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デザイナーは、すぐに問題を解決するような天才的アイデアを、いきなり探し始めてはいけない。なぜならそれは、アーティスティックでロマンティックなやり方だからである。
本書は、調査・分析をベースにしたマーケティング指向の方法論について述べられています。タイトル通り、既存のモノの調査・分析から問題点を洗い出し、より機能的で合理的な新しいモノを生むための方法論です。イタリア人のモノづくりは、感覚最優先という先入観を持っていたのですが、予想外に論理的なプロセスに驚きました!
ハードカバーの表紙を含む厚みが3cm(約380ページ)もあるので、つい手に取るのを躊躇してしまいますが、読み始めると案外スラスラと最後まで読むことができました。というのも、具体的な方法について論じた部分は30ページ弱で、大部分は方法論の様々な事例への適用となっているからです。実務者にも有益な本だと思いましたが、モノづくりの方法を多数のケーススタディを用いて述べた教科書的な内容で、特にデザインを学び始めたばかりの方にオススメです。
著者によれば、「企画するのは、そのやり方を知っていれば簡単なこと」で、「企画の方法とは、経験から論理的に順序づけられた、一連の必要な作業のこと」であり、「最小の努力で、最大の成果に到達すること」を目的とします。著者に従えば、「建築」でも「料理」でも、方法論は同じです。
1.P(問題)・・・「デザインの問題は必要から生まれる」
2.DP(問題の定義)・・・解決すべき問題は何か?なぜそうなっているのか?現状の観察。問題を定義すると、作業すべき範囲も同時に定義される
3.CP(問題の構成要素)・・・複雑な問題を細分化し、整理する
4.RD(前例の収集)・・・データのリサーチ。自分より前に、同じことを考えた人がいるかもしれない
5.AD(前例の分析)・・・データの分析。先人と同じ過ちを繰り返さない為に研究、分析を行う
6.C(想像力)・・・「想像力」は、「思いつき」や「直感的アイデア」に取って代わる
7.MT(使用可能な素材や技術の収集)
8.SP(実験)・・・素材や技術の新しい使い方の試行錯誤
9.M(模型の製作)・・・ひとまずの解決案
10.V(様々な角度からの検証作業)・・・未来の利用者数名に見せ、率直な意見を求める。予想外の誤りを訂正し、製造前にすべての必要事項を確認する
11.DC(製図)・・・プロトタイプの実現に向けた精確な寸法と指示
12.S(解決)・・・問題を解決することが生活の質を高める
6番の「想像力」は、何かを思い浮かべる(イマジネーションする)という作業ではないようです。ここでの「想像力」とは、データの調査・分析をもとに空想と発明をまとめ、問題を現実的な解決に導くための統合的思考ではないかと思います。
以下が分析項目の一覧です。
1.モノの名称
2.作者
3.製造者
4.大きさ
5.素材・・・機能と素材の関係、その素材の使い勝手
6.重さ
7.技術・・・正しい素材を使用しても、間違った技術は、間違ったモノを製造する
8.費用・・・同等の機能を持つ他のモノと比較する
9.梱包
10.謳われた用途
11.機能性
12.音
13.維持管理
14.人間工学
15.仕上げ
16.操作性
17.耐久性
18.毒性
19.美観・・・一貫性のある方法で作られること
20.流行、スタイリング・・・流行や一般大衆の好みに直結するような“アイデア”は、デザインではなく、スタイリングの話
21.社会的価値
22.本質性・・・豪華さはデザインの問題ではない
23.前例・・・進化とは単純化であって、複雑化ではない。単純化は難しい作業であり、豊かな想像力が必要とされる
24.一般大衆からの受容・・・どのように宣伝され、大衆はどのように受け入れたのか
著者曰く、「デザインの定義とは、必要な機能をもったモノを正しく製作すること」だそうです。「日用品」の中には、無名のデザイナーにより企画された「真のデザイン」と呼ぶに相応しい製品があり、本書では、幾つかの日用品についての分析も行われています。
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