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ファッツ・ウォーラー(FATS WALLER)の「エイント・ミスビヘイヴィン」(AIN'T MISBEHAVIN')です。RCA VICTORの12インチ・オリジナル盤、モノラル仕様になります。レコード番号は、LPM−1246。
盤には目立つキズもなく、ほぼ良好です。多少のプチパチは止むを得ないところでしょう。ジャケットは、天地とも小口から10cmほど割れています。少しスレと当たりもありますので、中の下くらいの程度かもしれません。ただ50年前の盤としてはこんなものかなとも思います。
このレコードは、1956年にファッツ・ウォーラーの過去の録音を集めて作られた見事なコンピレーション盤です。一応プレイヤーは、ファッツ・ウォーラー・アンド・ヒズ・リズムとなっています。
パーソネルは定かではありませんが、時期的にはピアノとヴォーカルにファッツ・ウォーラー、ギターにアル・ケイシー、トランペットにハーマン・オートレー、テナー・サックスにユージン・セドリック、ベースにセドリック・ウォーレス、ドラムスにスリック・ジョーンズといったところかと思われます。
収録曲は、A面に「Honeysuckle Rose」、「Ain't Misbehavin'」、「I Can't Give You Anything But Love, Baby」、「Two Sleepy people」、「I'm Gonna Sit Right Down And Write Myself A Letter」、「It's A Sin To Tell A Lie」の6曲、B面に「The Minor Drag」、「The Joint Is Jumpin'」、「Hold Tight (Want Save Sea Food Mama)」、「Your Feet's Too Big」、「Until The Real Thing Comes Along」、「Tea For Two」の6曲、計12曲です。
ファッツ・ウォーラーは、ジャズ・ピアノとオルガンの名手であり、ユニークな唱法と声が自慢のヴォーカリストであり、作曲も数多くこなし、ラジオや映画にも出演した、正に時代が要求したエンターテイナーだったと言えます。ピアノでは、ストライド奏法を確立し、アート・テイタム以前の最大のピアニストであり、オルガニストとしてはカウント・ベイシーに多大の影響を与え、作曲家としては後世に残るスタンダードを数多く手がけて、ちょっと凄い存在です。
「ハニーサックル・ローズ」「ジターバグ・ワルツ」「浮気はやめた」といった名曲の作者で、後年のジャズマンに何度も採り上げられています。ベニー・カーターなんぞは「ハニーサックル・ローズ」を我が曲のように愛奏していますね。「ミュージシャンズ・ミュージシャン」のはしりだったかもしれません。
しかし時代に合わせたためか、道化に扮することも多く、純粋ジャズファンからは1段ランクの低い扱いを受けているようにも思えます。
その名の通り「ファッツ(太い、デブ)」な体型で、ずーっと280ポンドから300ポンドの体重だったといいますから、要は125kgから135kgほどの巨体だったのです。この体型とユニークな歌唱で、一世を風靡したことは確かで、どうにも過小評価されているのが甚だ残念なところです。
アンディ・ラザフとともに沢山の曲を作ったにもかかわらず、飲んだり食べたり、とにかく生活するために曲を売っており、今で言う著作権など自ら放擲していたようです。ハンバーガーの10個や20個は平気で平らげていたそうですから、そりゃ食費が嵩みます。
A面冒頭の「ハニーサックル・ローズ」、「浮気はやめた」はピアノソロで、あとの4曲にはヴォーカルが加わります。「嘘は罪」もご機嫌な演奏です。B面では真ん中の「Hold Tight (Want Save Sea Food Mama)」が陽気で愉快。最後の「Tea For Two」もピアノソロで聴かせてくれます。
年齢的に、サッチモやエリントンとそう変わらず、十分タメを張れるジャズ・ジャイアントだったのですが、悲しいかな肺炎に罹り、楽旅移動中の車中で亡くなってしまいます。時にファッツ・ウォーラー39歳でした。サッチモやエリントンが70歳を超えるまで活躍したことを思えば、随分な夭逝だったわけです。
ジャケット表裏にある彼の写真ですが、いかにも陽気なこういう笑顔で演奏していたことには間違いありません。いつだったか彼の映像を見ましたが、巨体を揺らしてピアノを弾き、いつのまにか踊りだして歌っているという、エンターテイナーそのもので、それでいてテクニックが正確で実にスイングしていました。
しかし、裏面の写真はホントにアホみたいではあります。流し目ならぬ、まるっきり左を向いた目玉に、下ぶくれの顔かたち、ニヤケタ表情は、あの「こまわり君」じゃあーりませんか。実に笑かしてくれます、流石ですな。
彼の演奏は幾つかCDでも発売されているでしょうが、音質といい有り難味といい、やっぱりアナログ・ディスクには敵いません。何か深みが全然違います。生涯で600曲以上は収録したとか言われる彼には失礼ですが、案外このアルバムでそこそこ事足りるかもしれません。
もちろん演奏スタイルは古いのに間違いありませんが、ここまで来るとスタイルの新旧など超越して、いい音楽はいつ聴いてもいいもんだってことが、このアルバムを聴いてもらえればよく分かります。
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