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手入れの行き届いた古民家を紹介されました。正式リタイアのあとは、宿舎には残留できませんので、住家を確保しておかねばなりません。 築100年以上の物件、750万円の売値を450万にまで一挙に下げてくれました。条件は売主の先々代の心を尊重して利用してくれること。
香港では考えられない安すぎるともいえる物件です。梁には巨木の原木をふんだんに使い、全てのガラスはギヤマン程度から昭和16年に製造されたもの。10年前の大地震にもびくともしなかった代物。骨董商の別の友人が彼も古民家を借りましたが、この物件を目の当たりにして、10〜20年後には文化財指定は間違いないといいます。
予約金を払う約束をしました。友人が半分を出したいといいます。何せ大きな家ですから、私一人が住むには荷が重いのは事実なので、渡りに船と承諾しました。
後日、予約金を払う前日に、もう一度、目標物件を参観に行きました。予想していなかったのですが、80歳を目前にしている売主夫婦が、少しでもきれいな形でお渡ししたいと清掃をしているのです。感動しました。
翌日、約束の時間に仲介の不動産業者と売買希望の双方が会い、予約金を渡しました。一ヵ月後に残りの410万を支払えば、私達は由緒ある古民家に主になるのです。
予約成立の後、近くの建物の敷地や屋内に大量の炭を敷設しているコーヒー店で、共同出資の友人が切り出しました。
あの古民家の購入を中止しませんか、と。
油絵を描き、料理が得意な彼は、感受性が強いのか私の心の隅の不安を読み取ったのでしょうか。
実際、山奥の大自然環境と建物は申し分ありません。ところが食料を買おうとすれば車で30分。しかも、私は40数年前に免許証更新を忘れて失効、70歳を目前になっての運転教習は容易ではありません。車も購入しなければなりません。
その上、二人ともこの古民家をどのように利用するか明確なポリシーを持っていません。すぐに住むためにはトイレを水洗に改装するには下水処理も必要です。工事を分散していては二人の十分とはいえない蓄えでは、よほど効率よい設計と施工が必要です。
そのうえ、祖父が建てた古民家を管理する老夫婦の日課を奪ってしまうことになることを恐れました。かれらの愛着が強くて、新入りの私達にはきっと戸惑うことが多々ありうると意見が一致しました。
きっと現在の私達にはこの古民家は分不相応だったのかもしれません。共同出資の友人は、すぐに仲介の業者に連絡をしました。驚いたことに、数時間後には予約金を全額返却してくれたのです。
もし、現金を必要として家を売りに出していた人ならば、予約金は別の口座に振り込まれ、即日かつ全額返還などは叶わなかったでしょう。少なくとも、あの古民家の手入れを生き甲斐にしていた老夫婦に安堵を与えることが出来たことを喜び合いました。
きっと、時が来ればふさわしい物件が私達を呼んでくれると思います。
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