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大量化学療法とは通常の化学療法で用いる抗がん剤の量に比べ、かなり大量の抗がん剤を投与する治療法のことです。この場合、高度の骨髄抑制 (白血球、赤血球、血小板が長期間にわたり減少する) が起こるので、あらかじめ採取・保存しておいた自家骨髄もしくは自家末梢血幹細胞を輸注(注射)し、血球の回復をサポートします。組織型の合った他人の骨髄、さい帯血などを使う場合もありますが、ほとんどの場合自分の造血幹細胞を用いるので、大量化学療法はしばしば自家移植、自家造血幹細胞救援大量化学療法とも呼ばれます。

大量化学療法導入の背景 (なぜ必要なのか)
● 小児がんの治療成績は向上したとはいえ、一部の転移性腫瘍など、なお難治性の腫瘍が存在します。このような場合、現在の手術、化学療法、放射線治療ではこれ以上の治療成績の向上は困難のため大量化学療法が用いられることがあります。
● 脳腫瘍で予防的全脳全脊髄照射を要する場合、低年齢(3歳未満)では放射線による晩期障害が問題となるので、これを回避するため大量化学療法が代替治療として採用されることがあります。

どのような抗がん剤を使えばよいのか
● 投与量と抗腫瘍効果が対数関数的に相関するもの→アルキル化剤 (シクロホスファミド、ブスルファン、チオテパ、メルファランなど) [逆に投与量を増やしてもあまり効果が出ない薬剤も存在します→メソトレキセート、シスプラチンなど]
● 通常の化学療法では用いない抗がん剤→一般にがん細胞は何度も同じ抗がん剤にさらされていると抵抗性を獲得して抗がん剤が効きにくくなる性質を持っていることが知られています(耐性)。従って通常の化学療法を4、5コース行った後に大量化学療法を行う場合は、それまでの化学療法で使ったことのない、がん細胞にとって初めて出会う抗がん剤を用いることが理想です。
● 投与量を増やしたとき、その毒性も強まりますが、血液毒性以外の副作用が許容範囲内であるもの (血液毒性は幹細胞輸注でサポートできるが、出血性膀胱炎、肝臓や腎臓に対する毒性、聴覚障害などの非血液毒性は回復できないことがあります)

問題点
● 抗がん剤の量が多いので、粘膜障害や肝、腎、中枢神経などに対する急性毒性が強く出る可能性があります。
● 急性毒性のほか、将来不妊、成長障害などの後遺症 (晩期障害)が発生する可能性があります
● 二次がん (もとの腫瘍とは別個の新たな悪性腫瘍) が発生する可能性があります。

当科での大量化学療法の試み
当科では小児難治性腫瘍に対してチオテパとメルファランを用いた大量化学療法をおこなっています。その対象疾患は、通常の化学療法や手術、放射線治療だけでは完治が難しい転移性の腫瘍や再発腫瘍で、具体的には神経芽細胞腫、横紋筋肉腫、肝芽腫、脳腫瘍などです。また3歳未満の脳腫瘍のお子さんに対しては放射線の代替治療としても行っています。用いる抗がん剤は用量効果の大きなアルキル化剤であるチオテパとメルファランであり、これらは単独でも神経芽細胞腫や横紋筋肉腫などの小児の代表的な固形腫瘍に対して有効性が示されているものです。また中枢神経への移行もよく脳腫瘍に対する効果も期待できます。これらの薬剤をできるだけ大量に且つ安全に投与するために、総量チオテパ800mg/m2、メルファラン280mg/m2を1週間の間隔をあけて2回に分けて投与する方法を考案しました(Double-conditioning regimen)。1993年からこの方法の大量化学療法を80人以上の患者さんにおこなっています。
以上のように、大量化学療法は通常の化学療法に比べ非常に大量の抗がん剤を用いることができるため、難治性の腫瘍に対しても効果が期待できる半面、急性毒性、晩期障害などの副作用もあるため適応を慎重に考える必要があります。

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