アンのつぶやき

久しぶりに更新しました。

物語の部屋

[ リスト | 詳細 ]

物語の部屋


SFや推理ものを中心に書いています。

記事検索
検索

全31ページ

[1] [2] [3] [4] [5] [6] [7] [8] [9] [10] [11]

[ 次のページ ]

疲れて来たウ−サナは、肩で息をするようになっていた。
そこへ何度目かのユークの突きが、ウ−サナのみぞ落ちを捉えた。
それまではなんとかかわしていたがウ−サナも力尽きたのだろう。
まともに突きをくらって2,3歩後退し止まったが、足元がふらついた。
そこへユークがとどめの蹴りを入れた。
ウ−サナもついにひざまずくように崩れた。

「う、ううう。」
ユークの肩もあえいでいた。
美しい顔には、大粒の汗が無数に浮かんでいた。

その間にタイートの方もュグーニラにとどめの一撃を放とうとしていた。
身体が浮かぶと同時にくるりと回転し、ュグーニラは仰向けに倒れた。


ユークとタイートがホッとしていた時、ビスクールの車のドアが開いた。
そして一人の少女が降りて来た。
サングラスをゆっくりとはずしたその顔は・・・


「ルゥ−・・・」

ビスクールの戦士を見たタイートは、呆然とつぶやいた。
愛しくて何にも代えがたい大切な人。
探し求めた人が目の前にいた。

しかしその大切な人は、今はタイートたちの前に敵となって現われた。

そしてすぐ横にやはり立ちすくむユークもまたその名を口にした。
「ルゥ−シュ・・・」

しかしその言葉はタイートの耳に届いたかどうか・・・
タイートもユークも心の底では、ルゥーシュの身を心配していたが今がその時だとは思っていなかった。
突然やって来た再会は想像もしていない形で訪れた。


やがて氷が少しずつ溶け、カタっという音が響くように、タイートが静かに一歩足を前に出した。
そのザクっという足音が呪縛を解くように、周りの風景が動こうとしていた。

そして二人の戦士に見つめられたルゥ−シュは不思議な気分だった。
敵のはずのエルンゼの戦士が、二人とも自分を愛しい者を見るような瞳で見つめていたからだった。


−なに?なぜそんな目で私を見るの?−
ルゥ−シュもまたユークとタイートと同じく混乱していた。
エルンゼの戦士は敵なのだ。

少なくとも今のルゥ−シュには見覚えがなかった。

だが・・・

ルゥ−シュの心の奥の底に何かがあった。
知らないはずの二人を前にして、懐かしく甘い思いがかすかに浮かんできた。

しかしルゥ−シュはその思いに気付く前に使命を、野心を思い出していた。


ルゥ−シュが再びエルンゼの戦士に意識を移した。

その時タイートが一歩踏み出したのだった。
だがそれは闘うためではなかった。
愛しい人を前にしておもわず踏み出した一歩だった。

なぜ自分の前から姿を消したのか?

今も尚自分を愛してくれるのか?


タイートはルゥ−シュに確認したかった。


だがルゥ−シュにはそれがわからなかった。
当然だったろう。

ルゥ−シュは何も知らなかった。
・・・いや覚えていなかった。

ぎこちなく動くタイートを見ていたルゥ−シュは、身構えた。
それは優秀な戦士の姿だった。


                 つづく

捜し求めるルゥ−シュが自分達のすぐ近くにいることを知らないタイートとユークは一路東京に向かって車を走らせていた。

「おい。」

「何よ。」

「後ろの車、ちょっとおかしくないか?」

「あら、今頃気付いたの?」

「今頃ってしってたのか?」

「当たり前じゃない。」

「どうするんだ?」

「まあ見てなさい。」

そう言うとユークはアクセルを踏み込んだ。
スピードを上げた車は振動しながら進んで行った。
当然後ろの車も同じようについてくる。

ユークはさらにスピードを上げて振り切ろうとしたが、ビスクールの車も必死なのだろう。
ぴたりとついて来る。

ビスクールもやはりウ−サナが運転している。
そして助手席にはュグーニラが揺れる車の中でウ−サナに何か言っている。
そして時折後部座席を振りかえっていた。

後部座席にはもう一人いた。
サングラスをかけたその人影は、座席にゆったりと座り前方を走るタイートたちを見据えていた。
しかしタイートとユークからは人影しか見えなかった

ウ−サナもユークも運転の腕は超一流だった。
ユークはビスクールの車を引き離そうと必死になってハンドルを右に左に操っていた。
しかしビスクールの車は執拗に追い続けた。

「しようがないわね。片付けるしかないようね。」

信号の手前で右手に別れている道があった。
するとユークは猛然と脇道に入って行った。

しばらく行くと道は広い空き地のような草の生えた場所で行き止まりになった。
ユークは車を止めた。

ビスクールの車も少し手前で停まった。

ユークはニングに言った。

「ここで待ってて。すぐに片付けるわ。」

「大丈夫なの?」

「もちろん。私もだけど、タイートはとっても強いのよ。心配しないで。」

「そうなの?」

ニングはそう言うとタイートを見直したような眼で見た。
タイートもさすがにこの場では張りきらざるを得ない。


「任せとけよ。ちょちょっとやってくるよ。」
そう言ってユークとタイートは車を降りた。

ビスクールの車から、ウ−サナとュグーニラも降りてきた。

「手間をかけさせてくれたわね。」
ウ−サナがその大きな瞳で睨みつけるように言った。

「それはお互い様ね。」
ユークもウ−サナに負けずに返した。

ユークとウ−サナの間には見えない火花が散っていた。
ュグーニラはそんな二人の様子を窺いながらもじりじりとしている。

ウ−サナの大きな瞳は鋭い光を帯びていた。
ユークを睨みつけたまま、ウ−サナはュグーニラに向かって眼配せをした。

「もういいわ。余計な時間をかけたくないわ。」
何秒か睨み合いが続いた後、ウ−サナの方が先に切れてしまった。

ュグーニラは待ってましたとばかりに身構えた。
タイートも負けずに戦闘態勢をとった。

「お前なんかあっという間に片付けてやる。」
言ったかと思う間もなくュグーニラはタイートに向かって拳を突き出した。
タイートはュグーニラの突きを軽くかわすと、飛び上がり回し蹴りで応戦した。
身体を回転させながら繰り出した左足はュグーニラにかわされたが、すぐに右足がュグーニラの顔面を捉えた。

ュグーニラは後ろにのけぞりながらも1,2歩退いただけで再び身構えた。

「子供みたいな顔をしているわりには出来るじゃないか。」
そう言うュグーニラもまた少年だった。

少年と少年との闘いだった。
そしてやはりすぐ横で睨みあっているのもまた、同じ年頃の少女二人だった。
タイートとュグーニラの動きを眼の端に捉えながら、ユークとウ−サナも戦闘態勢にあった。

二人とも少年たちに劣らない激しい闘いをしていた。
細く長い手足からいくつもの突きや蹴りが少女に向かって放たれ、相手の少女もまた軽やかな動きで攻撃をかわしていた。

その動きは流れるように美しく、まるで舞を見ているかのようだった。
しかしやがてその闘いにも決着がついた。


                  つづく

やがてビスクールの人々はフェオーレのいさめには耳を傾けず、独立の道を選んだ。
その頃地球のすぐ近くに地球と同じ大気を持つ星が発見された。

その星には空気も水もあった。
ただその星には危険な物質があった。
放射能が星を包むように満ちていたのだった。
月の裏側にあるその星は地球と兄弟星と言ってもいいようなまるでそっくりな環境を持つ星だった。

その星にも昔は生物がいたのだろう。
そして互いに争い、大地を汚し、住めなくなって星を捨ててしまったのかもしれない。
あるいは放射能によって生物そのものが滅亡したのかもしれない。
いずれにしろビスクールが望む新しい大地は悠久の平穏を約束するように人々は思った。


ただその星にも放射能は残っている事はわかっていた。
だが人間が住めないほどではない事が新たに報告された。
地球ほどの放射能の量はなく、場所を限定すれば十分住めると学者たちは王に進言した。

少なくとも当時はそう考えられていた。
独立を考えていたビスクールの人達はこの星を自分達の新しい住処とする事にした。
だがフェオーレは拒んだ。

「あの星に行くのは危険だ。きっと災いが起こる。私は全ての民に責任がある。どうかもう少しゆっくり時間をかけて考えよう。」

しかしこのフェオーレの言葉は人々の耳に届かなかった。
失望したフェオーレは地球に残った。
ノーブル家としての地位も名誉も全て捨てた。
フェオーレの家族はエルンゼの隅でひっそりと暮らし始めた。

そして何十年か経った時、ビスクールの人々はフェオーレの言葉が正しかった事を知った。
ビスクールの大地はそれ自体が放射能を含んでいた。
そしてさらに悪い事に地下深くたまった放射能を徐々に放出していた事がわかった。
放出される放射能は最初こそ微量だったが、近年恐ろしい勢いで増えていた。

ビスクールでは放射能に侵される人が増え、それをとどめる術を人々は持たなかった。
このままでは近いうちにビスクールは人が住める場所ではなくなる。

報告を受けたオルグ王は国を代表する科学者の数人を呼びつけた。

「どういうことだ。ここはついの住処ではなかったのか・・・」

「はあ・・・」

「放射能を除去する事は出来ぬのか?」

「この星の地下何千メートル下から吹き出しております。それを止める事は不可能かと。」

「なに。それでも学者か!何のために膨大な研究費を出してきたと思っている?」

「はあ、ですが・・・」

「お前たちは私の国を潰す気か?」

「いえ、滅相もございません。ですが私達にもどうしようもない事でして・・・」

「ばか者!」

「申し訳ござい・・・」

「お前達のような役に立たぬ者に用はない。こいつ達を牢に入れておけ。」

「ははっ。」

こうしてビスクールでも有数の学者たちは牢に幽閉された。
その後、放射能を除去する事がどうしても出来ないと認めざるを得なかったたオルグ王はエルンゼにねらいをつけた。

「マクビテクス。エルンゼを我が領地にする。近いうちにビスクールの地は放射能に覆われ住めなくなる。その前にエルンゼに我が国を築く。」

「はっ。エルンゼですか・・・」

「そうだ。もはやそれしか方法がなかろう。」

「しかし、エルンゼにはあの者がおりますぞ。」

「わかっておる。しかしもはや我が敵ではない。」

「ですが・・・」

「そなたはそんなにあいつが怖いか?」

「いえ・・そういう訳では・・・」

「ならばよかろう。エルンゼはもともと我が故郷。故郷に帰るまでのこと。」

「しかし、ことはそう簡単には・・・」

「ならばうまく行くように計らえばよいではないか。」

「はあ・・・」

「そなたに任せる。」

「は?」

「何度も言わせるな。エルンゼの事は任せる。私は気が長くない。よいな。」

マクビテクスは少し困ったような表情を浮かべたが、すぐに神妙な態度になった。
「はい。かしこまりました」


下を向いて殊勝に見えたマクビテクスだったが、その顔には笑みが浮かんでいた。

マクビテクスの笑みに気付かずにオルグ王は満足そうに部屋を出て行った。


「ふふふふふ。ばか者め。それでよい。お前はそれでいいのだ。」


                      つづく

タイート、ユーク、ルゥ−シュ。
三人は、何かに導かれるようにどんどん距離を縮めようとしていた。

しかし誰一人としてこの出会いを予想している者はいなかった。
いつかは・・・とタイートもユークも思ってはいたがこんなに近くに捜し求める人がいようとは思いもよらなかった。

そしてもう一人、ルゥ−シュ。
まさか自分が今追っているエルンゼの二人と自分に、密接な関係がある事をルゥ−シュは知らなかった。
いや・・・エルンゼでの全ての事を、忘れるように操作されていた。
ルゥ−シュは今度の計画を成功させ、オルグ王に自分の実力を認めさせたかった。
そしてやがてはビスクールでの地位を駆け登り、オルグ王になり代わり自分がビスクールを意のままに動かしたいと考えてた。
そのためにはこの計画をなにがなんでも成功させなければならなかった。

ルゥ−シュは目の前を走る車にいるニングを奪い返し、エルンゼの戦士二人を始末するためウ−サナとュグーニラを引き連れて1台の車を追っていた。


そこへマクビテクスからの通信が入った。

「マクビテクス様、何か?」

「ルゥ−シュ様、今どちらに?」

「今は・・・日本です。」

「なんと・・・日本に行かれたのですか?」

「はい。二人の様子を見に来たのですが。いけませんか?」

「いえ、いけなくは・・・」

マクビテクスはルゥ−シュには一歩引いた立場で接していた。

もちろんそこにはマクビテクスの思惑があるからだった。
ルゥ−シュは本来はビスクールの正統な王位継承者の一人だった。
現にビスクールではルゥ−シュの事を知るものも少なくない。
今はオルグ王に仕えているが、いつかはルゥ−シュがその地位を継ぐべきだと考えていた。

もともとビスクールの正統な継承者はルゥ−シュ・ノーブルだった。
ノーブル家は昔からビスクールを治めてきた。


戦前からヨーロッパの中央にあった小さな古い国だったが、核戦争によって世界が荒廃した時もただ一つその戦争には参加せず中立の立場をとった。
しかし戦争は嫌でも全ての国を巻き込み、地球全体へと広がって行った。
そして核戦争によって放射能は地球全体を蝕んだ。
ビスクールも例外ではなかった。


かろうじて生き残った人達は、比較的放射能の影響が少ないところに自然と固まっていった。
そこには今までの人口とは比べ物にならない数の人間しかいなかったが、それでもある意見があればその意見に反対する者たちがいた。

こうして奇跡的に残った人類も二手に別れ、互いに対立を深めていった。
中でもビスクールの人達はノーブル家を中心にまとまっていた。

やがてビスクールの中から独立しようという一派が現われた。
ノーブル家は押さえようとしたが、独立の波は大きくなっていった。

当主だったフェオーレは争う事が嫌いだった。
愚かな人間のために地球は放射能にまみれた。
学ぶべき事は人類の歴史には数多くあったが、人類は未だ学んでいなかった。

再び奇跡的に生き残った人達もまた同じ道を歩もうとしていた。
独立派の旧先鋒だったのがオルグ王の祖父だった。
オルグ王の祖父はノーブル家とは縁籍にあたる。

名前こそノーブルを名乗っていたが、フェ−オーレとは人間としての器が違っていた。
本人がその事を自覚していたかどうか・・・
いや、自覚していたからこそフェオーレを出しぬく時を狙っていたのかもしれなかった。


                つづく

二人の会話を聞いていたタイートが、ユークに話しかけた。

「おい。」

「何よ。」

「さっきから車がついて来てる。」

「わかってるわよ。それぐらい。」

「何だ。気付いていたのか。」

「当たり前じゃない。どうせビスクールでしょ。」

「どうする?」

「どうするってここじゃ攻撃も出来ないでしょ。」

「だけど」

「わかってるわよ。このまま彼女達と会うのは危険だし。」

「そうだよ。危ないよ。」

「しようがないわね。ひとまず東京に行きましょう。」

「東京?」

「ええ。あなたの家。中野太一の家に行くのよ。」

「僕の家って。あの?」

「そうよ。ビスクールもあそこはつかんでないはず。」

「でもあの家は僕が休養する間だけの所だろ?」

「うーん。通常はそうなんだけど、でも今回はそうでもないらいいの。」

「そうなのか・・・」

「とにかく突っ走るわよ。」

「ああ。」

こうして三人は一路東京を目指して走り出した。

タイートが怪我を治す間、暮らしていた東京の家に向かって。


そしてタイートたちの後ろを追っているビスクールの車にもやはり三人乗っていた。


ュグーニラ、ウ−サナ、そしてもう一人ルゥ−シュだった。


しかし前を行くタイートとユークは自分達を追ってくるビスクールの車に探し続けるルゥ−シュがいることも、ルゥ−シュが自分たちの方に少しずつ近づいていることなど思いもよらなかった。

ましてそのルゥ−シュが今は自分達の敵となって向かって来ている事を。


ルゥ−シュはただニングを奪い返すことしか頭になかった。
それを妨害するものは何者も許す気はなかったし、許すなどという事は自分の破滅にしかつながらないと思っていた。

故郷の大きな木の下でタイートと過ごした穏やかな日々はルゥ−シュの記憶から抹殺されていた。
ルゥ−シュの胸にあるのはビスクールでのし上がろうとする野望だけだった。

タイート、ユーク、ルゥ−シュは皮肉にも敵同士として向かい合う事になってしまうのかもしれなかった。


そしてそれを待ち望んでいる、ある人物がいることをこの時三人は知らなかった。
おそらくその事実をしっているのは、当事者のあの男だけだっただろう。
それほどあの男は用意周到にことを運んでいた。

男は間もなく訪れる歓喜の時を待ちわびていた。
全てが男の思惑通りに動いているように見えた。

男は込み上げてくる思いを押さえきれずに、自分でも気付かぬうちにその顔に笑みを浮かべていた。
やがて男の笑みは顔だけでなく全身を揺さぶっていった。

男が切望した未来は刻一刻と近づいていた。
己が描いた邪悪な未来に向かって立っていた男は、ある種少年のような瞳で見えない未来を見つめていた。

「あっはははは・・・・・・・・・・・・・・地の上を這いずりまわって、せいぜい踊るがいい。私の愚かものたちよ。わたしの未来のために死に行くがいい。うまくいった時には、おまえたちの骸の前で、乾杯しようではないか。あっははははは・・・・・・・」



                  つづく

全31ページ

[1] [2] [3] [4] [5] [6] [7] [8] [9] [10] [11]

[ 次のページ ]


.

ブログバナー

アンのつぶやき
アンのつぶやき
非公開 / 非公開
人気度
Yahoo!ブログヘルプ - ブログ人気度について
1 2
3 4 5 6 7 8 9
10 11 12 13 14 15 16
17 18 19 20 21 22 23
24 25 26 27 28 29 30

Yahoo!からのお知らせ

スマートフォンで見る

モバイル版Yahoo!ブログにアクセス!

スマートフォン版Yahoo!ブログにアクセス!

よしもとブログランキング

もっと見る

[PR]お得情報

お肉、魚介、お米、おせちまで
おすすめ特産品がランキングで選べる
ふるさと納税サイト『さとふる』
ふるさと納税サイト『さとふる』
11/30まで5周年記念キャンペーン中!
Amazonギフト券1000円分当たる!

その他のキャンペーン


プライバシー -  利用規約 -  メディアステートメント -  ガイドライン -  順守事項 -  ご意見・ご要望 -  ヘルプ・お問い合わせ

Copyright (C) 2019 Yahoo Japan Corporation. All Rights Reserved.

みんなの更新記事