宇山恵子の取材日記

オールアバウト「アンチエイジング」ガイド宇山恵子が取材した健康、医療、ヨガ、エンタメ情報などをお伝えします。

取材日記

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病気の見える化

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抗加齢医学会レビュー】
病気の見える化

血管の中で起こっている無言の「動脈硬化」を見える化して、心筋
梗塞などの予防に役立てようという研究。

まずは血管障害のイメージングで、健康な血管が、脂質異常を起こ
しどうやって動脈硬化を起こすかについても病態変化のようすをわかりやすく映像で見せてくれたのが、東京医科歯科大学・大坂瑞子先生の講演。高脂肪食→脂質異常症→酸化ストレス→炎症→VCAM1(接着分子:血管にいろいろな物質を付着させてしまうきっかけを作る)発現上昇→白血球の遊走→血液ドロドロ・血管カチカチ・血栓→動脈硬化という流れがビジュアルで見ることができ、説得力がありました。

東京大学医学部循環器内科西村智先生の発表は、まさに芸術の領域
のイメージング!生活習慣病による、炎症のメカニズムや免疫細胞たちの動きを、色とりどりに再現。肥大化した脂肪細胞の炎症のようすを見ると痩せようって思います!

心臓の画像診断に特化したクリニックの役割について心臓画像クリ
ニック飯田橋の寺島正浩先生から貴重なお話が。重篤になるまでほとんど自覚症状がない心筋梗塞で命をお落とす人が少なくなるようにと、心臓CT+心臓MRTで、綿密に冠動脈のようすを観察し、適切な治療を迅速に行っているそう。これについては、HBRの講座でクリニック訪問をお願いしております。

脳のイメージングで心はどこまで見えるか?
ユニークな講演をしてくださったのが、東北大学加齢医学研究所の
杉浦元亮先生。
fMRIの画像を分析すると、顔の好き嫌いなどがわかってしまう
そう!

抗加齢医学会 百聞は一見にしかず〜基礎・臨床領域におけるイメ
ージングの最前線〜のセッション

腸内細菌の話

 
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抗加齢医学会レビュー】腸内細菌の話

さらに! 肥満マウスの腸内細菌叢を健康体のマウスに移植すると
、健康なマウスが肥満マウスになってしまうそうです! 

また、IBD(炎症性腸疾患の総称で、クローン病や潰瘍性大腸炎
などが代表的な疾患)の患者さんは、健康な人に比べて、腸内細菌の種類も量も少ないようです。

腸内細菌叢は、食事に左右され、肉食をやめて魚、ご飯、みそ汁、
漬物、納豆…という伝統的な日本食に換えると、およそ2日で腸内細菌叢が変わるそうです。

メタゲノミクスの発達によって膨大な数の腸内細菌も、とても簡単
&短時間にその組成を調べることが可能になっています。日本人の腸内細菌と欧米人の腸内細菌では、細菌叢の組成が異なっており、ほとんどの日本人が持っていて、欧米人にないものが、「ベータアガラーゼ」という海苔や海藻を分解する海の泥の中にいる微生物。これが腸にいることで、私たち日本人は海苔や海藻の栄養を取り込
むことができるのです。

(東大大学院 服部正平教授の講演の一部より)

抗加齢医学会「腸管内フローラ」のセッションより

腸内細菌の働き

http://antiaging1.iza.ne.jp/images/user/20120625/1846937.jpg
腸内細菌の働きがずいぶんわかってきました。

腸管出血性大腸菌O157に無菌マウスが感染すると1週間で死亡
するが、ビフィズス菌を投与するとフルクトース(果糖)の取り込みが活発になり、それをもとに酢酸がたくさん産生されて、腸の上皮のバリア機能を高めて、O157の感染を防御するそう。(理化研長谷耕二先生)。

小腸のパイエル板というところでは、免疫細胞が産生されており、
それが腸内細菌と連携して、私たちの免疫系の制御をしていますが、実は「パイエル板の中」に存在している腸内細菌がいることが判明しました。パイエル板の中に存在する腸内細菌は「アルカリジェネス(Alcaligenes)」という細菌で、土壌にも存在する菌です。「アルカリジェネス」はパイエル板の中に存在して、過剰な炎症反応を起こさないように制御していることも判明。腸の難病として有名な「クローン病」の患者さんには「アルカリジェネシス」がすごく少ないために、腸内が過剰に炎症を起こしてしまうのではないかということ。免疫系を暴走させず、不活化させないために、腸内細菌はとても重要なのです!(東大医科研 清野宏先生の素晴らしい講演のほんの一部より)

日本抗加齢医学会総会
24日「腸管内フローラ」のセッション
 
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ロンドンのシティー大学キャスビジネススクールのピーター・フレミング教授は、フレックスタイム制など、自立と自由度が高いように見える魅力的な職場には、落とし穴があることを、フランスの哲学者ミシェル・フーコーの「バイオパワー(生の権力)」という視点から分析し、201311月号の科学雑誌『Humanrelation』に投稿しています。

 

2013815日、米銀バンク・オブ・アメリカのロンドン投資銀行部門で研修プログラム(インターン)中に死亡したメリルリンチ部門の元インターン、モーリッツ・エアハルトさん(21歳)は、2週間で8回徹夜し、亡くなる前の3日間は、徹夜(朝6時まで)で働き続けていたことが明らかになり、大きな話題になりました。

 

昔は権力と言えば「ルールに従わなければ殺す」という「殺しの権力」でしたが、現代の権力は人間の「生命そのもの」に介入し、あたかもその集団の中で、個人の自由が広く認められているように思わせておきながら、気がつきにくい権力(清潔にする、勤勉に生きる、ルールを守るなど)で、人間を統制・管理し、生かしつつ支配していく「生の権力(バイオパワー)」だとミシェル・フーコーは指摘しました。

 

フレックスタイム制は、従業員が好きな時間に出退社できる、自由度の高いシステムとして多くの企業で導入されています。

 

しかしこのシステムが本当に自由なものでしょうか? かつては「9時から5時まで働く」という「規律」の中で働いていた私たちは、今度は自由が認められているにもかかわらず、食事中も、寝床の中でも仕事をして、「サービス残業をするのが当たり前」、「新人は寝る暇も削って働くもの」という「職業倫理」や「仲間意識」に束縛されているのではないでしょうか。

 

そんな職場で、四六時中、仕事をするのが当たり前になり、「休む、眠る」という人間の生命維持に必要不可欠な行為も、いつの間にか「時間の無駄」に思えてしまったのでしょう。まさにこれが、ミシェル・フーコーの言う、「生の権力」の恐ろしさではないかと、研究者は指摘しています。

 

Peter Fleming. When 'life itself' goes towork: Reviewing shifts in organisational life through the lens of biopower.Human Relations, November 2013

 
 
昨年後半、テレビや新聞で騒がれたTPP問題。あのときは気になったけど、ニュースなどで見聞きする機会が減って、他人事と思っている人もいる のでは? 実は、TPPは私たちの美容・食・医療に深く関与する。「TPPは自由経済を推進する」と言えば聞こえはいいが、自由には「リスク」が伴う。農 薬、遺伝子組み換え、医療崩壊……TPPがそんなリスクを抱えていることを、きちんと理解しよう。
 
【TPP 環太平洋経済連携協定とは?】
TPPの目的は、国によって異なる経済や社会のしくみを統一し、関税を撤廃して、国境を越えて人、モノ、サービスが自由に行き来できるようにしようというもの。
【協定の内容】
●一切の例外を認めずに関税を撤廃
●雇用・投資・知的財産・通信サービス・銀行・保健・ 医療・食品の安全基準などのルールや仕組みを統一
 
【TPPのメリット】
●輸入品の関税がなくなり価格が低下する
●工業製品の輸出が増加し景気が回復する
●海外の公共事業を受注できるようになり景気が回復する
 
【TPPのデメリット】
●関税で保護されていた国内の産業が低迷
●低賃金の外国人労働者が増加し、国内の失業者が増える
●遺伝子組み換え、農薬の基準などが甘くなり、食の安全性が低下
●自費診療の増加による医療費の高騰、健康保険制度の崩壊


農薬、食品添加物まみれ……。 食の安全が消える?
 
スーパーには外国産の野菜や米が安い値段でズラリと並び、日本産のものが見当たらない。国産の肉や牛乳も姿を消した。レジに行くと日本人の店員が見当たらない。病院に行くと言葉が通じない医療スタッフが増えた。やけに診療代が高い......。

TPPにはそんな、今とは違う世の中を引き寄せてしまう危険がある。TPPは自由貿易、自由経済を推進する取り決め。でも「自由」には大きな落とし穴がある。もしTPPに参加し、締結、そして施行された場合、考えられるのはこんな状況だ。
「日本はすでに工業製品も農業製品も関税は低く、食品の海外依存率も60%に達するほど、世界で最も『開国』されています。さらに『開国』を徹底するというのは、『最後の砦』を自ら明け渡すようなもの」と話すのは東京大学教授の鈴木宣弘先生。
 
「最 後の砦」が崩れるということは、例外なく関税を撤廃し、ルールや仕組みが統一され、人、モノ、サービスの交流は促進される。安い海外製品がどんどん売れ る。しかし「安かろう、悪かろう」という言葉の通り、TPPによって食品安全基準のルールが甘くなり、遺伝子組み換え食品や、食品添加物や農薬にまみれた 食品が増える可能性は非常に高くなる。
 
「殺虫剤や殺菌剤などの残留農薬について、日本はアメリカより、ものによっては80倍も厳しい基準を設けています。TPPにより、食品安全基準が甘くな り、アメリカの基準に合わせることになれば、残留農薬も増え、日本では認められていない食品添加物も2000種類以上が使用可能になると考えられます。 BSE狂牛病)問題で20ヵ月齢以下の牛肉のみに輸入制限していることに関しても見直しが要求されています」と、TPPによって日本の食の安全が守れな くなることを危惧する鈴木先生。 発がん性が危惧される遺伝子組み換え牛成長ホルモン(rbST)を注射された牛から搾った牛乳を知らないうちに飲まされてしまう危険だって生じるのだ。

良い医療が受けられなくなる危険性もあり
食品だけではない。TPPによって海外の医療サービスが参入し、「自由診療」が増え、「国民皆保険」をベースにした日本の医療保険制度も崩壊する可能性がある。
「TPPに参加すれば、日本もアメリカのように、高額の治療費を払える人しか良い医療が受けられなくなるでしょう。地域医療も今以上に崩壊していくことは明らかです」と話す鈴木先生。美容も医療も今と同じようなスタンスでいることはできなくなるわけだ。

割高であっても日本の農家を応援する姿勢が必要
「TPP 問題より以前から、日本の農林水産業はすでに高齢化、就業人口の減少、耕作放棄などで疲れ切っています。そこに追い打ちをかけるように、農家一戸当たりの 平均耕地面積が約2haの日本と200ha近くあるアメリカが、同じルールで競争しろという。一度荒れ果てた農地を元に戻すのは容易なことではありませ ん。TPPは命や健康にかかわる問題であることを忘れないでください」と強く語る鈴木先生。 
スーパーに並ぶ外国製の安い卵や牛乳や野菜。でも、そういったものではなく、狭い土地を有効活用して、汗水流して日本の農家の人々が作ったものを割高であっても選ぶ。これが、食や健康を守るためには必要だということを忘れてはいけないのだ。

 
【プロフィール】
東京大学大学院農学国際専攻教授
鈴木宣弘(すずき・のぶひろ)先生
1958 年、三重県生まれ。東京大学農学部卒。農林水産省、九州大学教授を経て、2006年より現職。専門は農業経済学、国際貿易論。日中韓FTA、日コロンビア FTAの各産官学共同研究会委員、関税・外国為替等審議会委員。主著に『震災復興とTPPを語る〜再生のための対案』(共著・筑波書房)、『TPPと日本 の国益』(共著・大成出版社)、『食料を読む』(共著・日経文庫)など。
 
取材・文/宇山恵子


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