しばらく前の雨の日、ほぼ満員の電車に乗り込みました。 一番端の座席の前に立って、書類の一杯詰まったカバンを網棚に上げようとしました。 その時、電車が大きく揺れたため、バランスを崩して倒れそうになりました。 右足に力を入れると同時に、濡れた傘を持っている右手で吊り革を握ろうとしましたが、 私の右横には、小学生のちっちゃな女の子がいます。 その子を危険な目に合わさないようにと、傘を真っ直ぐ大きく上にあげて、吊り革をようやく握りました。 その際に、その濡れた傘のしずくが、前に座る若い女性の服を濡らしたのです。 左手は、未だ重いカバンを網棚にキチンと置けていません。 そこで、再び電車の揺れがきましたが、右には小学生がいます。 傘先を座席側に向けないと仕方ありません。 不安定な姿勢ですから、座席方向を向いた傘先は、ゆらりゆらりと揺れ、 二度三度と座席に座る女性を濡らしたのです。 一度ならず二度三度、服を濡らしてしまったのです。 ところが、その彼女、「くすっ」と笑ったのです。 当然、不機嫌な顔で睨みつけられることを想定していましたから、 意外な思いで、「ごめんなさい」と謝りました。 ところがその彼女は、不快な顔をするどころか、「いえいえ」と微笑んでくれたのです。 私はその笑顔に、本当に救われた思いでした。 そして、彼女は、何事もなかったように日経新聞に目を落としています。 その後、ある駅で彼女は席を立ち、私の横を通って、降車ドアに向かう際、 私を気遣ってのことでしょう、会釈までしてくれました。 私は胸一杯になりました。 私だったらどういう態度を取っていたのだろうか…。 まだ、梅雨入り前の肌寒さが残る日のことでした。 [ 天邪鬼のひとり言 ] 嵐風人
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2008年06月18日
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男は明日はくためだけの靴を磨く ― 作詩/作曲 伊勢正三 ― 夕暮れの街並みが 少しずつ暗くなってゆく 過去のことは思い出さず これからのことは解からない [ 天邪鬼のひとり言 ] 嵐風人
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