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「 水音 」 8 幻住庵 三人の若者たちが、談笑しながら石段を登っている。 「 秋の初めは いいなあ、朝の空気はひんやりとして、ちょうどいい 気候だね 」 幻住庵の石段は緩やかである。 「 幻住庵って、もっと高い所にあると思っていたのに、もう門が見えてき たわ 」 三人は、周りを見ながら登って行く。 「 ここに俳句の書いた短冊が木にぶら下がっているよ、小学校の生徒 たちが書いたのだろうね 」 石段を登り終えると、小さな山門がある。 若者達は、その門を潜って境内に入った。 自然石の句碑が立てられている。 「 「 先づ頼む 椎の木も有り 夏木立 」 か 」 「 どういう意味かしら 」 「 芭蕉は、ここにしばらく住む気になって、自然に対して よろしく頼み ますと挨拶したのだろう 」 若者達は、幻住庵跡を通り抜け、小高い所に移された庵へと向かって 登って行った。 石段の下の方から、親子連れが登って着た。 細身の男が、赤い服を着た小さな女の子の手を引きながら、ゆっくりと 歩いている。 蝉が鳴き出した。 女の子は、すかさず 蝉の鳴き真似をし始める。 親子は、静かに庵へと向かった。 若者達はもう居ない。 男は、幻住庵の濡れ縁に腰掛けた。 女の子も、敷石に上がってから、同じように縁に腰掛けた。 日が少しずつ高くなり、蝉の声はだんだんと多くなってきた。 山一面へと、広がってきた。 ところどころ紅葉化した、もみじが美しい。 幻住庵は いかにも 静かである。 ただ 蝉の声が 山となっている。 |
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