小児血液腫瘍

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横紋筋肉腫

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<横紋筋肉腫>
横紋筋肉腫は、小児の代表的な軟部肉腫(がん)です。
横紋筋肉腫とは筋肉から発生すると考えられる肉腫です。しかし筋肉からだけではなく、骨、脂肪、軟骨などの細胞になる“もと”となる非常に若い細胞(間葉系細胞と呼ばれます)から発生すると考えられおり、筋肉以外の部分から発生することも多くみられます。四肢(手足)のほかに眼窩(眼球を包んでいるところ)、副鼻腔、泌尿生殖器(膀胱、膣など)、胆のうなどに多く発生しますが、身体のどの部位にも発生します。以前は横紋筋肉腫は非常に悪性度が高い(たちが悪い)ため、生命を失うことが多かった病気でしたが、欧米を中心としてさまざまな治療法が研究・開発され、現在では転移のない胎児型横紋筋肉腫では3年生存率が80%とも言われています。

<年齢、頻度>
発症年齢は、10歳以下が全体の70%を占め、2歳から5歳に特に多くみられます。身体のどの部位にも発生します。発生した部位を原発部位と呼びますが、もっとも多いのは頭頚部(眼窩、副鼻腔、鼻腔)で40%、このほか泌尿生殖器(膀胱、前立腺、精巣周囲、膣、子宮など)20%、四肢20%、体幹10%、その他10%となっています。通常、腫瘤(かたまり、こぶ)として触れることが多く、病気に気付かれます。痛みやしびれ、麻痺はないことが多く、皮膚表面より深い部位に存在するため、大きくなるまで気付かれないこともあります。腫瘤が大きくなり、神経を圧迫すれば痛みが出ます。

<診断>
生検による組織学的診断(腫瘍の一部を取って、顕微鏡で詳しく調べること)が必要です。その他に、レントゲン撮影、超音波、CT、MRI、骨シンチ、骨髄検査などにより、腫瘍の占める部位、拡がりについての評価をおこないます。遠隔転移はおもに肺、骨髄、骨、リンパ節などにみられます。このため原発巣だけではなく病気の拡がりをみるために、上にあげた骨シンチや骨髄検査などが必要です。最近ではPET検査(画像検査の一種)もおこなわれるようになり、今後PETの有用性が検討されると思われます。
生検の結果から分かる腫瘍の性格と併せて、病期(病気の拡がり)に応じた治療内容を選択します。血液検査で異常がでることもありますが、腫瘍マーカーとなりうるものはありません。

<組織>
組織型(悪性細胞のたち)は顕微鏡で見た特徴から分類されます。主なものは胎児型と胞巣型です。胎児型は50~60%を占め、頭頚部、泌尿生殖器、後腹膜(お腹の後ろ側)によくみられます。胞巣型は上下肢、躯幹によくみられます。一般的に、腫瘍の性格は胞巣型の方が悪く、治療に抵抗性であること多いとされています。転移を伴わない場合、胎児型であれば5年後の生存率が80%越えるのに対し、胞巣型では60%にすぎないというデータがあります。

<治療>
あらゆるところろから発生すること、化学療法だけではなく放射線治療も必要なことから、小児科だけでなく、小児外科、泌尿器科、耳鼻咽喉科、整形外科、病理科、放射線科など各科が協力して、診断、治療に当たることが必要です。欧米においては米国を中心としてIntergroup Rhabdomyosarcoma Study Group (IRSG:グループ間横紋筋肉腫研究グループ)といわれる治療グループが作られ、このなかで治療研究が大きく進みました。このグループからの報告では1970年に25%であった治癒率が、1991年には70%と改善しています。日本では米国のような各科の治療連携と治療研究が不十分であったことから、横紋筋肉腫の治療向上のために2000年9月に全国的な組織(日本横紋筋肉腫研究グループ [JRSG] )が、医師および研究者によって結成されました。この組織の目的は、どのような治療法が最適なのかを明らかにしていくことです。
治療は「原発した部位」「手術で摘出したあとにどれくらい残ったか」、「組織 胎児型か胞巣型か」の3つを組み合わせて治療をきめます。治療は化学療法(主に注射の抗がん剤のこと)、放射線照射、手術の3つを組み合わせます。

外科的切除の範囲
グループ I:手術で完全に取りきれた場合
グループII:手術で肉眼的には全摘したが顕微鏡レベルの腫瘍が残っている場合
グループIII:摘出不可または腫瘍の一部が残っている場合
グループIV:遠隔転移がある場合

原発部位
ステージ1:眼の周りの骨、首、頭、生殖器、胆のう、胆道。
ステージ2:四肢、膀胱、前立腺5cmまでで一箇所にとどまっていて侵潤していない腫瘍。リンパ節への侵潤もない。
ステージ3:四肢、膀胱、前立腺、1箇所にとどまっているが大きさは問わない。リンパ節に侵潤しているものも含む。
ステージ4:どこかに転移している。

主体となるのは抗がん剤による治療(化学療法)です。数種類の抗がん剤を組み合わせることが必要です。長期の化学療法が必要で、時に1年以上に及びます。リスクによって使用する抗がん剤の量や種類が変わります。加えて放射線照射によりがん細胞を破壊します。最初に手術ができなかった場合は腫瘍が小さくなったところで、手術により腫瘍を周囲の正常の筋肉を含めて広範に(広く)切除します。神経や血管が温存されれば、術後の機能障害はわずかです。どのように手術するか、放射線照射をするかは機能を残すために重要なことです。ハイリスクの場合は造血幹細胞移植を用いた大量化学療法をおこない、治療は終了します。

<予後>
治療後の生存率や治癒率などを予後といいます。正しい病期診断とそれに基づいた正しい治療が予後に大きく影響します。リスクによって予後は大きく変わります。
前述のIRSからの報告では現在では横紋筋肉腫全体の5年生存率は60%を越えています。しかし、転移をともなう場合には治療成績は不良で、5年生存率は30%に満たない結果となっています。

<再発>
治療後に再び出てきたがんを意味します。時々、横紋筋肉腫は標準用量の化学療法や放射線療法に抵抗性を示すようになります。がんは発生部位で再発することもあれば、体の他の部位で再発することもあります。この場合には、免疫療法や新しい抗がん剤を用いた治療も検討されるようになっています。

肝芽腫

肝芽腫」は、子どもの肝臓に発生する小児がんのうち約8割を占める、最も頻度の高い病気です。まれに、大人の肝臓にできるのと同じタイプの「成人型肝がん(肝細胞がん)」ができることもあります。最近、 日本での研究により、低出生体重児(特に出生体重1000g未満)で生まれたお子さんに、肝芽腫が発生しやすいことがわかってきました。

症状
肝芽腫は、小さいお子さんにできることが多く、お腹がはったり、お腹(とくに右上)が前にでてきたりといったことで気づかれることがほとんどです。また、熱が出たり、お腹を痛がることもあります。腫瘍が小さいうちは、症状はほとんど出ません。

診断
診断のためにはまず画像検査と血液検査が必要です。画像検査としては、腹部超音波検査、腹部CT検査、腹部MRI検査を主におこないますが、肺に転移を起こしやすいので、胸部CT検査もおこないます。血液検査として、血液中のアルファ・フェトプロテイン(AFP)の上昇は、診断にも、治療経過をみる際にも重要な検査です。 肝芽腫や成人型肝がんの細胞はこのAFPを産生しているからです。

最終的なしっかりした診断には、腫瘍の一部を切り取って(生検といいます)顕微鏡で詳しく調べることが必要です。この生検は、手術室で全身麻酔をかけた状態で、小児外科医がおこない、顕微鏡の検査は専門の病理医が担当します。

以上の検査から、腫瘍の種類(顕微鏡でみた腫瘍の顔つき)、腫瘍の広がり(肝臓の中でどれぐらい広がっているか、肝臓の外に顔を出しているか、肝臓の外のリンパ節に腫瘍が広がっているか、肺などの臓器に転移しているか)を判断して、治療方針を決めます。

治療
抗がん剤による治療(化学療法)、手術療法を組み合わせた治療をおこないます。一般的には、化学療法によってある程度腫瘍を小さくしてから、手術によって腫瘍を摘出します。腫瘍が小さく、肝臓の中での広がりも限られていれば、より多くの正常肝組織を残すことができ、より安全な手術をおこなうことができます。したがって、化学療法の強さや化学療法の期間は、腫瘍の広がりぐあいによって異なります。場合によっては、放射線科医により、腫瘍につながる動脈から抗がん剤を投与したり、その動脈を詰める(塞栓術)ことをおこなうこともあります。

この腫瘍は、手術で取りきることが治癒に一番近づける方法です。腫瘍の広がりによって、手術の仕方(術式)は変わってきます。腫瘍が大事な血管に及んでいたり、肝臓全体に広がっていると手術ができない場合もあります。最近では、通常の手術で腫瘍を取りきれない場合に、肝臓移植(どちらかの親をドナーとする生体肝移植が一般的です)という選択肢も考慮されます。

肺転移など肝臓から離れた場所に転移がある場合、根治は難しくなりますが、原発巣である肝腫瘍および転移巣を化学療法(大量化学療法を含む)でコントロールした上で、手術で摘出できれば、治すことも可能です。抗がん剤を大量に投与する大量化学療法は、進行性・難治性の腫瘍に対しておこなわれることもあります。

いずれにしろ、小児腫瘍を専門にした小児科医と小児外科医、加えて病理医や放射線科医の協力がしっかりとれている専門病院で治療をおこなうことが不可欠です。
神経芽細胞腫は小児がんの中では脳腫瘍とともに白血病についで多く発生し、腹部悪性固形腫瘍のなかでは最も数が多い腫瘍です。年齢、病期(どれくらい転移しているか)、発生部位によって治療、予後が異なりますが、最近では、基礎研究も積み重ねられ飛躍的な治療成績の向上がみられます。

神経芽細胞腫の発生頻度は10000~13000人に1人の割合と推定されています。
つい最近まで生後6か月時のマススクリーニングがおこなわれ、約8000人に1人の割合で神経芽細胞腫が発見され、発生数そのものが増加していました。しかし、マススクリーニングで発見された症例の中には自然に治癒してしまうものもあります(特に1歳未満で発見された症例には自然治癒の可能性があります。)このような症例に手術や化学療法などの治療をするのは当然不要です。よって、マススクリーニングのあり方については現在さまざまな議論があります。例えば、大阪市以外の大阪府では1歳6か月時に現在もマススクリーニングを施行しています。1歳6か月時のマススクリーニングで発見された症例に関しては、基本的に手術を施行することになります。(おそらく今後は全国でも1歳6か月時にマススクリーニングを施行する方向になると思われます)また、マススクリーニングによって発見されない症例もあります。

症状・検査
腹部の腫瘤(かたまり)で発見されることや、顔面蒼白、貧血、食欲不振、眼球突出、歩行障害、下肢痛で発見されることもあります。診断は血液検査(NSEという腫瘍マーカーが上がっていることが多い)や、尿検査(VMA,HVAという腫瘍マーカーが上がっていることが多い)をし、手術で腫瘍を摘出、または生検(一部だけを摘出する)をすることによって決定します。

予後と治療
予後は病期や年齢、組織型によって異なります。一般に年齢が高いと予後は不良です。また腫瘍細胞にN-mycという遺伝子異常が多いと予後が悪いと言われています。病気の予後は病期によっても異なります。病期について簡単に言うと、病期1、2は手術で腫瘍が完全に摘出できる症例。病期3は転移はないが、手術で完全に摘出できない症例。病期4は転移がある症例です。病期が進んでいる(病期3、4)と予後は不良です。小児血液腫瘍医の出番は主に病期3、4です。

病期3であれば、まず診断のために腫瘍を生検し、診断確定後、化学療法を施行します。化学療法で腫瘍を小さくしてから、手術や場合によっては放射線治療も考慮します。
病期4でもまず診断のために生検し、診断確定後、化学療法を施行します。しかし病期3と同程度の化学療法では高率に再発するため、病期4に関しては4~5回の強力な化学療法を施行した後、当科ではアルケラン、テスパミンという抗がん剤を大量に使用する「大量化学療法」を施行します。その後、手術で小さくなった腫瘍を摘出します。場合によっては、放射線治療を併用することもあります。このように当科では、病期3,4の治療に関して、小児血液腫瘍医、小児外科医、放射線治療医が協力して治療にあたっており、一般的に予後不良といわれる病期4の治癒率も改善しています。

血液検査結果の見かた

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ここでは、阪大病院でお渡ししている検査結果に表示される書式にしたがって記述しています。他院での結果では、白血球数、赤血球数、血小板数の桁の表示が異なっている場合もありますのでご注意ください。

貧血の目安:ヘモグロビン値
血液の病気では、貧血の目安としてヘモグロビン値がよく使われます。ヘモグロビンは赤血球に含まれるたんぱく質で血色素ともいい、体中に酸素を運んでいます。ヘモグロビンは血液1dL(デシリットル)あたりの蛋白量(g)で表されます。
乳幼児期や思春期では生理的に鉄が不足し貧血気味になるので、正常値は若干低目です。

赤血球輸血をする目安は、ヘモグロビン値が7~8g/dL ですが、化学療法のタイミングや全身状態(倦怠感や出血症状の有無)によっても変わってきます。

*網状赤血球数
網状赤血球というのは作られたばかりの若い赤血球で、その数は赤血球造血の良い指標となります。網状赤血球数は、赤血球数に網状赤血球の割合(通常、パーミリ(‰)で表示されます)をかけて計算します。つまり、網状赤血球数 = RBC x Ret (‰)÷1000 です。例えば、RBC 200万で網状赤血球 15‰ の場合は、網状赤血球数は、200,000,000 x 15 ÷ 1000 = 3,000,000(3万)となります。この検査は、主に赤血球の造血状態をみるためのもので、再生不良性貧血のお子さんの重症度を判断したり、経過をみるために使われます。(詳しくは、再生不良性貧血の項をご覧ください) また、造血幹細胞移植後の赤血球造血の回復をみるためにも使われます。

感染のリスクの目安:好中球数
細菌・真菌の感染症の危険性は、好中球数が良い指標となります。好中球数は血液1μL(マイクロリットル=立方ミリメートル)あたりの数で示されます。好中球の算定には、通常、機械法によるデータではなく、目視法(顕微鏡で除いて数える方法)のデータを用います。

好中球には桿状核球(St)と 分葉核球(Seq)の2種類があり、桿状核球 と 分葉核球 の割合が%で示されています。よって、好中球数は白血球数に桿状核球 と 分葉核球 を足した数字をかけて100で割ります。 例えば、白血球数 1,000/μL で桿状核球 5%、分葉核球 15% の場合は、1000 x (5+15) ÷100 = 200/μL となります。

この好中球数が500/μL以下であれば、細菌・真菌感染症にかかる危険性が高くなり、とくに、200/μL以下の場合はさらに高くなります。単球やリンパ球も感染症に対して大事ですが、このことについては別項で述べます。

出血のリスクの目安:血小板数
血小板は、傷口からの出血を最初にふたをして止血する働きをもっています。血小板数が1~2万/μL以下になると、出血がとまらなくなったり、皮下の出血(点状出血、紫斑)が出やすくなります。

血小板輸血の目安は、血小板数が1~2万/μL以下ですが、上記の出血症状がみられる場合や手術をおこなう際には、高めの値を維持するように血小板輸血をおこないます。

骨髄抑制からの回復のパターン
化学療法後の骨髄抑制からの回復に伴って、白血球分画(白血球の中身)は特徴的なパターンを示すことがしばしばみられます。通常、強い骨髄抑制があるときはリンパ球がほぼ100%を占めますが、骨髄抑制から回復するにしたがって、まず単球が増えてきます。つづいて、好中球が増加してきます。多くの場合、血小板数や赤血球数(ヘモグロビン)の回復は、通常好中球の回復よりもやや遅れて回復します。

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