パラメタ。*
#3
作者 : 華京橋 小町
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昔々、或るところに、人間に興味のある男の子がいました。
その男の子は人がする行動について異常なほどに鋭い観察力をもつ子だったのです。
まるで・・腹違いの父親のように・・・・
『・・・しろ・・・・社・・・・お前は私が責任もって隠してやる。
だから、これからはお父さんだなんて呼ぶな。・・いいな?』
「・・・・うん。」
その男の子は世の波に流されながら今も尚、何処かで生きている。
2017年/04/08 (月)
ピピツ・・・ピピピッ・・・
耳元で電子音が鳴り響く。
僕は重い瞼をゆっくりと開け目覚まし時計に手を伸ばす。
07:00を指していた時計は正常に止まった。
僕、逢沢社(アイザワ ヤシロ)は高校になって初めての朝を迎えた。
・・・いや、まだ入学式をしていないから違うか・・・。
徐にリモコンに手を伸ばし、テレビをつける。
朝はいつも決まって「めざ●しテレビ」を点けている。
〝昨夜、午後0時ごろ。東京都相模原市の路上で大型ナイフで殺害された女性の遺体が発見されました。”
〝この事件について警視庁捜査一課、三好総一郎さんに事件の全容をお聞きしてきま・・
ピッ.....
僕は急いでチャンネルを変えた。
「・・・最悪だ。」
・・と、自分でも驚くほどの低い声で言った。
―――三好総一郎(ミヨシ ソウイチロウ)
さっきのテレビに出ていた警視庁のトップは、僕の実親だった。
父、三好は僕にとって消している存在の一つだ。
僕が生まれた瞬間は流石にわからないが、三好は僕の母親にあたる妻、玲子が亡くなった後、
一人の家政婦に僕のお世話係を押し付けていた。
・・そして三好は僕から自由を奪った。
冷たい部屋の中に一日中閉じ込められていた。
また、三好は執拗に観察力をつけさせようとした。
観察力といっても幼子の僕にはとても無理があっただろうね。
そう見切って終わればいいものを・・
今度は三好自身が僕を観察し始めたのだった。
そしてただ、いつもこう言うのだった・・・
『社、お前には才能があるんだ。誇りに思いなさい』と。
結局、三好は僕が小学校3学年になろうとした頃、忽然と姿を消した。
「そんで、いま点けてたテレビに出てるって・・・今日どんだけ運悪いんだよ」
朝からイライラMAXでおまけに入学式とか・・
と、ぼやきつつも準備も終わったので早速ドアの前に立って思いっきり開けた。
ドアノブが握れることにありがたみを感じるのは、唯一残っている三好の記憶だ・・・
小学校=自暴自棄
中学校=猪突猛進・・・ときた僕の高校生活はどうなるんだろうね?
「どうせ、今までとほとんど変わらないんだろうね。」
この僕の未来予想図はあっという間に外れることをまだ知りもしなかった。
家を出てから15分後・・
高校は桜並木に大きくそびえ立っていた。
割と家から近くてよかった・・・にしても、、
真っ先にこの学校のセキュリティが危ういことに目が行ってしまった・・・
僕の目線の先には壊れているであろう指紋認証機と門の錠前があった。
これは・・報告するべきか・・?
・・と迷っていると
「お!新入生だねぇ!うちの学校へようこそ!」
「あ・・おはようございます」
校門の前で挨拶をしている校長らしき人に声をかけられた・・・
こうなったら・・報告しとくか。
「あの、この指紋認証機、壊れてますよ?あと、この錠前も・・変えないんですか?」
というと、その校長(?)はハトが豆鉄砲を食ったような顔をした。
「・・・壊れて・・いるのかい?」
明らかに疑われた。
ま、そう思ったよな・・・
ということで分かり易く説明することにした。
「はい。正常時の指紋認証機はランプが黄緑色で点滅しています。でも今は、エラーを示す赤ランプのまま。
ここに付いている足跡から誰かがこの機械を足で蹴ったんでしょうね・・。あ、錠前は鍵が刺さっているのに
間に何かが挟まっているから外れない様子・・・あ・・すみません。」
ずっと聞く姿勢だった先生は諮問認定機と錠前を何度も見ていた。
「本当に・・壊れて・・君、さっき言ったことが今日ここでさっき気づいたのかい?」
「・・・?はい。そうですけど?」
皆が最初に僕に言う事は決まってコレ。
僕もそろそろ大儀になったから、捨て台詞にこう添えておいた。
「その靴、白く擦れてますねぇ?何か蹴ったキズっぽいですけどねぇ?」
「・・・・!!!」
・・ッハハハ!その驚いたときの目を見開いた顔が何とも滑稽でしょうがない。
・・でもこれ以上ここにいるとマズイなぁ。
僕は身の危険があると思いくるっと回って校舎に向かって走り出した。
「君っ!!待たんか!!私の事を好き勝手言いあがって!!!!」
「事実を言っただけですよ〜〜オッサン!!」
後ろから怒鳴り散らす声を背に自分のクラスへと向かった。
僕のクラスは・・・・1−D組か。
そしてD組のクラスへと足を踏み入れる。
真新しい服を着た同輩がたくさんいる中、僕を知るものは誰一人としていない。
勿論、僕から個人的に知っている人もいない。
僕が他人に干渉するときは大体・・・
バタバタバタ・・・
「・・あ!そこの君!!教頭が君を別指導室に呼び出していたぞ!早く行きなさい!」
このクラスの先生らしき人が僕を呼ぶ。
さっきのオッサン・・教頭だったのか・・。
「・・はぁ、わかりましたよ。あ、一つお聞きしてもいいですか?」
「・・ぁあ?なんだ?こぅちは忙しいんだ!」
「少し言いにくいんですが・・・先生、不倫なんかしちゃって、大丈夫なんですか?(笑)」
「・・・・な・・・何を言っているんだ?君は・・・」
オイオイ。初日からこんなにも僕の観察しがいがある奴らばっかで・・
僕は本当に嬉しいよ^^
「んで、何とぼけてるんですかぁ?センセ^^大体、携帯2つもってる時点でおかしいと思いますけどねぇ?
さらに、2種類以上の香水が混ざってて臭っさいなぁ?」
「っ!!さっきから何を言ってるのかわからんなぁ・・」
「・・・ハハッ!笑わせるねぇ?センセー、このコト知られたらヤバいんじゃないんですかぁ〜?
・・・どうせ、この学校の中にいるんでしょ?不倫相手が^^」
「・・お前、次ここでその話をしたら・・・退学届を出す羽目になるが、今回のみ見逃してやる。
だから決して、決して二度とするなよいいな?」
「え!?いいの?わ〜〜い^^不倫先生ありがと〜〜^^」
あ〜あ、教師ってやっぱり弱み握っちゃえばいいのか・・。
僕は完全に敗北しきった教師の背を見つめていた。
そしてクラスメイトを見渡してみる・・
・・・こんな密室に決められた数の人が生活するのか。気味が悪い話だな。
そんなこと思うのは・・多分どこを探しても僕だけだろう。
幼いことから人を観察し続けてきた、でも・・
・・・それ以前に持つべきものを無視し続けてきた。
無視・・というより僕の脳内かから消してきた存在・・と言ったほうが的確だろう。
「そろそろ持ってもいい頃合いだとは思うんだけどなぁ・・・」
「ちょっと、なにボーっとしてるの?これ、プリント。後ろに渡して」
「・・あ!ごめん。プリントね。」
僕がくだらないことを考えていたせいだ・・
もうこんなことを考えるのは止めにしよう。
僕の思考が止まったところでHRから6時間目まであっという間だった。
その日僕はある場所に寄った。
そこは何もない空き地。
住所も何もない。
でも僕は確かに覚えているんだよ。
僕はここで生まれ育った。
でも小学生になったときに・・・
綺麗な花火と一緒に消えた
僕の記憶も綺麗さっぱり糺されていった・・
「・・所詮消された存在なんだから、それらしくしないとね・・」
そういって僕の高校生活は罪悪感とともに幕開けした。
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