石の思い

ヤフーブログおわっちゃうんですね。あわててFC2にお引越しししました。

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「あの頃、ぼくらにはJ・J氏がいた。」

                 『植草甚一コラージュ日記〜東京1976〜』
                     


新刊本を一冊。

本や雑学やジャズが好きなひとなら、「J・J」という名前は一度や二度は聞いた事があるでしょうか。
私も名前だけは知っていました。そしてあこがれも^^

そんなこんなで「J・J」こと植草甚一(うえくさ・じんいち)氏の本を手に取りました。

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画像を見ていただければ分かるように本書はすべて手書き。
文字やコラージュにもいちいちうっとり。
内容は1976年の1月から7月までの日記です。
『植草甚一スクラップ・ブック』(全41巻)の挟み込み「月報」を書籍化したもの、とのこと。

「全集の投げ込み、という月報の性質上、いまこの日記をまとめて読むのは困難になっている。」

と前説で瀬戸俊一氏が書かれています。

1976年の東京。冬から夏をぶらぶらと歩くJ・J氏の姿や時代のこうばしい空気を味わうにはもってこいの一冊らしいのです。

とにもかくにもぜいたくな一冊です。

***

1ドルは300円だったし、ニューヨークはとても素敵そうだった。

日本・東京・世田谷区・経堂。

バスに乗って散歩に出かけ、喫茶店に入ってコーヒーを飲む。

古本を買ったり、雑貨を買ったり。毎日毎日そんなことをしている。

たまーに銀行のバランスを慎重にながめて、もう少し貯まったらニューヨークに行こうと思っている。

三井銀行3787820
富士銀行1982892

まだまだだなあ。

印税が入るとうれしいし、古本がいっぱい買えるな、と想像する。

ヘンテコな文房具も欲しい。大きな石の嵌ったネイティブ・アメリカンのアクセサリーなんかも。

原稿ペラが20枚ほど書けた。ゼロックスする(1枚三十五円)。これは梅公にたのむ。

編集者に渡す。彼コカ・コーラのお盆を気に入ったようなので、あげる。うれしそう。

疲れたから、気晴らしに隣室で古本の移動。紐でゆわえる。ゆわえていたのをほどく。

しばらくしてから、やっぱり散歩にでようと思い外へでる。

古本屋で洋書の雑本十四冊(四〇〇〇)。掘り出し物あり。

*****

新聞はロッキード疑獄の記事。ジャッキー・マクリーンのコンサートにいく。

マーガレット・ミラーのミステリを読む。メキシコの僻地。単純でローカル。そして強烈なイメージ。

池波(正太郎)の「真田太平記」続き読み始める。

「スイング・ジャーナル」社に行かなくちゃ。

でも「プレイボーイ」のパーティーに行くのはやめよう。

今日は一日うちで池波原稿をがんばらなければならない。

西武のパルコ展も見にいかなくちゃ。行ったら会場でピーター・マックスの画集をもらう。

帰りに「ロロ」でコーヒー。別館のコーヒー・ショップもチェック。雰囲気がとってもいい。

*****

今日は「応仁の乱」と「シムノン・イン・パリ」の一日。

ようやくクリスティーの原稿できた。ゼロックス。

富士銀行でドルの小切手つくってもらう。いよいよだなあ。(ニューヨーク)

バスで新宿へ。シチズンの小型ウォッチ。よさそうなので買う。まけてもらった。

紀伊国屋書店でフランスの本四冊。

*****

銀座へ。野村証券の褐色ビルがスマートなので気に入った。

ソニー・プラザでフランス製の安い孔あけ器(三八〇円)。

イエナで二冊(三七五〇円)。

***

(※注「ゼロックス」=いまのコピー機。(当時は一枚35円もしたらしい!))


コーヒーの良い匂いがぷーんとしそうな、古本のあの甘いお菓子みたいな匂いが漂ってきそうな(なんで古本って甘い匂いがするんだろう?)、舶来もののパイプや、ニューヨークのキッチュなガラクタや、生まれたての銀座の新ビル、時代小説やジャズ、ミステリ…そんなものが当たり前みたいに身の回りにあって、その雰囲気にみんなしてよっぱらってあこがれ尽くしたJ・J氏の姿がチラリと垣間見える「日記」でした。


「こんなに知っているんだぜ」、じゃなくて、「こいつは凄いなぁ、唸ってしまった」
と少年のように目を輝かせてジャズを、ミステリを、そして古書を語る明治生まれのJ・J氏に、昭和のワカモノたちはあっというまにマイッテしまったのかしら?マイッチャウよねえ。

「いつも夢中になったり飽きてしまったり」

「ぼくは散歩と雑学がすき」

ぽつりぽつりとそんな事を呟きながら、ひとり気ままに歩いている風来坊です。ケンカは弱そう。

「いい雰囲気の人」というのは、なかなかに良い褒め言葉だと思うのですが。
私にとってのJ・J氏は、そんな感じの人だなあ。

その人の世界を壊してしまわないように、なるべく邪魔せずに、でももっと近づいてみたいような気にさせられる人です。


「そういえば植草さんはいつもリラックスしていた」


巻末の高平哲郎氏のエッセイより。この一節がとても素敵でした^^


☆☆☆

『植草甚一コラージュ日記〜東京1976〜』(植草甚一 著 平凡社 1000円・税別)

閉じる コメント(23)

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1976年を思い出しますね。ようやく思春期に差し掛かったかどうかという頃ですから、けっこう記憶は鮮明にあります。
僕には明るい時代に思えます。読書欲も旺盛で毎日何かしら本を読んで、何かしら書いていた気がします。
ある意味、植草氏のような人には憧れていましたね。当時は知りませんでしたが。

2012/9/13(木) 午前 11:35 [ bat**yu2*01 ]

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しろねこさん、コメント・TBありがとうございます。さっそく伺いますね〜♪J・J氏、この歳になって初めて読みました^^
「偉大なるアマチュア」←おお、ぴったりな例え!!プロというよりアマチュア・趣味人といった方がしっくり来る方ですね^^
手書き日記とても素敵でした〜。ペンもいろいろ変えて書かれているらしくて、味わいのある字でした。内容はどうってことないのですが(←爆)「この日付の万年筆欲しいな〜」とかけっこう物欲を刺激されて困ります〜(笑)

2012/9/15(土) 午前 9:13 ang*1jp

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もねさん、『スクラップ・ブック』やはりもねさんは幾冊か所蔵されてましたか^^
全41巻も出ているんですね〜。その分量にまず驚きです!
洋書イエナは銀座のあこがれの場所でしたよね。特別な空気が漂っていそうで…。(私は一度も行くことがないまま閉店してしまいましたが^^;)

2012/9/15(土) 午前 9:20 ang*1jp

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no iszyさん、「どこかに行きたいけど行けない時」←そうそう、まさにそれです。なんだが自分がふらふらとあてどなく散歩をしている気持ちになります^^
カラーコピーも安くなりましたよね!A4で250円ですか。うわあ、2枚で豪華なランチが食べられる(笑)
デザイン系の学生さんは身を削って作品を作っていたんだなあ(;;)

2012/9/15(土) 午前 9:23 ang*1jp

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バタイユさん、1976年は明るい時代でしたか^^バタイユさんは思春期まっただ中だったのですね!うらやましい!
ぶらぶら散歩して、喫茶店に入ってコーヒーを飲みながら古本を読んでいるオジサンがいる時代って、いいですね。あこがれちゃいます。むずかしい事じゃなくて文化ってそういう風な時代の空気なのかな〜と思ってみたりみなかったり^^

2012/9/15(土) 午前 9:29 ang*1jp

最高のジャズを味合うのは、ジャズ喫茶でブラックコーヒー飲みながら、
J・J氏のスウィングジャーナルのコラムを読んで、タバコをふかすことかな。^^
あ、自分はブラックコーヒー飲みながら、こっそりチョコレート派ですが(笑)

「ぼくは散歩と雑学がすき」というところも気に入りました。
ジャズ喫茶でJ・J氏のなにか読んでみようかな。。。。まだあるんかいなジャズ喫茶。( ▽|||)

2012/9/15(土) 午後 8:51 [ Across the Universe ]

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あんごさん、こんばんは。お元気ですか?

ぼくも昔JJ氏、大分読みましたが、このお三方の意見に賛同しています。ぼくはこちらの三人の大ファンです!
http://d.hatena.ne.jp/hirohut/20080724/p2

ぼくのおすすめは「植草甚一読本」(晶文社)です。いろいろ雑多な文章が詰め込まれていいですよ。対談、別の日記 等も収録されています。

2012/9/15(土) 午後 11:15 [ nadajpm ]

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続きです。
集中、特にこの一文が好きです。

「ある一人の老人がいて色鉛筆をワン・セットもらった。それは水溶性の色鉛筆だったので、貧乏をしている飲んべえの老人は安ウィスキーで指先をぬらすと、画用紙のうえをこすった。

『なるほど面白い色鉛筆だねえ』と老人は言ったが、そのときから五十年以上まえの少年時代にもどってしまった。そうして安ウィスキーをチビチビやっていると、曲芸団にいた昔のことや、おしりの大きい綱渡り女などの思い出が浮かんでくるのだった。

そのころ西ドイツで発明された水溶性の色鉛筆は子供向きのものだった。いったいそれをだれが老人にやったのだろう。ぼくはそれを知りたくてしょうがない。」
植草甚一『ゾンネンシュターン 「熱の雅歌」』より
http://images.artnet.com/artwork_images/424299799/648514.jpg
http://www.galerie-taube.de/ausstellungen/207/pictures/hor/29.jpg

2012/9/15(土) 午後 11:21 [ nadajpm ]

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イラストも素敵ですが、綺麗なよい字を書く人ですね。「読みたくなる文字」です。
あんごさん、お体の調子はいかがですか?
休薬期間ってよくわからないけど、いいことなんですよね、きっと。

2012/9/17(月) 午前 1:10 cokeru

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東行さん、ジャズ喫茶でブラック・コーヒー…あこがれますね〜♪自分は煙草は吸わないのですが、紫煙がもくもくしててもいいなぁ。灰皿にぎっしり吸殻が詰まっても誰も捨てない感じで(笑)雰囲気がありますね^^ジャズ喫茶というと、なんとなーく村上春樹氏のイメージもありますね^^
「僕は散歩と雑学がすき」←素敵なタイトルですよね。
…あっ、私もチョコレート派です(笑)

2012/9/17(月) 午後 3:52 ang*1jp

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nadaさん、こんにちは、休薬期間中なので羽目を外してあちこち飛び回っていました〜^^おかげで筋肉痛です。今日は早く寝なくちゃ!nadaさんもJJ氏お読みだったんですね。お三方のインタビュー拝見しました。面白い!!「スーパー・アマチュア」とはとてもぴったりくる表現ですね!
「何の分野でもそうだけど、あれほど浸りきるとマニアックになる。甚さん、マニアックにもならないんだ。」←久保田二郎氏の言葉にぐっときました☆なんだかそういうJJ氏を羨ましがっているみたいで、ほほえましい…。

2012/9/17(月) 午後 4:09 ang*1jp

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(続き)
「植草甚一読本」←探してみますね^^
引用の文章、とても素敵ですね!
ゾンネンシュータンという画家のことはまったく知りませんでしたが、この一文でこの画家さんの存在を知る事が出来た人は幸福かも^^もっと刺激的でグロテスクな紹介の仕方だっていくらでもできそうな経歴の方ですよね^^;(←調べました)
JJ氏の紹介文は、とてもナイーブでロマンチックです。

2012/9/17(月) 午後 4:15 ang*1jp

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早乙女さん、そうそう、文字がとても素敵ですよね!!読みながら「この日付の文字を書いたのと同じ万年筆が欲しい!」とか思っちゃいました。(←あっ、この日記って日によってペンを使い分けているのです。)手に入れた所で同じ文字が書けるわけでもないのに(笑)
身体の心配ありがとうございます(;;)
お薬は2週間飲み続けて1週間お休み(3週間×8クール)を半年間続けます。今は1クール目の休薬期間中です〜♪
薬を飲まないとやっぱり体がラクです^^1クール目後半で足の裏の皮が薄くなって(?)歩くのが辛くて「やばいやばい」と思い始めたころに休薬、そうしたら急にラクになりました^0^(アメとムチが非常にうまく出来ているなあ)と感心しきりです。
おかげでこの休みはいっぱい歩けましたよ〜♪

2012/9/17(月) 午後 4:31 ang*1jp

村上春樹のジャズ喫茶店行きましたよ。
懐かしい〜。

2012/9/17(月) 午後 9:21 [ Across the Universe ]

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東行さん、おおう!!行かれたことがあるんですか〜!!??
す、すごい〜(><)国分寺にあったのですってね^^
生の村上春樹氏ってどんな感じなんでしょう?接客とかできるのかな?(←失礼)まったく想像がつきません…^^;

2012/9/18(火) 午後 10:03 ang*1jp

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この記事見逃してました。すみません。

20代のとき、上草甚一から色々教わった一人です。

不思議な人ですよね。
アメリカの最先端の文化を紹介して、アメリカのことなら何でも知っていたのに、実際にアメリカに行ったのはこのとき、もう60代後半か70代初めのときなんですよね。
NYの古本屋に毎日通い、手押し車いっぱいのペーパーバックスを毎日購入するので、店主に「お前は日本で古本屋を開業してる同業者か?」と聞かれたそうです。

逸話の多い人なので事欠かないんだけど、そんなところが当時の若者にはたまらない魅力だったんです。

2012/9/21(金) 午前 10:55 [ sho*ha*ng*5 ]

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続き:

当時のことだけど、ある新米女性編集者が氏のお宅まで原稿取りに行かされたそうです。
氏は、原稿を渡した後、ちょっと待ちなさい、美味しいコーヒーを淹れてあげるから。
といって、彼女の方に向かって歩き出したんだけど、社会の窓が開いていた。
当時の若い女性だから、びっくりして怖くなり、第一、植草甚一が何者か全然知らなかったので、慌てて飛びしたそうです。
社に帰って、その話をしたところ、凝り性の植草氏の淹れるコーヒーならどんなにか美味しかったことだろう。
そんな光栄に浴した編集者は1人もいないんだよと、みんなにあきれ返られたと言う話を当のご婦人から聞いたことがあります。

2012/9/21(金) 午前 11:09 [ sho*ha*ng*5 ]

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shoさん、おおおshoさんもJJ氏にいろいろ教わったおひとりでしたか!!逸話を知れば知るほど不思議な方ですね。明治生まれの日本人があんな自由にかろやかにアメリカの文化を呼吸できるものなのか、・・ちょっと宇宙人を見るようです(笑)

2012/9/30(日) 午後 3:32 ang*1jp

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shoさん、うおう、すごい逸話を…。JJ氏の淹れるコーヒー、ソーサーの飛び散った一滴でもいいからすすりたいですよ。(ゴクリ)その女性編集者さんが羨ましい〜。もったいない〜。でも、社会の窓が開いていたらやっぱりびっくりして逃げちゃうかも^^;(時代が時代ですものね)そんな逸話を直接聞いたshoさんが羨ましい…!!!!

2012/9/30(日) 午後 3:37 ang*1jp

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いいですね、この本欲しいな。。なんか、涎が出ます(笑

2012/10/9(火) 午後 10:27 [ 金の木馬 ]

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