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日本ではあまり言及されませんが…ブルームバーグでは酷評の模様です。
揺らぐ「農林系金融」システム、アジア最大の巨額損失、農家に影響も
http://www.bloomberg.com/apps/news?pid=infoseek_jp&sid=ayj65RtyOP2k
世界を100年に一度と言われる大不況に陥れた金融危機でアジア最大の損失を出しているのは、投資銀行でもヘッジファンドでもない。日本で農業や漁業に携わる人からお金を預かる農林中央金庫である。損失額は約8200億円と巨額だ。第一次産業を支える「農林系統金融システム」が今、揺らぎ始めている。
農林中金本店のある東京・丸の内から約150キロ離れた静岡県東伊豆の1200坪の土地で年間60万本を生産するカーネーション農家。山田弘志氏(42)は、目には見えないが「ものすごいことが起きている」と系統システムの異変を感じている。今後、地元農協による生産、販売、マーケティングなどのサポートが受けられなくなる可能性を危惧する。
投資残6兆円、戦後初無配の可能性
農林中金は、米メリルリンチが記録的な損失を計上した後でも「攻め」の投資で証券化商品を買い増した。12月末残高は6兆円。約8200 億円(実現損と評価損の合計)の損失を抱えて1兆9000億円の資本増強に追い込まれ上野博史理事長は引責辞任する。景気悪化で山田氏などが農協を頼りたい今、その農協を支える農林中金がまさに揺れている。
米ムーディーズの山本哲也シニアアナリストは「国際金融市場への農中の投資残が大規模で引き続きストレスにさらされており、資本を毀損(きそん)するリスクがある」と市場環境次第で追加資本増強を迫られる可能性を指摘。その場合、出資者の農協などからは「特に無配になるかもしれない中で、理解を得るのは難しいだろう」と述べた。
4月1日にトップに就任する河野良雄副理事長は2月20日の会見で、今期決算は赤字の公算があり、配当を見送る可能性があるとことを明らかにした。無配になれば戦後初めてとなる。一方で、信連や農協・漁協から調達した資金のコストに上乗せして返す金利である奨励金については、今後4年間は支払いを継続すると確約した。
漁師の不安
元農林水産省の官僚で経済産業研究所の山下一仁上席研究員は、農協の経営は農林中金からの奨励金などに頼る部分が強いと指摘する。これがなければ、日本の農業金融システムは「揺らぐかもしれない」と懸念する。奨励金の原資としてきた投資事業で大きな損失を出してしまったからだ。昨年9月末の有価証券評価損は1兆5000億円に上った。
伊豆で名物の伊勢エビを獲る漁師の渡辺吉範氏(59)は地元漁協が卸し先だ。13年前、漁協からの5000万円の融資で民宿も開業したが、最近は空室が多いという。渡辺氏は「この環境だ。農林中金を非難したりはしない」というが、不安を感じペイオフ対策として漁協貯金は500 万円にとどめ、ゆうちょ銀行に家族3人で3000万円を預けている。
メガバンク超える損失額
ブルームバーグの集計によれば、農林中金の海外を中心にした証券化商品投資での損失は昨年12月末で、みずほフィナンシャルグループが 8090億円(実現損と評価損の合計)と三菱UFJフィナンシャルグループの7200億円を上回る。債務担保証券(CDO)などへの投資は三菱UFJの2兆6200億円の2倍以上にも上る。
UBS証券の大槻奈那シニアアナリストは、農林中金の証券化商品への投資拡大の背景について、ゼロ金利が続く国内では「十分な奨励金を確保できなかった」と分析する。農林中金は98年に国際分散投資に運用方針を転換。これが奏功し02年度まで1000億円前後だった経常利益は金融混乱前の05年度から3年間は3000億円を続けて突破した。
「サザエさん」
現在は、世界でも有数の「アグレッシブな機関投資家」と言われる農林中金だが、日本国内では「保守的・安定的」というイメージを持つ。JAグループは、国民的マンガの「サザエさん」の放送枠で日曜日夕刻に住宅ローンなどのコマーシャルを流す。平均視聴率は25%と同時間帯で第1位。毎週約425万世帯が視聴している。
ウイングアセットマネジメントの羽賀誠代表取締役は、「農林中金については上場をしていないせいか、詳しく知らない人が多いだろう。ヘッジファンド投資なども行う世界でも有数の機関投資家だ」という。「保守的なイメージだが、リスクテイカーだ」と述べた。
農林中金の河野次期理事長(当時専務時)は07年4月、ブルームバーグ・ニュースとのインタビューで、ヘッジファンド、不動産への投資拡大を明らかにした。同年秋には、二岡俊之債券投資部長が欧米のABS(資産担保証券)など証券化商品に2兆−3兆円規模で追加投資する方針を示した。金融危機の顕在化前にリスク投資を増やしてきたのだ。
進む「農中離れ」
漁業関係者の環境は厳しい。伊豆漁業協同組合南伊豆支所では少なくとも4年間賞与がなく人員も5人削減した。山本昇孝支所長(56)は「出資を求められてもわれわれにもう余裕はない」という。農水省の調べでは、専業農家は1985年の370万人から22年間で200万人まで減少。漁民も93年から37%減り07年には20万4300人となった。
貯金残高1兆1500億円と全国第5位のJAセレサ川崎では農林中金の問題が、自らの経営戦略を見つめ直す機会となったと位置付ける。経営企画部の芹田悟部長(57)は、「現在、債券などのポートフォリオを見直しや、住宅・マイカーローンなど地元融資を拡大していく」方針で、奨励金に依存しない経営を構築する考えだ。
農林水産業発展の「原点回帰」
米国に端を発したグローバル経済危機は、東伊豆のカーネーション農家の山田氏や漁業の渡辺氏など全国320万人の農漁林業に携わる人々にまで影響を及ぼそうとしている。その一方で少子高齢化による農業人口の減少や、円安・原油高などで、経営環境が一段と厳しくなる中、農林系システムによる援助・支援の重要性も増している。
山田氏は昨年の収入が10%減少した。ビニールハウス内を暖める重油が高騰し、円高で外国産切り花の価格下落が追い討ちをかけた。重油代を浮かすのにビニールカーテンを2重にしたため、費用がかさんでしまったという。その重油は農協のトラックが荒れた急勾配の坂を登り、農場のある丘陵まで運んでくれている。
農林中央金庫法第1条は「金融の円滑を図ることにより、農林水産業の発展に寄与し、もって国民経済の発展に資することを目的とする」と明記している。カーネーション農家の山田氏は「現場を見てくれ。農林中金はもう一度、原点に帰るべきだ」と強調した。
あまりめでたくないですが、アジア最大の損失銀行に認定されてしまいました。
何回か言及したことがありましたが、地方の農協は集めた貯金を運用しきることができません。
何故なら、農家の減少等の理由で貸付する対象がないからです。しかし利息払いはしなくてはならないので
農中へ資金を上納します。その資金を農中が運用して配当金・奨励金となって農協へバックします。
農業の縮小、農産物の価格低迷で農協の農業事業はたいていは赤字です。その赤字を埋めるために
金融の黒字で損失補填しています。赤字が大きければ大きいほど金融で穴埋めをしなくてはならないので
多少無理をしてでも貯金を集めてせっせと農中に送ります。
となると、経営的には農業事業の赤字を少なくするため規模縮小を繰り返し、金融業がメインとなります
ので、農業の振興の妨げになっているとして農協の金融事業と経済事業(農業系事業)の分割経営論が
定期的に出てきますが、農協は全面的に反対しています。
また、農中としては、ほぼ無尽蔵に資金は増えるのですが、農協へ配当金・奨励金をバックするため
には、国内の低金利では追いつかず自ずとリスクが高い運用をせざる得ないという状況になります。
(そのわりに投資のプロがいないのが不思議ですが)
農中では4年間は奨励金の支払いを続けると言ってますが、もし滞ったら…即死する農協も出始める
と思われます。もっとも農協は破綻する前に合併を繰り返しますので破綻まではいかないと思いますが。
記事中にJAセレサ川崎が地元融資拡大すると言ってますが、それは人口が多い都市でのこと。
地方の農協では農家減、人口減ですのでそういうわけにも行きません。
農中に依存しない経営を模索するのも大事ですが、そもそも金融に依存しない農業づくりが一番大事です。
もっとも儲かる農業と言うのは農協や地方だけではなく農政全体で取り組まないと難しいと思いますが。
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