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たなかじゅんのヨモヤマ日記
漫画家たなかじゅんのブログです。ツイッターもやってます juntnk FBもやってます。

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いい話2

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日立工機の仕事ほぼ終わりナリ。
グニャグニャしたデザインの電動ドリルは描くのが大変でした…




さて、先日予告したおおた工業フェアでのいい話・その2です。長文です。


チーム職人魂ではスターリングエンジンの開発・製作をやり展示しています。

しかしそれは商売を考えたものではなく、
大田区の町工場の技術力でもって面白いものを作り、それを展示することで
「ものづくりというのは楽しいんだ」ということを世の中に発信していこうというのが主旨です。

昨年は苦労して作ったエンジンを展示するだけでしたが
「今年は何か違うことをやろう」ということで
簡単な構造の基本的なスターリングエンジンを元に
メンバー各社がそれぞれのアイデアと技術でもって
バリエーション豊かなオリジナルモデルを作り
それを一斉に展示する…ということをしました。

この目論見は大いに当たり、
ひな壇の上にズラッと並んだいろんなデザインのスターリングエンジンが
一斉に動いている様子は、お客さんの注目を引き
いつもお客さんで賑わうブースとなりました。

で、「展示だけじゃ面白くない、これを試しに売ってみよう」という話になり、さらに

「いや、ただ完成品を売るのじゃおもしろくない、
ものづくりの楽しさを伝えるのであればそれは組立てキットだ」

ということで、各社オリジナルデザインで作ったスターリングエンジンの、その基本モデル
プラモデルのように組立てキット販売することになったのです。
台数は限定3台

ただ値段が、ほとんど儲けを入れなくても
28000円と、どうしても高額になってしまうので(少量生産、その他の理由による)
なかなか手が出る商品ではありません。

正直「売れるかどうだかわからない」といったものでした。


しかし世の中には「好きモノ」(といったら失礼か)がいるもので
初日に1台、2日目に1台と買ってくれる人がいるじゃないですか。

まぁお二人とも会社の経営者だったりするので、それほどの負担ではなかったのかもしれません。
ただ純粋に「ものづくりの楽しさ」に共鳴して買ってくれたんだろうと思います。


で、最終日。
販売キットには「売約済み」の札が貼られ、残るはあと1台。

その1台を、ものすごい興味で見つめる一人の青年がいます。

彼はH君(先日のH君ことヒヅメさんとは別人です)。
S工科大学の学生さんです。

工学部の研究室にいる彼はこのスターリングエンジンがどうしても欲しいようです。
これを使っていろいろ勉強したい…きっと楽しいに違いない…と。

しかし彼の財布には3000円しかありません。
28000円のスターリングエンジンは買えません。

しかしどうしても欲しい。
この機会を逃すと二度と買えない。
これは世の中に3台しかなく、しかも2台はすでに売れ
しかもおおた工業フェアは今日が最終日です。

彼は自分の大学の研究室の予算で買えないものかと携帯で電話します。
しかし本年度の予算はもう残っておらず買えない…。

それから彼はそのスターリングエンジンの前で携帯片手に金策に走ります。
いろんなところに電話をかけています。
28000円がなんとかならないものかと、それはもう必死です。

しかしどこも頼るところはありません。
これは実家に掛け合うしかないだろう…彼は意を決して実家に電話をかけます。

電話に出たのは母親です。


本来母親というのは息子に甘いものです。
わが息子は可愛くてしかたがない。
しかし母親というのは女性であり、かつ家計を預かる堅実な主婦であります。
毎日の生活費のやりくりを生業としているリアリストであります。

そんな母が「何の役にも立たないオモチャ」28000円も出すという決断をするわけがありません。
「男の子の気持ち」「男の夢とロマン」などわかろうはずもないのです。


ついに彼は最後の金策に失敗し、うなだれざるを得ませんでした。

それを見ていた我々チーム職人魂の面々。
「そこまでほ欲しがってくれるなんて」という喜びとともに
それを買えない彼の落胆する姿が不憫でなりません。

しかし、ここで「じゃあ特別にまけてあげるよ」とか言っていいわけではありません。
3000円までまけなければ彼は買うことはできませんし
そんなことはしてはいけないのです。

「値段を下げる」ということは
「自分の技術(価値)を安く売る」ということです。

製造業が下に見られることも多い風潮の中で
自ら自分の価値を下げるようなことは職人としてはしてはいけません。

かつまた「思うようにいかずに我慢せざるを得ない」なんてことは
社会に出れば当たり前のようにあるものなのです。
ここで温情を示せばきっと彼のためになりません。

あきらめきれずにスターリングエンジンを見つめ続ける彼。その姿は

「ショーウインドウに飾られた金ピカのトランペットを見つめる貧しい黒人の少年」

まさにそのものです。


あまりに不憫なのでこちら側からひとつの提案をしてあげました。
「いっそ自分で作ったらどうか」と。

彼は工学部の学生で、聞けば工作機械なども学校にはあるようです。
図面さえあれば頑張ったら作れないことはありません。
(動くかどうかは精度次第ですが)

そんな我々からの提案を彼は「ホントに出来るだろうか」という不安気な表情ながら
「しかしそれが今一番ベストな答えだろう」ということで受け入れる決意をします。

もちろん平田先生設計の図面はタダであげます…と。
ついでにボクの作った組立て説明図もタダであげます…と。
そんな話で一応まとまりました。



「貧乏学生にとっては確かにすぐに買える値段じゃないしねぇ…」
「でも本来の【教育用】という観点から考えると、一番手に入れてほしい立場の人なんですけどねぇ」
「ま、でもこれが現実なんですよね…」

などと、先ほどまでのシーンを反芻していると
彼がもう一度やってきました。

「どうしたの?」と聞くワレワレ。

すると彼は満面の笑みでこう応えます。

「あ、あの…スターリングエンジン買うことが出来ました!」


話によると、やはりあきらめ切れなかった彼は再度実家に電話をしたと。
そうすると電話に出たのが先ほどの母親ではなく父親

「なぜこのスターリングエンジンが欲しいのか」「どうして今日でなければならないのか」
ほとばしる熱意でもって語る息子…

お父さんはうれしかったのかもしれません。
父親はでもありかつであり、かつては好奇心旺盛な少年だったのです。
息子の気持ちが痛いほどわかります。
メカに憧れる気持ちも、かつて少年だった自分もそうであったようによくわかります。

息子よ、男ならいつまでも「夢とロマン」を持った男でいてくれ。

そんな風に感じたのかも知れません。


かくて彼は父親から「買ってもいい」という承諾を得、
夢のスターリングエンジンを手に入れることができたのです。


ワレワレはそこに「父と息子」の通じ合う熱い心情を感じ
静かに感動したのでした。


そんなわけで、おおた工業フェアでのいい話2デシタ。

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