全体表示

[ リスト ]

INVICTUS

『インビクタス/負けざる者たち』は最近見た映画の中で、一番感銘を受けました。
私は『アバター』とは比べ物にならないくらい感動しました。

南アフリカ共和国初の黒人大統領ネルソン・マンデラと1995年に自国で開催されたワールドカップで優勝した代表チームにまつわる実際にあった交流を中心に、現代史の中でも隠されていた逸話にスポットを当てたクリントイーストウッド監督作品です。

ネタバレしたくないので、背景的知識だけ紹介します。

Invictusという単語は元々ラテン語でunconquered(征服されていない、不屈の)という意味です。マンデラが大統領になる前に、国家反逆罪で終身刑を受け、長く収容されていた時に『Invictus』という短い英語の詩を愛読して、長くてつらい収容所生活を乗り切ったのだそうです。

当初この映画は『Human Factor』として撮影を開始したそうですが、途中で、『Invictus』の方がいいということになったとか。

英詩『Invictus』は英国の詩人・批評家・編集者William.Ernest.Henley(1849-1903)が1875年にエジンバラの結核病棟にいる時に書き上げ、1888年に発表した詩集に収められた一編です。

12歳で骨の結核(tuberculosis of the bone)になり、病状が悪化し、片足切断という逆境にありながら、不屈の精神で全てを乗り越え前向きに生き、イギリス文学史上に大きな足跡を残した偉大な作家でした。

映画の中でも次のような引用文が何度も登場しています。
I am the master of my fate:
I am the captain of my soul.
(わが運命を決めるのは我なり。
わが魂を制するのは我なり。)

ここからはオタク系トリビアです。
The familiar title "Invictus" was added by Arthur Quiller-Couch when he included the poem in The Oxford Book Of English Verse (1900).(当初は題名がなく今ではよく知られた「インビクタス」という題名は1900年にアーサー・キラークーチという人が英詩撰(The Oxford book of English Verse)に収める時につけた。)

W.E.Henleyは批評家として、Kipling, Wells, Yeatsらを世に送り出した。
Encyclopedia Britanica, Robert Burns全集などの編集を手がけた。
『宝島』の作者スティーブンソンとも交流があり、片足の海賊(Long John Silver)はヘンリーがモデルだったらしい。
http://en.wikipedia.org/wiki/William_Ernest_Henleyより

参考までに『Invictus』という詩の全文を載せておきます。
興味のある方だけどうぞ。

<INVICTUS>
Out of the night that covers me,         私を覆う漆黒の夜
Black as the pit from pole to pole,      鉄格子にひそむ奈落の闇の中から
I thank whatever gods may be             私はありとあらゆる神に感謝する
For my unconquerable soul.               我が魂が不屈のものであることを

In the fell clutch of circumstance       無残な状況に置かれていても
I have not winced nor cried aloud.       私はひるむことなく大声で叫ぶこともしてきていない
Under the bludgeonings of chance         運命にうちのめされても
My head is bloody, but unbowed.      血まみれになっても、決して屈服はしない

Beyond this place of wrath and tears     激しいいかりと涙の彼方に
Looms but the Horror of the shade,       恐ろしい死の恐怖が浮かび上がる
And yet the menace of the years          長きにわたる脅しをうけてなお
Finds and shall find me unafraid.        私は何ひとつ恐れはしない

It matters not how strait the gate,      門がいかに狭かろうと
How charged with punishments the scroll, いかなる罰に苦しめられようとかまわない
I am the master of my fate:        我が運命を決めるのはわれなり
I am the captain of my soul.       我が魂を制するのはわれなり

この記事に

閉じる コメント(37)

顔アイコン

cartoucheさん、私は映画を見る前に、週刊STを読んでいたので、わかりやすかったです。STによると、マンデラが、ピナールに渡したのは、実際には『The Man in the Arena』(T.ルーズベルトがパリのソルボンヌ大学で行ったスピーチ)だそうです。「周囲で見ている観客や評論家ではなく、血と汗にまみれて戦い、失敗を繰り返してもまた挑むその戦いのつらさを痛いほど知るarenaの中の本人の不屈の精神、つまりINVICTUSな精神が大事だと説いた」スピーチの写しだったそうです。

2010/2/11(木) 午後 6:27 ann**in_*ei 返信する

顔アイコン

kimonoさん、私もモーガンフリーマン大好きなので、表紙になっていたのを見たとき嬉しかったです。是非ご覧になってください。

2010/2/11(木) 午後 6:29 ann**in_*ei 返信する

顔アイコン

kenさん初めまして、そうですね。クリント・イーストウッド監督の作品は本当に意図的にさらっと描かれている場面も奥が深く余韻が残りますね。

2010/2/11(木) 午後 6:31 ann**in_*ei 返信する

顔アイコン

今日は開校記念日でしたので、この映画を見て来ましたよ。
すごくいい映画でした。ご紹介ありがとうございます。

2010/2/12(金) 午後 3:43 道 返信する

アバター

未だ観ていませんが、なかなかの評判ですよね。
一人の観光客としてでしか南アは行っていませんが、白人のアフリカ系の
方々に対する態度は、私にもあからさまでした。。。
白人と一応同様に扱ってもらっている日本人にだから、ちらっと本音を
見せたのかも知れませんが、有色がどう違うの?と考えされられました。

2010/2/12(金) 午後 4:23 な〜が 返信する

顔アイコン

道さま、初めまして。コメント有難うございました。

2010/2/12(金) 午後 6:29 ann**in_*ei 返信する

顔アイコン

な〜がさんも南アフリカ旅行されたんですね。
名誉白人といわれていたようですが、なんだか微妙です。

2010/2/12(金) 午後 6:30 ann**in_*ei 返信する

顔アイコン

観ました。確かによくできた映画だと思います。そういえば南アフリカが優勝したのを思い出しましたが、大変な騒ぎだったんですね。
"Soccer is a gentleman's sport played by hooligans, rugby is a hooligan's sport played by gentlemen."の意味がよくわかりますよねw

2010/2/13(土) 午後 5:39 Wonderwall 返信する

顔アイコン

Wonderwallさん、「Soccer is a gentleman's sport played by hooligans, rugby is a hooligan's sport played by gentlemen.」私もなるほどな~と思って印象に残った言葉でしたが、忘れてました。再現していただき有難うございました。

2010/2/14(日) 午後 11:50 ann**in_*ei 返信する

ご無沙汰しております。
南アフリカといえば、今では美味しいワインの産地というイメージでしたが、私が小学生の頃は、アパルトヘイトがあった国だということを忘れていました。確か、そのころ日本人は「名誉白人」として、アジア人でも日本人は別格扱いだったと聞きました。
この映画、見たくなってきました。

2010/2/25(木) 午後 1:37 TP_MP 返信する

こんにちは! 詩の内容がすてきですね! 英語は…もう忘れました…。ANNEさん、アバターかわいくてお似合いです〜〜♥

2010/2/27(土) 午後 1:31 mintloop 返信する

英文学の授業、ありがとうございます。♡ (うてっちゃんのマネ) 1995年の南ア開催のラグビーはよく覚えています。決勝の南ア対NZは名勝負でした。いろいろ逸話があるのですね。昔、結核に苦しんだ方は多いようです。D.H.Lawrence, Anne and Emily Brontë, Elizabeth Barrett Browning, Alexander Pope、などなど。今は恵まれています。アバター、かわいいです。^^

2010/3/2(火) 午後 0:47 スティーブ 返信する

顔アイコン

たまpuraママさんこちらこそご無沙汰してます。「名誉白人」として日本の企業も以前から進出していたようですね。

2010/3/4(木) 午前 0:37 ann**in_*ei 返信する

顔アイコン

スティーブさん、ご無沙汰です。お互いにこの時期は本当に忙しいですよね。来週やっといろいろな高校の学年末が終わりそうで、ほっと一息です。アバターは相変わらず無料路線です。

2010/3/4(木) 午前 0:40 ann**in_*ei 返信する

顔アイコン

クリントイーストウッド&モーガンフリーマン&マットデイモンだったかな。。。
みんな大好きなんで、是非観たかったけど、最繁忙期のため、wowwow待ちです。

南アフリカVSニュージーランドは有名ですよね、しっかりチェックしておきます♪

2010/5/13(木) 午後 1:00 こまっつん 返信する

顔アイコン

こまっつんさん、コメントが遅くなり申し訳ありません。
私もなんだか忙しく、すっかりご無沙汰しております。

2010/6/11(金) 午前 9:23 ann**in_*ei 返信する

顔アイコン

MINTさん、コメント返しがすっかり遅れすみません。
アバターも褒めていただき有難うございます。

2010/6/12(土) 午前 9:41 ann**in_*ei 返信する

顔アイコン

今頃、見ました。トホホ。

2010/12/26(日) 午後 8:08 [ TJ, A.K.A. Y. Kamezawa ] 返信する

顔アイコン

『Invictus』で、ここにたどり着きました。
ANNEさんの訳は、とても素晴らしくて上手ですね。
ところで、一つ、質問です。
"from pole to pole"の訳の「鉄格子」というのは、そういう表現があるのでしょうか?
これだけ、気になってます。 削除

2011/1/14(金) 午前 0:34 [ むむ ] 返信する

顔アイコン

とてもいい詩です。
すべての行を8個の母音で構成。
奇数行と偶数行を終わりの音を綺麗にそろえている。ABAB構成
徹底して圧迫された構成の中ここまで豊かな表現ができるなんって素晴らしいと思います。

pole to pole 南極と北極で世界中に広がっている暗闇って言う解釈もあるみたいです。
ついでに自分の解釈をもうちょっと紹介させて頂きます。
詩の解釈に正解はないという前提です。

詩全体からagnosticな雰囲気を感じます。

私は神が何であろうと不屈の我魂に感謝する。
whatever gods may be (神々が何であろうと興味ない)
it matters not how strait the gate(天国への門が狭いと言うが興味ない)
scroll(この世で我らの行いが記録されている巻物)からの罰も恐れない。結局、この世を作り、支配している神にも屈しない。 削除

2012/3/25(日) 午前 6:49 [ FKB ] 返信する

コメント投稿

顔アイコン

顔アイコン・表示画像の選択

名前パスワードブログ
絵文字
×
  • オリジナル
  • SoftBank1
  • SoftBank2
  • SoftBank3
  • SoftBank4
  • docomo1
  • docomo2
  • au1
  • au2
  • au3
  • au4
投稿

開く トラックバック(2)


.


みんなの更新記事