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小児脳腫瘍

1. はじめに
脳腫瘍は小児期において2番目に多い悪性腫瘍 (小児がん) です (一番多いのは白血病)。ひと口に脳腫瘍といっても様々な種類があり、その種類によって治療法や予後 (治りやすさ) が異なります。

2. 小児によく見られる脳腫瘍の種類
グリオーマ; 神経膠 (こう; にかわの意) 細胞から生じる一群の腫瘍。神経膠腫(しんけいこうしゅ)とも呼びます。グリオーマはさらに、星状神経膠細胞、乏突起神経膠細胞などに分類され、組織学的悪性度によってグレード1から4に(数字が大きいほど悪性)分類されます。 
髄芽腫(ずいがしゅ); ほとんどが小脳から発生しますが、まれに大脳半球にも発生することがあり、この場合は(テント上) PNETと呼ばれます。
胚細胞性腫瘍: 松果体、下垂体、大脳基底核に発生し、病理組織により胚細胞腫と非胚細胞腫に分けられます。病理組織学的に卵黄嚢がんの成分を含むものは血清や髄液中のアルファフェトプロテイン (AFP) が上昇し、絨毛がんの成分を含むものはヒト絨毛性ゴナドトロピン (HCG) が上昇します。
その他; 頭蓋咽頭腫(ずがいいんとうしゅ)、上衣腫など。

3. 脳腫瘍の症状
脳圧が上昇することによって生じる、頭痛、嘔吐、意識障害などの症状 (頭蓋内圧亢進症状) や脳の一部分の障害による運動麻痺のほか、痙攣もしばしば認められます。下垂体付近の腫瘍では、思春期早発や大量の尿が出る尿崩症(にょうほうしょう)などの内分泌症状がみられることがあります。 

4. 脳腫瘍の診断法
診断には症状から診断する臨床診断、MRIやCTスキャンなどの機器を用いる画像診断、腫瘍の一部を採取 (生検) してその組織像をみる病理診断という方法があります。

5. 脳腫瘍の治療
治療手段は、手術、放射線治療、化学療法があります。それぞれ長所と短所があり、腫瘍の種類や発生部位、転移の有無により用いる治療法を決定します。手術は、腫瘍をまるごと摘出できる可能性があり、小脳星細胞腫、脈絡叢乳頭腫、上衣腫の一部などは手術により全部摘出できれば治癒します。また、病理診断用の標本を採取するためにも必要不可欠な手段ですが、画像に映らないような小さなものについては手術は無効で、複雑な手術では脳を傷つける可能性もあります。放射線治療は強力な治療手段で、照射部位からの再発を抑えるにはかなり有効な方法ですが、低年齢のお子さんに予防的に全脳照射を行った場合は知能障害、全脊髄に照射した場合は低身長などの後遺症 (晩期障害) を残す可能性があります。

一方、化学療法は原発部位だけでなく転移した腫瘍細胞にも効果がありますが、放射線に比べると一定の限界があります。特に脳には血液・脳関門と呼ばれるバリアーがあり、血液中の抗がん剤が腫瘍に届きにくいという問題があります。小児脳腫瘍によく使われる抗がん剤には、アルキル化剤に分類されるシクロホスファミド(エンドキサン)、イフォスファミド(イホマイド)、植物アルカロイドのビンクリスチン(オンコビン)、白金製剤のシスプラチン(ランダ)、カルボプラチン(パラプラチン)、エトポシド(ラステット、ベプシド)などがあります。

脳腫瘍の治療には通常上記の3~4剤を組み合わせた化学療法を4~5週間隔で行います。抗がん剤には嘔気・嘔吐、脱毛、骨髄抑制などの共通した副作用と各抗がん剤に特徴的な副作用があります。たとえばシクロホスファミドとイホスファミドによる出血性膀胱炎、ビンクリスチンによる末梢神経炎、シスプラチンによる腎障害、聴力障害、エトポシドは使用方法によっては1~2年後に二次性の白血病を誘発することが知られています。一方、化学療法を強化するひとつの手段として、別項で述べるように抗がん剤を大量に使う大量化学療法(自家造血幹細胞移植併用)という方法があります。

主な小児脳腫瘍の治療については主な小児脳腫瘍の治療の項をご覧ください。

6. 小児脳腫瘍に対するチーム医療
上述したように小児脳腫瘍の治療には脳神経外科医、小児科の腫瘍専門医、放射線治療医の協力が不可欠です。強力な化学療法を行う場合は中心静脈栄養カテーテル (IVH) を小児外科医に作成してもらう必要があり (栄養管理の項参照)、そのほかにも組織診断を行う病理医やホルモン補充療法を行う小児内分泌専門医などの協力が必要です。このように小児の脳腫瘍は多数の専門医がかかわる体制ができた施設で治療を行われるべきですが、日本にはこのような理想的な施設は多くありません。また、現状では小児脳腫瘍に対する標準的といえる治療法はなく、新たな治療法を開発するため多数の施設が共同研究グループをつくり治療法を統一してよりよい治療を行うことがこれからの課題といえるでしょう。(臨床研究の必要性)。

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