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ランゲルハンス細胞組織球症 (Langerhans’ cell histiocytosis:LCH)は以前にはヒスチオサイトーシスX とよばれていました。現在では一般にランゲルハンス細胞組織球症(LCH)とよばれています。病気の原因は明らかではありませんが、骨髄で産生される組織球とよばれる細胞が増殖し骨などの臓器に浸潤します。ただし悪性腫瘍であると断定はされていません。日本での発症頻度は年間40例程度といわれており、多くが10歳未満で男児に多いといわれています。

レントゲンを撮影されると見つかったなど、偶然、発見されることも多く、発熱、体重減少、尿崩症(水分コントロールができず多尿になること)、慢性中耳炎などで発見されることもあります。体のさまざまな臓器に出現し、皮膚では発疹、臓器では腫瘤などを形成します。後遺症としては、全身のホルモンを産生している下垂体といわれる部位がおかされ、尿が必要以上に出ないようにするホルモンが障害された結果、必要以上に尿がでてしまう「尿崩症」があります。診断はレントゲンで異常があった場所の組織検査(生検)です。レントゲンでは骨が溶けて穴があいたように見えます。腫瘍の浸潤が骨だけである場合を好酸球性肉芽腫症といい、ほかのたとえば皮膚や肝臓、リンパ節に異常がある場合をハンドシューラークリスチャン(Hand-Schuller-Christain disease)病といいます。さらに拡大した場合はレッテラーシーヴェ病(Letterer-Siwe disease)と呼ばれ乳幼児に多く見られます。

治療法 は病気の広がり方によります。病期は3つにわかれておりSS(ひとつの臓器でひとつの病変)では自然に退縮することもあり経過観察のみ、ないしは増大傾向にあればステロイドホルモンの腫瘍への注射などです。SM(ひとつの臓器だが病変が多発している)、MM(複数の臓器に複数の病変が存在している)など病期が進んでいる場合はビンクリスチン、キロサイド、メソトレキセート、ビンデシンなどいわゆる抗がん剤を全身投与します。現在当院ではSM,MMの患者さんに対し全国統一プロトコールJLSG-02に参加し治療を行っています。

治療に対する反応はおおむね良好です。SSでほぼ100% 、SMで70%、MMで40%とされていますが5年生存率ではSSは100%、SMで100%、MMで90%となっており病気をもちながら生存されています。いかに病期を進ませずに治療しうるかが重要といえそうです。

再生不良性貧血

再生不良性貧血 は、血球を作る「もと」になる細胞「造血幹細胞」に障害が起こって引き起こされる病気です。障害が起こる場所は、硬い骨(骨皮質)の中のゼリー状の「骨髄」という臓器で、普段はさかんに血球を作っているところです。血球には、赤血球、白血球、血小板の3種類があって、いずれの血球も造血幹細胞から作られており、これらの3種類の血球が作れなくなる病気です。

原因 として、ある種の薬剤(抗生剤や鎮痛薬、抗けいれん薬の一部)の他、肝炎やウイルス感染に引き続き起こる場合(続発性)もありますが、多くは原因不明(特発性)です。

症状 としては、白血球数減少、中でも細菌感染に対して抵抗力を発揮する好中球数が減少することによる感染症(発熱を伴います)、赤血球減少に伴う貧血、血小板減少に伴う出血があげられます。この中で、感染症は重症になると生命の危険を伴います。感染症の危険は、好中球数が500/マイクロリットル (1マイクロリットル(1立方ミリメートル)中に500個)以下で起こり,特に、好中球が200/マイクロリットル 以下ではその頻度は増します。赤血球は酸素を運ぶ役割をもっており、貧血になると、顔色が悪くなり、動悸、息切れなどの症状が出ます。これらの症状は、ヘモグロビン値が6~7g/dl(1デシリットル中に6~7グラム)以下で出現しやすくなります。血小板は、出血した際にまず血管の傷を固めて出血を止める役割をもっており、血小板減少に伴って、皮下出血(点状出血)や打ち身のあとの青あざ(紫斑)が出やすくなりますが、これらの皮膚の出血症状は生命を脅かすものではありません。鼻血(鼻出血)が出た際に出血が止まらなくなる症状も現れます。まれですが、頭部を打った際に頭の中に出血(頭蓋内出血)を起こし生命に関わることもあります。これらの重症の出血症状は血小板数が1~2万/マイクロリットル 以下で起こりやすくなります。

病気の 重症度 は、大きく3つに分けています。好中球数500/マイクロリットル 以下、血小板数が2万/マイクロリットル 以下、網状赤血球数が2万/マイクロリットル 以下のうち、少なくとも2つを満たす状態を重症、好中球数1,000/マイクロリットル 以下、血小板数が5万/マイクロリットル 以下、網状赤血球数が6万/マイクロリットル 以下のうち、少なくとも2つを満たす状態を中等症、それ以外を軽症に分類します。重症の中でも好中球数が200/マイクロリットル 以下の場合に最重症と呼びます。重症度は患者さんによってまちまちです。 ちなみに、正常値は、好中球2,000/マイクロリットル 以上(年齢によって若干異なります)、血小板数15万~40万/マイクロリットル 、網状赤血球3万~10万/マイクロリットル です。なお、赤血球数は350~500万/マイクロリットル 、ヘモグロビンは12~15g/dl(乳幼児は低めです)。網状赤血球というのは、作られたばかりの若い赤血球で、内部の形が網目状になっていることからこう呼ばれ、赤血球造血の良い指標となります。

診断 は、通常の血液検査で白血球数、赤血球数(網状赤血球数)、血小板数を測定し、骨髄穿刺(針を腸骨という骨盤の骨に刺して骨髄液を採取する検査)をする必要があります。再生不良性貧血と区別が難しい病気に、血液の悪性腫瘍である白血病と骨髄異形成症候群と呼ばれるいわゆる「白血病の前段階あるいは白血病への移行段階にある病気」があります。これらと区別するために、骨髄細胞の染色体検査を同時におこないます。区別が難しい場合もときにあり、何度か骨髄穿刺を繰り返すことが必要になる場合もあります。場合によっては骨と骨髄を一緒にわずかに削り取る骨髄生検も必要になります。また、区別を要する病気に、先天性あるいは遺伝性の再生不良性貧血もあります。この場合は、血液以外の症状も現れることも多く、さらに必要な検査を必要とする場合があります。

治療 は、重症度によって異なります。
軽症では、無治療で経過をみることがほとんどです。
中等症や重症では、治療が必要になってきます。
治療には、感染症に対する治療、貧血・血小板減少に対する輸血といった対症療法と、造血幹細胞移植や免疫抑制療法などの根本的な治療(根治療法)の二つがあります。

対症療法
感染症'に対する治療
実際に感染症を併発している場合は、抗生物質(抗細菌剤、抗真菌剤)による治療が中心です。G-CSFという好中球を増やす薬を使うこともあります。
赤血球輸血
輸血歴が少ない程、骨髄移植の成功率(骨髄生着率)が高いことと、体内での鉄の蓄積を防ぐために、できるだけ赤血球輸血は最小限におさえます。
したがって、症状が強くない場合は、ヘモグロビンが6~7g/dl 以下になった場合に輸血します。
血小板輸血
血小板輸血も数多くなると、血小板に対する抗体が出現して効き目が弱くなることがあり、必要最小限にとどめます。
鼻出血などの出血症状が続いたり、血小板数が1~2万/マイクロリットル 以下で重症な出血の恐れがある場合に血小板輸血をおこないます。

根治療法
免疫抑制療法 造血幹細胞移植 (骨髄移植、さい帯血移植)の二つがあります。

中等症に対する治療 は、免疫抑制療法がまず選択されます。これは、再生不良性貧血が一種の自己免疫機序(免疫が異常に働いて、自分の細胞、この病気の場合は造血幹細胞を破壊するという理屈)で発症していることに基づいています。この免疫抑制療法は、主にATG(抗リンパ球抗体:ウサギやウマに作らせたヒトのリンパ球に対する抗体)やサイクロスポリンと呼ばれる薬を使い、G-CSF(好中球増加因子)を加えて治療するものです。この治療がうまくいかない場合は、HLA一致ドナー(HLAは白血球の型のことで、同胞(兄弟姉妹)間で一致する確率は4分の1です)からの造血幹細胞移植をおこなうか、もう一度免疫抑制療法を試みます。

重症に対する治療 としては、HLA一致ドナーがいる場合は造血幹細胞移植が選択されます。HLA一致ドナーがいない場合は上にあげた免疫抑制療法がおこなわれます。免疫抑制療法がうまくいかないときは、骨髄バンクからの移植をおこなうか、もう一度免疫抑制療法を試みます。

再生不良性貧血の小児に対する 骨髄移植 の成績は大変良好で、80~90%以上の確率で成功し病気は根治します。ただし、移植前に輸血が多くおこなわれている場合には、生着がうまくいかず(移植された骨髄が拒絶される)失敗に終わる可能性が増します。また、移植自体の副作用が強く出る可能性もあります。これには、急性のもの(粘膜障害、感染症、急性GVHD)、慢性のもの(慢性GVHD、感染症)、後遺症(成長障害、性腺障害、ホルモンの障害、がん)があります。

免疫抑制療法 については、5~6割の患者さんで有効ですが、途中で再び病気が再燃することがあります。また、のちに白血病を発症する危険性も若干あります。病気が再燃してしまった場合は、もう一度免疫抑制療法を試みるよりも造血幹細胞移植をおこなった方が良いと報告されています。

いずれにせよ、中等症や重症の場合は、造血幹細胞移植をする、しないは別にして、まず移植ドナーを探すことが必要です。その理由は、移植ドナーさんを探すことは時間がかかり(特に骨髄バンクドナーについては)、すぐに移植できない場合がほとんどだからです。

造血幹細胞移植

造血幹細胞移植 には3つの種類があります。 骨髄移植 末梢血幹細胞移植 臍帯血移植 です。(この3つの違いについては後述します) 一般的に知られているのは骨髄移植ですので、これについて説明します。その前にまず、骨髄とは何をしていることころでしょうか? それは、化学療法のところで書いた白血球、赤血球、血小板などいわゆる『血』を造っているところです。骨髄移植では、この血を造っている骨髄を他人(=ドナー)の骨髄におきかえます。しかし、何もせずドナーの骨髄だけを患者さまに入れても患者さまの体はドナーの骨髄を受け入れてくれません。(これを拒絶といいます) そこでまず、患者さまの骨髄を空っぽにする必要があります。この空っぽにするために化学療法や放射線治療が行われます。この骨髄を空っぽにする方法を『前処置』と呼びます。具体的な流れとしては、前処置として5~10日化学療法や放射線を照射をし、移植日にドナーから採取した骨髄を輸血と同じように点滴(静脈)から投与します。そうすると2~4週間後にはドナーの骨髄が『血』をつくって白血球、赤血球、血小板が回復します。移植後はさまざまな感染や、GVHDと呼ばれる合併症の可能性があるので血を作る力(=骨髄機能)が回復しても十分な注意が必要です。どういった薬剤、どれくらいの放射線をもちいた前処置が適切なのか、は病気の種類や患者さまの状態によって異なります。

それでは、骨髄移植、末梢血幹細胞移植、臍帯血移植の違いについて説明します。骨髄では全ての血液細胞の源となる『造血幹細胞(ぞうけつかんさいぼう)』あるいは単に『幹細胞』と呼ばれるものがあり、これが将来白血球、赤血球、血小板などに変化します。以前は、この『幹細胞』が骨髄にしかないと考えられていたのですが、白血球を増やす薬を使うことによって末梢血(いわいる普通の採血でとる血)にも出てくることや、臍帯血(出産の時の臍の緒からとる血)にも含まれていることがわかりました。ドナーの末梢血から幹細胞を採取し、それを患者さんに入れることを『末梢血幹細胞移植』、臍帯血を入れることを『臍帯血移植』と言います。つまり、どの幹細胞を利用するかによって名称が異なっています。一般的には、『末梢血幹細胞移植』は骨髄機能の回復がはやく、『臍帯血移植』はGVHDの可能性が低いなど、各々特徴がありますが、どの移植が最善であるかは患者さんによってまちまちですので、担当の医師にご確認ください。

臨床試験について

臨床試験 とは何でしょう?
病気に対する新しい薬や診断などを行う際に、それが患者さんにとって安全であり有効であることが科学的に証明されなければなりません。このために多くの患者さんやご家族に協力していただいて、新しい薬や診断方法が安全であるかどうか、期待された有効性が示されるかどうかに対し、新しい薬、診断法を試験し情報を集めることを臨床試験と呼んでいます。(「薬」や「診断法」を試すのであって患者さんを「試す」のではありません) 新しい治療法であるため思わぬ副作用や残念ながら有効性が確認されないこともありますが、こうした情報を集め分析することで、より多くの方に有効な治療法がみつかったり、あるいは、オーダーメイドと呼ばれる一人一人の患者さんの体にあうような薬剤の投与量を調節する方法を見つけることができれば、より多くの患者さんによりよい治療を受けていただくことができるでしょう。
一方、患者さんおひとりおひとり異なった結果がでることもあるため、多くの患者さんに参加していただくことが必要です。多数の患者さんへの治療による影響を分析しさらに工夫することで、患者さんご自身に、あるいは将来の患者さんに、よりよい治療を提供することができることになります。現在行われている多くの薬や治療法・診断法は、これまでに行われた臨床試験に多くの患者さん方が協力してくださったことによって、作り上げられてきたと考えられます。
現在大阪大学小児科で行っている臨床研究は、白血病や悪性リンパ腫に対する多施設共同治療研究グループであるJPLSGJACLS、横紋筋肉腫に対するJRSGなど全国で展開されているものの他に、阪大病院小児科では独自に2つのがんに対する新しい臨床研究を行っています。(阪大病院小児科でおこなっている主な臨床試験はこちらをご覧ください)

WT1ペプチドを用いた小児がんに対する免疫療法の第I/II相臨床試験
小児がんに対する治療も近年、成績が向上しています。しかしそれでも治療に反応しない、または再発してしまう子どもさんもおられます。こうした化学療法、放射斜線治療に対し有効性がみられなかったこどもさんに免疫的な治療を期待した方法です。 大阪大学癌ワクチン講座と共同で行っています。WT1というのは多くのガンで発現しているがん抗原*とよばれるもので正常組織には発現していてもワクチンによる影響は見られません。このがん抗原に対する免疫力をつけて「がん」をやっつけてしまおう、という治療がWT1ペプチドを使った免疫療法です。ワクチンが有効とされる患者さんはリンパ球の型であるHLA(ヒト組織適合性抗原)のうちA2401をもち、腫瘍がWT1を発現している患者さんです。治療法は1週間に1回WTワクチンを皮下に注射します。お問い合わせはこちらへどうぞ。

*がん抗原:体の中に細菌やウィルスなどの異物が侵入してくると、体はこれらを「敵」と見なして排除しようとします。このように「敵」と見なされるようなもの、すなわち体の免疫系から認識されて排除しようとする反応を引き起こす因子を抗原といいます。通常がん細胞は異物ですから「敵」と見なされる構造を細胞表面にもっています。これをがん抗原と呼びます。

小児難治性固形腫瘍に対する同種造血幹細胞移植の安全性・有効性に関する第I/II相臨床試験
難治性固形腫瘍と呼ばれるものに横紋筋肉腫や神経芽細胞腫、脳腫瘍などがあります。こうした腫瘍に対しても、大量化学療法や放射線照射を組み合わせることで治療成績の向上には目覚しいものがあります。しかしそれでもなお、生命の危険にさらされているこどもたちがいるのも事実です。こうした子どもたちに親御さんやご兄弟の骨髄、骨髄バンクドナーさんの骨髄、あるいは臍帯血バンクの臍帯血を用いた移植を行うがん免疫療法です。大量化学療法や放射線照射など種々の強い治療に対し反応しなかった、ないしは再発してしまった子どもたちが対象です。治療はそれまでに使われなかった抗がん剤(ブスルファン、ハイカムチン、フルダラビンなど)を用いてできるだけ腫瘍を小さくし、適切なHLAを持った方から骨髄ないしは臍帯血をいただき移植します。その後、いただいた骨髄・臍帯血から正常なリンパ球がでてきて、がん抗原をもった腫瘍を認識し攻撃することで抗腫瘍効果を得る方法です。抗がん剤を使うので白血球が減少し感染が生じやすくなったり、貧血になり赤血球の輸血が必要であったり、血が止まりにくくて血小板の輸血が必要なこともありますが概して多くはありません。ただし以前の治療が強くて思わぬ副作用がでることもあり注意が必要です。より詳しい情報がお知りになりたい方はこちらまでどうぞ。

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