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https://www.hokkaido-np.co.jp/article/125687?rct=c_editorial
平和を脅かしかねない動きが、相次いでいる。
北朝鮮が日本海に向け弾道ミサイルの発射を繰り返し、米領グアム周辺に照準を合わせる。トランプ大統領が挑発に応酬し、武力行使さえちらつかせる。
世界各地で事故を起こしている米軍の新型輸送機オスプレイが、住民の不安を置き去りにして北海道の空を飛び交うかもしれない。
日本人だけで310万人が命を落とした戦争が終わってから、きょうで72年を迎える。
安全保障関連法を強引に制定した安倍晋三首相は、憲法9条の改定を掲げ、日本を「戦争ができる国」に変えようとしている。
しかし、平和憲法を持つ日本の使命は対立をあおったり、軍事的な緊張を高めたりすることではない。世界の安定と共生を主導することこそが求められる。
同時に国民一人一人が平和を守り抜き、次世代にバトンを渡す覚悟を持たなければならない。
■憲法の理念見失うな
長崎に原爆が投下されてから72年たった今月9日。安倍首相と面会した被爆者団体の幹部は「あなたはどこの国の総理ですか」と詰め寄った。
唯一の戦争被爆国なのに、日本は核兵器禁止条約の交渉にすら参加していないことへの痛烈な批判である。米国の「核の傘」に頼り、核廃絶の願いに背を向ける政府への不満が広がる。
安倍氏が政権に復帰してから4年8カ月。戦争放棄と戦力の不保持をうたった憲法の平和主義を、足元から切り崩してきた。
それまでの政権の憲法解釈は、必要最小限の自衛権までは許容できるとし、それが多くの国民のコンセンサスでもあった。
ところが安倍政権は強引に解釈を変えた。安保法を成立させ、集団的自衛権の行使を可能にした。
集団的自衛権行使は、他国同士の戦争への参加に道を開き、大半の憲法学者が安保法を「違憲だ」と断じている。
安倍政権は安保法と同様に、特定秘密保護法と「共謀罪」法をごり押しした。国民の目と耳をふさぎ、口をつぐませて、政権への異論を封じる―。
「戦前回帰」と受け止められても、仕方がなかろう。その総仕上げが改憲ではないのか。
首相の改憲提案には、安保法と憲法との矛盾を解消したいとの思惑が透けて見える。だが自ら違憲の疑いが強い状況をつくり出しておきながら、それに憲法を合わせるとの論法は本末転倒だ。
河野洋平・元衆院議長は「現実を憲法に合わせる努力をしてみるのが先ではないか。憲法には一かけらの理想もないのかと言いたくなる」と批判する。
■核放棄の橋渡しこそ
グアムに向けた北朝鮮のミサイルが日本上空で落下した場合に備え、防衛省は航空自衛隊の地対空誘導弾パトリオット(PAC3)を中国・四国の4県に展開した。
最低限の防衛措置は一定程度、必要だ。だが小野寺五典防衛相は集団的自衛権を行使できる存立危機事態に当たり得るとの考えも示した。危険な発想である。
京大大学院の佐藤卓己教授は「北朝鮮にとって核兵器も弾道ミサイルも、実戦で使ったら最後、自らの体制崩壊を招く『終末兵器』である」と指摘する。
求められるのは、冷静な情勢分析と判断だろう。
トランプ政権では、北朝鮮への威嚇の言葉を並べ立てるトランプ氏とは裏腹に、マティス国防長官が「戦争の悲劇は十分に知っている」と述べ、外交努力を優先する考えを強調する。
中国、ロシアに加え、ドイツやフランスなどの先進国も米朝双方に自制を求めている。
ところが、日本は北朝鮮の脅威を強調するばかりで、バランスを欠いている。北朝鮮の核放棄に向け、関係国の橋渡しをすることこそ強く望みたい。
■加害の歴史忘れない
先月、105歳で亡くなった日野原重明さんは1945年3月の東京大空襲の時、東京の聖路加国際病院で勤務していた。
病院に運ばれてきた何百人もの患者を救えなかった。「地獄だった。子どもたちには『非戦』の世界をつくってほしい」。死の間際まで命の尊さを訴え続けた。
忘れてならないのは「加害の歴史」だ。アジア各国で2千万人が犠牲になったとも言われる。
安倍氏と同じ改憲論者で99歳の中曽根康弘元首相は「中国に対しての軍事行動は侵略であったと言わざるを得ない」と自著で記す。
戦後生まれが8割を超え、戦争体験を直接語れる人は減っている。でも映像や展示、記録を通じ、戦争の残虐性や悲劇を追体験することはできる。それが二度と同じ過ちを繰り返さない力になる。
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