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わが国では現在、スポーツの場で選手の人間としての尊厳をないがしろにするような体罰と暴力が問題になっていますが、人間のパフォーマンスを向上させる方法 として、昔からアメ(報酬)とムチ(罰)を相手や状況に応じて使い分けることが大事であることは、経験的に良く知られています。
ノッティンガム大学のMarios Philiastides博士らがJournal of Neuroscience 2013年2月号に発表した研究で、罰(罰金)が、報酬(金)と同様に集中力を高め、視覚認知テストの結果を向上させる効果を持つことが明らかになりました。
博士らは罰を与えることが、明瞭さに欠ける分かりにくい視覚情報に基づく判断の結果に影響を与えるかどうかを明らかにする目的で、実験を行いました。
実験は被験者に雨で濡れた窓の向こうに見える形が、人物なのか何か他のものかを判断させるというもので、間違えると被験者は罰金を払わなければならなくなるというものでした。
また時に被験者は、頭に電極をつけた帽子を被り、脳波が測定され、罰金の金額の変化が脳活動にどのように影響するのかが測定されました。
実験の結果、罰金の金額が増えるにつれて、判断の正確さが向上することが分かりました。また、脳波を分析した結果、罰金によって被験者の脳活動にも大きな変化が生じていることも明らかになりました。
博士らは今回の研究について、罰による脳活動の変化が明らかになったので、なぜある種の性格特性を持つ人が、そうでない人よりも報酬や罰が大きく影響するのかを脳活動の違いから、今後解明する糸口として研究をすすめるとしています。
Journal of Neuroscience 2013年2月号 |
海外の健康ニュース
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心 理的ストレス状況が、心だけでなく下痢や胃の痛みなど、身体的にも負の影響を与えることはさまざまな研究で明らかになっていますが、自分にとってストレス フルだった出来事をいつまでも引きずり、くよくよしていることで、身体の炎症反応が高まり、体に悪影響を及ぼすことが、米国・オハイオ大学のPeggy Zoccola博士が、2013年3月13-16日にフロリダ州マイアミで開催されたアメリカ心身医学会(APS)71回大会で発表した研究で、明らかになりました。
博士らは34人の健康な女性を実験プロジェクトに参加を募るという趣旨で募り、彼女たちを被験者として実験を行い、血液サンプルを分析しました。実験は比較対照のため被験者を2グループに分けて実施されました。実験でははじめに被験者にストレスフルな体験をさせる目的で、2人の白衣を着た冷たく無表情で話を聞く面接官に被験者を対面させ、今回のプロジェクトになぜ参加したいのか自分の志望動機をスピーチをさせました。
面 接終了後、片方のグループの被験者は、面接時に自分の行った志望動機のスピーチの出来についてしっかり反省して考えるように指示され、もう一方のグループ の被験者は面接のスピーチとは関係のないイメージや活動、例えば自分がきれいなお店で買い物をしているところや、海でヨットに乗っているところなどについ て思いをめぐらすように指示されました。
血液サンプルを調べた結果、体内で炎症反応や組織の破壊が生じたときに血清中に増加するCRP(C反応性タンパク質)の濃度が、面接後にしっかり反省するように要求されたグループの被験者の方が高い数値であることが分かりました。
面接のことは考えないように指示されたもう一方のグループのCRP値が、面接後1時間後には通常レベルに戻っていたのに対し、反省グループでは高水準のままでした。
博士は、CRPが高水準であり続ける慢性炎症反応はがんや循環器疾患などさまざまな疾患と関連しており、今回の研究結果で、くよくよして嫌なことを何度も何度も心の中で反芻することが、直接身体に悪影響を及ぼすことが医学的に明らかできたことは大きな発見だとしています。
71st annual meeting of the American Psychosomatic Society 2013 |
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甘党が甘いものを制限されてしまう、生きる喜びの最大の供給源の1つを失ってしまうということが糖尿病患者の苦痛であることは間違いありません。
これまで一般的に甘い果物も,砂糖を使用したお菓子と同様に糖尿病患者の食餌制限の対象と考えられてきました。
しかしデンマーク・西ユトランド地域病院のAllan S. Christensen博士らが、Nutrition Journal 2013年3月5日オンライン版に発表した研究によると、果物に関する制限は必要がないことが明らかになりました。
博士らは新規に2型糖尿病と診断された患者63人(平均年齢58歳、BMI値32)をランダムに2グループに分け、12週間にわたり果物摂取の影響を血液サンプルなどを採種し実験調査しました。
実験では参加や全員が標準的な糖尿病食を与えられましたが、果物摂取量高グループ31人は2切れ以上、果物少グループは2切れ以下に制限されました。
果物摂取量は1日平均高摂取グループが319g、低摂取グループは135gで、今回の実験の果物一切れは糖質10g以下を基準に決定されており、これは例えばりんご100g、バナナ50g、オレンジ125gでした。
データを分析した結果、グループの別なく、平均2kgの体重減、ウェストサイズが4cm減、でありHbA1c(ヘモグロビン・エーワンシー6.2%未満が正常)は高摂取グループが6.74%から6.26%へと減少していましたが、減少率に関して両グループに違いはありませんでした。
今回の結果から博士らは、果物の持つさまざまな効用を考えると、2型糖尿病患者に果物を制限すべきではないとしています。
Nutrition Journal 2013年3月5日オンライン版 |
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膵臓がんは初期症状があまりないために発見が遅れて手遅れになるケースが非常に多いがんであり、日本でも年々増加傾向にありますが、
米国・コロラド大学のRajesh Agarwal博士らが、Carcinogenesis 2013年3月8日オンライン版に発表した研究で、
ゴーヤー(ニガウリ)に膵臓がんを防ぐ効果があることが明らかになりました。
博士らは過去の細胞ベースでの研究でゴーヤー抽出成分が乳がん細胞の増殖を抑制することを発見しており、ゴーヤーに注目して研究をすすめてきました。
ゴーヤーに膵臓がん予防の効果があるのではないかと考え、培養細胞とマウスを使用した実験を行いました。培養細胞を分析したところ、
ゴーヤー抽出液が膵臓がん細胞のグルコース代謝能力を抑制することで細胞のエネルギー源を絶ち、
結果として膵臓がん細胞を死に至らしめることを発見しました。
さらに博士らがマウスに膵臓がん細胞移植して増殖状況を6週間観察した結果、
フリーズドライのゴーヤー・ジュースを飲ませたマウスは与えなかったマウスと比較して
60%も膵臓がん細胞の増殖が少ないことが分かりました。
博士らは今後ゴーヤーに含まれるどの成分が効果を持つのかについて研究をすする予定だということです。
Carcinogenesis 2013年3月8日オンライン版 |
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噛むことにはさまざまな効果があることが経験的に知られています。その昔メジャーリーグの選手は日本人にはなじみの薄い噛みタバコを試合中に噛んでいましたが、これはリラックスと集中力に効果があったため使用する選手が多かったともいわれています。
その後口腔がんリスクなどから、今ではもっぱらチューインガムが愛用されているようですが、こうした噛むことの効用が知られるようになって学問的にもガムを噛むことの効果についての多くの実証研究が行われてきました。
中でも集中力に関する研究はさかんで、これまで既に視覚記憶課題に対する集中力を改善することなどが実証的に明らかにされています。
英国・ウェールズ・カーディフ大学のKate Morgan博士らがBritish Journal of Psychology 2013年3月8日オンライン版に発表した研究で、ガムを噛むことが聴覚記憶に関しても集中力を持続させる効果を持つことが明らかになりました。
博士らは38人の被験者をガムを噛みながら実験を受けるグループと、何もなしの自然な状態で実験を受けるグループの2グループに分け、実験を行いました。実験では被験者は1-9までの数字がランダムに読上げられ続ける間に、奇数-偶数-奇数の順番で出てきた数字の並びを素早く正確に聞き取りチェックする作業を30分間継続しました。
被験者は実験の事前事後に気分状態も質問票によって調べられました。データを分析した結果、全体でガムを噛んでいた被験者のほうが反応が早く正確であり、この傾向は終了に近づくにつれて顕著になり拡大していました。
また実験開始直後のみガムを噛まないグループのほうがわずかに素早く正確でしたが、その後はガムを噛むグループが追い越し差が拡大していきました。博士らは今回の結果が、ガムを噛むことは我々が注意力をより長い時間持続させることに役立つことを示唆しているとしています。
British Journal of Psychology today, 8 March,2013 |


