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リッキーが ひょっこりと 逢いに来た。
娘の古いパソコンに残っていた リッキーの写真。
すべて 忘れたかったのに。
私ら家族と 相思相愛 だった。
気立ての好い 娘だった。
神がよこした 白衣の天使 で あった。
近所から 貰った ボメラニアン系の雑種。
黒毛混じりの 目も覚束ない赤ん坊、 男の子だと言うので 引き取ったら
またしても 女。
男名前のままに なってしまった。
愛咬で 手を強く咬み 契りを 交わした。
徐々に 咬まなくなり だんだんと 成長していった。
暴走犬だった。
朝に夕暮れに 門扉の前で 首輪と引き綱をして貰うのを 待ってた。
バイクを出せば、背伸びし 足置きに前足を掛け、立ち上がり前の買い物
カゴに 自分から入ろうとしてた。
50キロも速度を出せば 超機嫌、 超近眼でも モノクロでも、 白い
毛を たなびかせ つつ
鼻の大散歩を 楽しんでいた ようだ。
話しかけると その言葉を理解しようとして、いつも 小首を 傾げては
必死に わたしを 見つめていた。
悪戯に 言葉を続けてやると、かなり首が傾き 苦しくなると、リセット
して 真っ直ぐに戻し またやり直してた。
左効きなのか 決して反対には傾けなかった。
好物は 汁ものダシ残りの味気ない昆布、 あげると 喜んで ムシャムシャと
食ってた。
だからか、年老いても 毛は ふさふさ ふわふわ つやつや 真っ白。
私は 滑らないよう 足先の毛ばかり 切っていたような 気がする。
実験もした。
物の本によれば、飼い犬はその家族の下から二番目に 自分の位置を
自分勝手に 決めるという。
その とおりだった。
だから、末の娘を殴る真似なんかしたら、私にも吠えついて、守ろうとし
てた。
第4女 なのに。
そのくせ、同じように しても、他の娘には 知らん顔 、ご自分で
どうぞ か。
女房にしてみたら、関わらんように か、 尻尾を下げ 逃げて行った。
「夫婦喧嘩は 犬も食わぬ」
を 実感した
13年間 家族だった。
感情移入し過ぎだ と 人よ 言わば 言え。
複雑な 気持ち なんだ。
人も犬も ほぼ 同じじゃないか、ほほに 長い髯が あるのが
それが 犬、 ないのが 人間。
三回忌の日に 娘婿らを交えて お墓に参り。
他のお墓には 十三回 の木札の建ったのまでが あったけれど、
私は 想いを 断ち切った。
去った日のことは もう 思い出さないように している。
私は 二度と 犬を 飼う気持には なれない。
今度は 多分 同じ思いを 犬にさせることに なる だろうから。
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