団塊の世代の虫眼鏡と遠眼鏡

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新宿御苑

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 東京はとうに桜の季節が終わってしまった。桜前線はもう北海道に渡った頃だと思う。
 携帯の写真を整理していたら「新宿御苑」の桜があった。
 そう、「新宿御苑」は過密都市東京の、それも新宿の繁華街に隣接している。
 その日は、雲ひとつない晴天。私は所用で私鉄沿線のある駅のそばのある寺に行って来た。思ったより早く用が済んだので、帰りの道すがら新宿の街を久し振りに歩くことにした。
 新宿に着き、地下の改札口を出たら、想像以上の人混みに圧倒されてしまった。
 とにかく地上に出よう、地下は居心地が悪い。と、地上に出たら、地下よりもすごい人混みである。真っ直ぐに歩けない。行く手を人に横切られるたびに足が止まってしまう。しだいに目が廻り、胸も息苦しくなってくる。下半身も重くなってきた。足が痛いような気もしてきた。

 アルタ前を通過、紀ノ国屋の人だかりを左に見て歩いていく、いくあてもないのだが、とにかくこの混雑から抜け出そうと思った。そこで思いついたのが、「新宿御苑」だった。
 伊勢丹、丸井を左右に見て明治通りを横切れば、目と鼻の先である。

 新宿御苑は大人200円の入場料が必要である。チケット売り場を見ると、ここも長蛇の列である。
 ごった返している。「今日はやめておこう」とは思ったものの、次の行き先も思いつかない。これだけ人が吸い込まれていくのは桜の季節だからだろう。御苑の桜も見ておこう。ままよとばかり、人混みに身を委ねることとした。御苑の中は想像通り広大な芝生に大勢の人があちこちで車座になり、桜を、そして、春を満喫していた。
 どうやらこの芝生はおいらの居場所ではなさそうだと、千駄ヶ谷よりの奥まった方へ向かうことにした。
 すると、池が見えてきた。人もそれほど多くはいない。近づくに従ってその池の周辺はさまざまな品種の桜が満開である。ソメイヨシノはもう満開が過ぎてしまった。しかし、八重桜、大島桜、鬱金、御衣黄を同時に楽しめるベストの位置のベンチもおいらのために空いている。

 ベンチに腰を下ろした。ホッとする。と、同時に身体から力が抜けていく…。薫風が頬に心地よい。深く息を吸い、目をつぶると、今度は気が付かなかった何種類もの鳥のさえずりが聞こえてくる。
 半時ほど経っただろうか、うつらうつらと、うたた寝をしたようだ。
 せっかくの桜を楽しむ前に寝てしまったようだ。目覚まし代わりに、普段からポケットに忍び込ませている、Maker's Mark を取り出し、キュッとひと口やった。
 香ばしいバーボンが口の中に広がった。喉と鼻腔を刺激して胃に落ちていく。あぁ、美味い。

 かつて「東京には自然がない」という言葉を聞いたことがあった。そうだと思ったこともあったが、どうやら自然は豊かなようだ。
 多様な植生は多様な生物を回帰させているのであろう。都会の自然は豊かであると言っておこう。
 今日のテレビのニュースでも、東京千代田区のビルの屋上緑化を兼ねて屋上農園が紹介されていた。ヒートアイランド現象の対策としても有効な一手となるかも知れない。
 「新宿御苑」は桜をはじめ、多くの草花や樹木が植えられていて、季節に彩りを添えているから、いちど足を運んでみるのも一興であろう。

 もう間もなく梅雨の季節がやってくる。紫陽花も明治通沿いの裏手の方に随分と植えられていた。雨の日を選んで、静かな「新宿御苑」を楽しむことにしたいと思っている。


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