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 2年間かけて準備した群馬自然史博物館の企画展「驚異宝物館:ヴンダーカマー展」が、いよいよ本日フィナーレとなる。日本大学芸術学部の学生たちと自然史博物館がコラボレーションした史上初の試みだったが、学生なんかにちゃんとした博物館の展示ができるわけない、という世間の冷たい常識に対抗する機会を作ってくださった長谷川善和館長、ならびに学生を一人前にあつかってくださり厳しく指導いただいた高橋、姉崎両館員のお力で、ものすごいものができあがった。これを見ないでは、ヴンダーカマーは語れません・・・・けれども、その展示もとうとう本日かぎりになった!
 まず、会場の入り口に6メートルのワニが天井からぶら下がる。このワニは、中世の教会で聖ゲオルギウスが龍退治をした記念物として天井に飾られ、またのちには教会に敗れた悪魔の屍骸としても展示された伝統をもつ、最初の動物標本だ。ひと夏取り組んだみんな、おつかれさま。すごい迫力だった。
 このゲートをはいると、乱雑に並べられた標本の数々がある陳列棚にいたる。ちゃんとした標本もあるが、ヴンダーカマーは驚異を展示するところだから、いろいろ加工を加えないとおさまらなかった。羽を逆さにつけたフウチョウだの、ほっかむりをして釣竿もったイタチだの、とにかく自然と人工のミックスがきわまっている。自然史博物館でこうした奇怪な標本を展示するのはめずらしいことだが、ここにこそ博物学的想像力の原点がある。神が創造した自然には奇跡や神秘がごろごろしているはず、人間がつくるものが神に想定されなかったはずはない。それ!、人魚だ、ドラゴンだ、と昔の博物学者ははりきったのだ。今回、その人造生物を学生に制作してもらったところ、傑作が目白押しとなった。入り口に展示されているキマイラのコーナーがそれ。たとえば、「アンホウズキ」というホウズキそっくりの魚。ホウズキの実に擬態し、頭に付いた偽の餌をのばして茎にぶら下がっている。この造形がすばらしい。
 博物学的にすごいのは、萩の田中市郎が保存したもっとも完全な姿をしたリュウグウノツカイの標本。これ、本邦初公開で、これまでは左にあるビンのなかに液浸保存されていたのを、職人さんが立派な姿にしてくれたものという。ぜひ、尻尾を見てほしい。たいてい深海から浮き上がった時点でかじられたり落ちたりしてしまう尻尾は、めったに残らないのだ。田中市郎という萩の博物学者は、ほかにもいろいろな採集調査をおこない、標本を教育に役立てた。子供だけでなく大人に対しても、お祭どきなどを利用し自分で場所を作って標本の展示と講演を露天でなさったとも聞く。まさに、日本ヴンダーカマーの先人だ。もっと世間にみとめられていい人だ。
 で、今回ぼく自身のコレクションもひとつふえることになった。キマイラ・コーナーに展示されたジョン・スヨン君の大作「100年後の三匹の子豚」だ。ここに何枚か図像をそえる。未来の子豚は、狼さんに家をこわされないよう、宇宙や海底に家を建てる!! 和紙など思いもかけない素材でつくられている。「子豚の家に進化」を驚異の造形で表現したその発想に脱帽した。来年五月にはジョン君の個展も開かれるそうだ。ぜひとも、実物をごらんあれ!それから、ここに展示した90体ものキマイラたちをオークションにかけるイベントを、東京でやりたいなーーー。
 

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