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若年性骨髄単球性白血病(JMML)は、約100万人に1人に発症し、小児血液がんの約2.5%を占めるまれな病気です。白血病という名前がついてはいますが、厳密には骨髄異形成症候群(myelodysplastic syndrome; MDS)という疾患群に分類され、白血病の前段階ともいえる状態です。乳児期に発症することが多く、3分の1の患者さんは1歳までに発症します。また、男の子に多く、男女比は約2:1です。また、JMML患者の1割で神経線維腫症1型(neurofibromatosis type1; NF-1)という遺伝性疾患を合併することが知られています。JMMLに合併することのある病気として、他にヌーナン症候群という先天性疾患があります。ヌーナン症候群では発達障害や心疾患が認められますが、JMML患者の約2%がヌーナン症候群を合併しているといわれています。

病因
血液細胞には、細菌やウイルスなどの感染の時に活躍する白血球、体中の組織に酸素を運ぶ赤血球、出血時に血を固めて止血する血小板など様々な細胞がありますが、これらの細胞は、骨髄中にある造血幹細胞という細胞から分化して、骨髄中で成熟したあと血液中に出てきます。JMMLではこの血液細胞の大元となる造血幹細胞に異常が生じています。この結果、血液中に未成熟だったり十分に機能できない白血球(好中球)や、異常な赤血球・血小板が出現することになります。白血球にも好中球やリンパ球などいくつか種類がありますが、その中で単球とよばれる細胞の割合が多くなること、子供に発症することから若年性骨髄単球性白血病という名前がついています。造血幹細胞がいろいろな血液細胞に分化・増殖して成熟していく過程で、コロニー刺激因子(CSF:colony stimulating factor)とよばれる物質がそれを助けていますが、JMMLではCSFのうち顆粒球・マクロファージ・コロニー刺激因子(GM-CSF)とよばれるものに対して造血幹細胞が過剰に反応することがわかっています。GM-CSFは幹細胞が好中球や単球に分化増殖していくのを促進する働きを持っており、その結果単球や未熟な好中球が増加すると考えられます。一方、異常な赤血球や血小板は血液中に出てくる前に骨髄の中で多くが壊されてしまうため、貧血や、血小板減少による出血傾向が生じてきます。血液中の白血球の数は正常より増加することが多いですが、十分に機能しないため、感染をくりかえすことになります。

症状
肝臓と脾臓が著しく大きくなるのが特徴です。肝臓や脾臓は胎児期から乳児期にかけて、造血器官としても働いています。その一方で異常な血液細胞を捕まえる働きも持っています。JMMLでは作られた血液細胞が十分に機能しないため、どんどん作り出そうとするとともに、肝臓や脾臓に捕捉されるため、肝脾腫が生じてくると考えられます。この他、先述したように発熱・感染・貧血・出血傾向があることが多く、リンパ節腫脹・皮疹などを認めることもあります。

診断
JMMLという病気の概念自体がここ10年ほどで確立されてきたものであり、1996年にヨーロッパのグループによって診断基準が作成され、2005年に診断基準が改訂されました。脾腫、血液中の単球の増加、血液中および骨髄の芽球とよばれる幼若な白血球の割合が20%未満であること(芽球が多いと急性白血病の基準を満たしてしまいます)に加えて、遺伝子検査でNF1やヌーナン症候群で認められるような遺伝子変異や、7番染色体に数が少ないとか欠損があるといった異常が証明されること、または慢性骨髄性白血病に認められるBCR/ABLという異常遺伝子がなくて、血液中の幼若白血球の増多や、先述したGM-CSFへの高感受性、白血球数の増加、ヘモグロビンFの増加などの項目が診断の基準としてあげられています(表を参照してください)。ヘモグロビンは赤血球の中に存在する蛋白質で、酸素の運び屋としての役割を担っていますが、胎児期と成人では少しタイプが違い、胎児期にはヘモグロビンFが大部分を占め、出生後だんだん成人型のヘモグロビンAの割合が増加してきます。JMMLでは年齢のわりにヘモグロビンFの割合が高くなることが多いのが特徴のひとつです。しかしながら、診断基準をもってしてもJMMLは、EBウイルスやサイトメガロウイルスなどの肝脾腫を来たす感染症との鑑別が難しく、慎重な判断が必要です。

治療
JMMLの根本的治療としては、今のところ造血幹細胞移植しかありません。JMMLでは造血幹細胞の異常が病気の原因であるため、白血球は悪者の細胞ばかりになってしまいます。このため、化学療法で悪い細胞をやっつけるだけでは根本的な治療にならず、治療が終わればまた悪い細胞がふえてきてしまいます。このため、造血幹細胞移植をおこなって、異常な造血幹細胞を根絶やしにし、空になった骨髄に新たに正常な造血幹細胞を移植する必要があります。治療をおこなわなかった場合には、病気が進行してほとんどの患者さんが死亡しますが、造血幹細胞移植をおこなうことによって6割以上の患者さんの命を救うことが出来ます。

病気の勢いが強い場合には、造血幹細胞移植前に肝臓や脾臓にたくさんある悪い細胞をできるだけ減らしておくために、6-メルカプトプリン(6-MP)や、シタラビン(Ara-C)といった薬剤を使って病気の勢いをコントロールします。6-MPやAra-Cは細胞内でのDNA合成を阻害して細胞が増えるのを抑える薬で、6-MPは内服薬、Ara-Cは点滴で投与する薬です。以前は造血幹細胞移植の前に脾臓を摘出して、悪い細胞を減らすという治療もされていましたが、手術に伴うリスクの問題もあり、脾臓を摘出していてもいなくても予後に影響を与えないということも分かってきたため、現在はあまりおこなわれていません。
造血幹細胞移植では、HLAという白血球の型が患者さんと一致している骨髄提供者(骨髄ドナー)からの移植がおこなわれます。JMMLの造血幹細胞移植では、移植前に悪い細胞をやっつけて骨髄を空っぽにするために、移植日の10日ほど前から抗がん剤を投与しますが、決定された薬剤はなく、ブスルファン(BU)、フルダラビン(Flu)、メルファラン(L-PAM)などの薬剤が用いられることが多いようです。造血幹細胞移植についての詳細は、他項を参照してください。

幹細胞移植以外にもGM-CSFが作用するのを妨げるような薬についての研究が進められていますが、まだ実用化には至っておらす、今後の研究が期待されます。

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