|
音楽評論家といえば、今はどうか知らないが、かつて、まずは吉田秀和さんで、次が志鳥栄八郎さんでした。本は何十冊も持ってます。さらに古い、野村あらえびす胡堂の本は持っているけれど、古すぎてよくわからない。以上、有名で定評のあるところですね。
かつてレコードは高価で、(貧乏で)なかなか買えなかったので、批評文を読んで、満足したりしなかったりしておりました。そのあとに思い出すのが、「くせがすごい」宇野功芳さんです。ほかの批評家が取り上げないようなものを推薦していました。あまりに違った意見なので、楽しく拝読していました。
その「くせがすごいー」宇野功芳のモーツァルト論です。
こちらの知識、レパートリー不足もありまして、「おおっ!よくぞこの隠れた名盤を教えてくれた」と感激することはめったにありませんが、まれに少しあります。
文句なしの名盤 言うことなし!は、ふたつ。
★交響曲40番 ワルターVPO52
★ドン・ジョバンニ ワルター メトロポリタン42
これと比べると、他の演奏は生温くて聴けない。
賛否のある名盤ふたつ。どっちも極めつき遅い。
★ピアノソナタ11番、トルコ行進曲つき グールド
★フィガロの結婚 クレンペラー
協奏曲以外の、ピアノ作品に関しては、グルダとグールドが好きなので、いいのですが、他に取り上げているピアニストになじみが薄いので、信じられないところもあります。
モーツァルト演奏においては、あまり好まれているとは言えないクレンペラーです。「ドン・ジョバンニ」と「魔笛」は、そこそこ評判よさげですが、「フィガロの結婚」「コジ」は、ほぼ無視されています。ここに挙げた4盤の中では、もっともお勧めしにくいところです。
普通、さらさらと流れるように演奏するところを、重量ブロックを積み重ねるように、一つ一つの音をしっかり出しています。したがって、歌よりも管弦楽部分が、特に、序曲が立派すぎます。たっぷり練った黒光りのする老舗の羊羹のようです。
「フィガロの結婚」は、なんといってもベームがいいと思います。宇野さんは、実演で接した1963年のベルリンドイツオペラ日本公演、71年のザルツブルク音楽祭でのベーム指揮が最高だと書いています。
スザンナのレリ・グリストが、ひどくお気に入りのようです。キャスリーン・バトルにやや似ています。レリ・グリストは、ベームもいろいろなオペラで使っているので悪くはないのですが、オケの様式と合ってないような気がします。その当時ケルビーノだったエディット・マティスにも、ぞっこんのようです。
そのビデオも、同時代のベームのライブ録音も視聴しましたが、宇野さんの言うほど超名演とは思われません。もちろんライブで体験できたら、これほどの幸せはないでしょうが、ビデオやレコードで聴く限りでは、ヴァイクルとヴァルツァがいまひとつだが、1980年の日本公演の方がどれほどか超弩級の名盤だと思います。
宇野さんも年を取って、過激な表現も少なくなり、柔らかくなったようです。ごく少ないですが、他人の演奏にガミガミ小言を批評で言っている、そのことを現実にするかのような、オーケストラを指揮したCDも出しています。これも楽しい。
|