木馬さん、「敵にするにも味方にするにも・・」←本当にこんな男がいたら会ってみたいですね!!電信柱の陰からでもいいから一目垣間見たいです(笑)
棟梁のノコギリトークも痺れますでしょう♪本気なんです。本気で脅してるんです。どうしても壁画はもっていかせたくないんです。惚れますわ、コレは〜(><)

2012/4/25(水) 午前 0:39 ang*1jp

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こんばんはあんごさん。『或る「小倉日記」伝』も清張でしたね!。こちらは鴎外でしたが・・。緑雨は今読みやすくなったので一度読んでみるのもおかもしれません。露伴も緑雨も独特の気質なのですが、一葉も含めて江戸の名残というかそんな気質を持ち合わせた人たちだというのがわかるような気がします。

2012/4/26(木) 午後 9:19 kms*30

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東行さん、ぎゃっ!3/1って…!!分母分子逆転しちゃいました(恥)。どんだけ焦ってるんだって感じですね^^;失礼しました〜。

2012/4/27(金) 午前 0:20 ang*1jp

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もねさん、そうそう『或る「小倉日記」伝』は鷗外でしたね!ちょっと気になったら調べてみたら松本清張の絶筆も鷗外論だったんですってね^^小説ではないようですが興味がわいてきました♪一葉、露伴と読んでとても面白かったので、ぜひ緑雨も読んでみたいです^^

2012/4/27(金) 午前 0:30 ang*1jp

アハハ、何故か1/3ってわかりましたよ。^^;

風に舞いあがるビニールシートの「鐘の音」という小説が
仏像修復に尋常ならざる情熱を燃やす不器用な職人と親方との確執を描いていて
あんごさんが最近読まれているのと雰囲気が似てそうだなって思いました。^^

2012/4/28(土) 午後 10:03 [ Across the Universe ]

あんごさん〜先日棟梁の映画見ましたので、本も読みたいです。。
法隆寺の火災は覚えがありますよ〜〜〜。

2012/5/10(木) 午前 9:52 miyama

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東行さん、ご無沙汰しておりました^^おお、1/3だと分かりましたか!テレパシー?(笑)「風に舞いあがるビニールシート」の「鐘の音」ですね。これはチェックしなくては^^なんとなく露伴の「五重塔」を思わせる設定ですね^^面白そう〜。教えて頂いてありがとうございます!!

2012/5/26(土) 午前 8:14 ang*1jp

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miyamaさん、ご無沙汰しておりました。miyamaさんも棟梁の映画、ご覧になったんですよね^^いい映画でしたね〜!!機会があったら本もゼヒ〜♪日本の文化財って木が多いから火災が本当にこわいですよね^^;

2012/5/26(土) 午前 8:16 ang*1jp


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