年末に多良木に帰省した際、熊本の父母が熊本・宮崎県境方面のドライブに連れていってくださいました。山深いゆえの深遠な風景が広がり、独自の歴史や食文化があり、大いなる魅力に富んだ土地でした。お父様、運転おつかれさまでした!
〇市房ダムから県道で山越え
市房ダムは桜の季節が有名ですが、いつ来てもそれぞれの季節ごとの風景を愛でることができます。冬場の市房ダムもなかなかの風情があります。
林業が盛んな土地柄、木材を満載にしたトラックが行き来します。これだけの木材を積んでいると、なかなかの迫力があります。
今回のドライブではお父様がドライバーを担ってくださいました。無理を言って、国道388号〜国道265号のルートではなく、県道142号「上椎葉湯前線」を通っていただきました。地図で見ると、どうみても県道の方が魅力的に見えたからです。
古屋敷あたりまでくると、球磨川は渓流のような様相となり、上流部に来ていることが分かります。途中で県道から分岐する道をたどっていくと球磨川の水源に至るようですから、日を改めて行ってみたいと思います。
白水阿蘇神社を過ぎると勾配がきつくなり、どんどんと山を登っていきます。道路はきちんと舗装されており、走り心地は快適です。
かなり標高が高くなってきましたので、遠くの山並みと雲海までもがよく見えます。標高は1000mに近いので、樹木が針葉樹になっているのが確認できます。不土野峠(標高1040m)を越えると椎葉村(宮崎県)に入ります。
峠を越えて、山並みを一望できるところで車を止めました。五木村方面も山並みの美しさに言葉を失いました。足元にはイノシシと思われる足跡が確認できました。あまり長居をするとイノシシに突きあげられてしまいます。
宮崎県側に入っても道路状態は良好で、走りやすい県道です。奥椎葉橋という立派な橋もあり、材木の運び出しに役立っているものと思われます。
道中には「長寿の水」が湧き出ています。こんこんと湧き出る取水口には苔がびっしりと生えており、情緒が感じられます。味見をしてみたところ、雑味のない、柔らかな水で、これでお茶を入れたら最高であろうと思われました。
県道142号線を進んでいくと、上椎葉ダムに到着しました。上椎葉ダムは、北九州工業地帯に電力を供給するための発電用ダムとして戦後まもなく建設されました。100mを超えるアーチ式コンクリートダムであり、当時の技術では最高水準のものであり、地震、台風といった要素を加味して慎重に設計されています。100名を超える殉職者を出す程の難工事だったようです。
〇鶴富屋敷
椎葉村には、概要以下のとおりの鶴富姫にまつわる伝説が伝わっています。
平家の残党を追う鎌倉幕府の追手、那須の大八郎宗久(扇の的射で有名な那須与一の弟)は、残党らの有様を哀れに思い、面倒を見て過ごしていた。3年にわたる滞在中に鶴富姫と恋仲になり、姫は妊娠。しかし、宗久は鎌倉幕府からの帰還命令を受けたので、「男子が生まれたならば下野国に送り届け、女子が生まれたならばよろしく取り計らうべし」と言い残し、関東に帰っていった。鶴富姫は女子を出産し、婿を取り、末永く椎葉を支えた。
椎葉村に来たならば、鶴富屋敷は必須スポットの一つです。屋敷の傍らには鶴富姫のお墓があります。この屋敷の持ち主は那須さんといい、鶴富屋敷は別名「那須家住宅」とも言います。昭和31年に国の重要文化財指定されています。指定された当時は茅葺きでしたが、昭和38年に火災防止のため銅板葺きに変更されています。
椎葉村の民家はすべて同じ形式の「並列型民家」で、鶴富屋敷はその代表格です。間取りは、部屋を一列に横に並べた形となっていて、急傾斜地をうまく利用できるようになっています。左から「ござ」「でい」「つばね」「うちね」「どじ」と部屋が続き、各室には前面に縁側があり、背面には戸棚を造り付けにしてあります。鶴富屋敷の戸棚はケヤキの一枚板で、長年丹念に磨かれたために、美しい小豆色を出しており、値打ちが付けられないくらい貴重なものだと、案内の女性が胸を張っていました。
〇椎葉村グルメ編
椎葉村物産センターに併設されているお食事処「平家本陣」で昼食をいただきました。椎葉村の特産品は多数ありますが、蕎麦は特産品の筆頭格であります。椎葉そば定食は、手作りな感じがいっぱいな十割蕎麦がいただけます。
この定食には、やはり椎葉村の特産品である菜豆腐が付きます。お豆腐に彩り豊かな野菜が練り込まれています。
また、独特の苦みを持った「くさぎな」を使った混ぜご飯もいただきました。
〇椎葉村から西米良村へ
椎葉村から国道265号を通り、西米良村方面に抜けました。これまた結構な山道であり、国道とは名ばかりで、県道142号線とたいして変わらない狭い一本道でした。やはり国道は3桁になると、とんでもない国道も現れるものです。さすがにきちんと舗装はされていますので「酷道」とは言いませんが、すれ違いに難儀する細い道でした。もっとも、それほど交通量は多くないので、すれ違いも数える程の回数でした。
景色は抜群でした。遠くの山並み、椎葉村を構成する山間の集落、遠くにチラと見える上椎葉ダム。申し分ない景色でした。
大河内地区の「野地の大滝」は、20m程度の落差がある立派な滝でした。至る所に大小の滝があり、水資源が豊かであることも伺えました。
「西米良温泉ゆた〜と」では、梅が咲きかけていました。寒い寒いと言いつつも、春の準備が着々と進んでいる有様が感じられました。
かりこぼうず大橋は、宮崎県産スギ材の需要拡大を目的に、ふるさと林道緊急整備事業により平成12〜14年にかけられた木造橋です。樹齢50年の宮崎県産スギを集成材に加工して、橋の構造材に活用しています。この個性的な形状は、米良三山(市房山、石堂山、天包山)をイメージしています。橋長140mと、支柱と支柱の間の長さ48.2mが日本一の木造車道橋です。断面からも分かるよに、集成材は様々な方向の木目の材木を合わせて作っているので、強度が優れています。
カリコボーズとは、西米良村のキャラクターです。春の彼岸から秋の彼岸までは川を守る水神に、秋の彼岸から春の彼岸までは山の守る山の神になる村の守り神です。「ホイホイ」と鳴く声が、狩りをするとき鳥獣を駆り立てる狩子(かりこ)の声に似ていることから、「狩子坊主」となりました。「ホイホイ君」と名付けられています。
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