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ベームの「ドン・ジョヴァンニ」といえば、1977年のザルツブルグ音楽祭ライブの方が有名です。なぜこのベーム唯一のスタジオ録音が、それほど人気がないかというと、オケがウィーンとかベルリンとかフィルハーモニアとかじゃないせいもあるのではないかと思います。なにしろプラハ国立劇場管弦楽団とプラハ・チェコ合唱団です。
ベーム以外でも、めったに聞くことのない名前ですが、よく考えると、モーツァルトに「ドン・ジョヴァンニ」を注文したのは、そして初演したのは、プラハでしたね。そのせいか、このレコーディング風景は映像も残されているようです。
現代の、たとえばガーディナーとかハーディングとかの演奏、あのアバドでさえ少し古いものとは全く違った演奏をします。アバドにはもっとゆったり堂々とした、横綱のような演奏をしてほしかったのに、現代的で早くて軽い仕上がりになっており、がっかりしているこのごろの演奏です。
そういう現代的演奏に比べると、ベーム1977年盤を買った当時からなんとなく感じてはいましたが、フルトヴェングラー、カラヤン、ベーム新の演奏は、かなり近いものです。同じ伝統に生きているのでしょう。他の曲はそうではありませんが、「ドン・ジョヴァンニ」はそう感じます。
ところがこの1966年のプラハ盤は、ちょっと違います。非常に繊細な表現で、フィナーレのような、強烈な全奏部分でも、弱めにソフトに仕上げています。テンポには、ハッとするような奇をてらったところはありません。
ベームは、『コジ・ファン・トゥッテ』でも『フィガロの結婚』でもフィナーレが、他の指揮者に比べて、特別感動的に仕上がっています。フルトヴェングラー、カラヤンともに「tutto tutto gia gi sa」からの第1幕終結部、ありあまる勢いを押さえるかのような、平坦な終わり方をします。なにか含みがあるようです。
ベームの演奏は、特にこの66年盤は、ちゃんと熱く盛り上がって、感動につつまれ終わります。オケが弱めなのに、歌手の声がよく通るので、熱気が伝わってきます。
ベームの1967年盤と1977年盤はずいぶん違った演奏です。歌手の名前だけ見れば、文句なく1967年盤ですよ。ペーター・シュライアーだけ共通しているのも、なんだか良いですね。
ドン・ジョヴァンニ……ディートリヒ・フィッシャー・ディースカウ
ドンナ・アンナ……ビルギット・ニルソン
ドン・オッターヴィオ……ペーター・シュライアー
ドンナ・エルヴィラ……マーティナ・アーロヨ
レポレロ……エツィオ・フラジェルロ
マゼット……アルフレード・マリオッティ
ツェルリーナ……レリ・グリスト
騎士長……マルッティ・タルヴェラ
プラハ国立歌劇場管弦楽団&プラハ・チェコ合唱団
1967年2〜3月、プラハ
ドン・ジョヴァンニ……シェリル・ミルンズ
ドンナ・アンナ……アンナ・トモワ・シントウ
ドン・オッターヴィオ……ペーター・シュライアー
ドンナ・エルヴィラ……テレサ・ツィリス・ガラ
レポレロ……ワルター・ベリー
マゼット……ダーレ・デュージング
ツェルリーナ……エディト・マティス
騎士長……ジョン・マカーディ
ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団&ウィーン国立歌劇場合唱団
1977年7月29〜30日、8月1、4、8、18、27日、ザルツブルク
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