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「 青春は 甘美な狂気に 満ち溢れ 」 虚空 「 水音 」 ー プロローグ − 1 琵琶湖 男の手から放たれた石礫は、弧を描いて空を飛び、水面に落ちて 軽い水音を立て、飛沫を上げた。 男は湖畔の芝生の上で、両足を伸ばして座っている。 真昼の湖は春霞がかかり、わずかに風波を立てる。 湖からきた生暖かい風が男の耳をかすめて、町の方へと去る。
男は おもむろに立ち上がって、少し大き目の石を見つけてきた。
そして 暫く間をおいて、その石を湖に向かって投げる。 湖には千切れた藻が浮かんでいて、その身を波に委ねている。 男は、再び芝生の上に戻って、石が作った波紋が緩やかに広がる 模様を眺めた。 男は、この動作を幾度と繰り返した後、 「 この水音が 俺なんだな 」 と、小さい声で呟く。 そして、もう一度、こぶし位の石を探してきて、その石を湖へと 向かって投げた。 石は 大きな水音をさせて、波の輪を作る。 男は、少し大きな声を出し、叩きつけるように叫んだ。 「 この水音が 俺なんだ 」 男は、ゆっくりと目を上げ、遠くを眺めた。 比叡の山は、霞んでいて その姿は見えない。
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水音
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