|
7年後。
扶貴はウェディングドレスに身を包んでいた。
今日は真人との結婚式だ。
鏡に映った自分の姿を見ながら扶貴は5年前のあの日を思い出していた。
あの時・・・
真人が初雪をつかもうとした時、扶貴はつかんでほしくないと思った。
ずっと一緒にいたいと思った。
真人がもう少しで初雪をつかもうとした時だった。
木枯らしがいたずらをした。
初雪が真人の手から逃れるように、扶貴の手の中に入ったのだ。
扶貴はその瞬間願った。
−ずっと一緒にいたい−
その夢は叶えられた。
そのすぐ後、真人は父親の病気のためにオーストラリアに行けなくなってしまった。
そしてずっと扶貴と一緒にいた。
それはこれからも変わらないだろう。
扶貴は小さくつぶやいた。
−ごめんね。でもありがとう−
終わり
|
短編の部屋
[ リスト | 詳細 ]
全1ページ
[1]
|
20分後、二人はハンバーガーにかじりついていた。
「おごりってこれ?」
「うん。俺金ないんだ。」
「どうして?昼も夜も働いてるのに。借金でもあるの?」
「ぷっ。ないよ〜。」
「じゃあどうして?」
「俺、もうすぐオーストラリアに行くんだ。」
「オーストラリア?」
「うん。友達が向こうで牧場やってて一緒にやろうって言ってるんだ。」
「へええ。」
「貯金もだいぶ貯まったし、来月ぐらいには行きたいと思ってる。」
「そうなんだ。」
「うん。」
若者は自分の名前を真人と言った。
「真実の人でまことなんだ。」
「へええ。真人君か。」
「君はないだろ。俺年上だよ。」
「まあいいじゃない。真人くん。」
扶貴は楽しかった。
そして自分の夢を語る真人がまぶしかった。
−好きになったのかな・・・わたし。−
そう思った瞬間扶貴は全身熱くなって、顔が火照るのがわかった。
「あれ、暑い?暖房効きすぎかな?出ようか?」
扶貴はまともに真人の顔が見られなくなっていた。
下を向いたままうなづくのがやっとだった。
外に出て見ると木枯らしがピュウッと二人の間を通り抜けていった。
「うわ。寒いな。」
「うん。」
真人は空を見上げた。
「あっ!」
「何?」
「ほら、雪!初雪だ。」
見ると灰色の空から小さな白い雪が舞い降りてきた。
「知ってる?初雪をつかむと夢が叶うんだって。」
「そうなの?」
「うん。絶対つかんでやる。」
そう言いながら真人は落ちてくる雪をつかもうと手を伸ばした。
「扶貴もつかめよ。」
「うん。」
その時扶貴はオリオンではなくなっていた。
つづく
|
|
扶貴が自分の部屋で進路票を前に置いたまま音楽を聴いていた時母の声がした。
「扶貴!ちょっと焼き芋買ってきて。」
「焼き芋?」
「今さっき焼き芋の車が通ったのよ。そこの角にとまってるから。」
「うん。わかった。」
母の言ったように、焼き芋屋の小さな車が停まっていた。
「おじさん、お芋ちょうだい。」
「いくつ?」
「中ぐらいの4つ。」
「おまけ一つ入れとくよ。」
以外に若い声が返って来た。
扶貴は焼き芋屋の顔を見た。
そこには、20歳ぐらいの若者がいた。
「何?」
「ううん。別に。」
扶貴は少し顔を赤くしながら、焼き芋の袋を両手で抱え走るようにその場を去った。
「ありがとう。」
若者の声が小さく聞こえていた。
それから二日後。
扶貴は学校帰りの途中、工事現場の前を通った。
「あれ、また工事なんだ。」
つい近くでも最近まで工事をしていたことを思い出した。
「工事っていつ終わるんだろう?」
つぶやきながら通り過ぎようとした扶貴だったが、ふと赤い棒を持って車両を誘導している一人の作業員に気づいた。
二日前の焼き芋を売っていた若者だった。
「あっ。」
その声に、若者が振り返った。
若者は扶貴の顔を見たが思い出せないらしく不思議そうな顔をしていた。
若者は車が来ていないことを確認しながら話しかけた。
「えっと・・・誰だったっけ?」
「焼き芋屋さん、こんにちは。」
「あ〜。あの時の。」
「思い出した?」
「うん。この間はお買い上げありがとうございました。」
若者はさわやかな笑顔で言った。
「ぷっ!やあだ。ねえ、昼間も働いてるの?」
「そうなんだ。」
「大変なんだ。」
「まあね。ねえ、ちょっと待っててくれない?」
「うん?」
「ここもうすぐ終わるんだ。何かおごるから。」
「うん。いいよ。」
つづく
|
|
「静かに!」 |
全1ページ
[1]


