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妹が 病室のベットにいるとき
見舞いに来た兄が 逃げた。
今でも いとおしいと思うのは、
あの後ろ姿。
四歳のあの子は、自分だけの母親じゃないと悟った瞬間
あの子だけの母親でなくなってしまった
瞬間
よほど愛が強くなったんだよ。
だから 追いかけて抱きしめたんだよ。
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運命って 運と命と書くけど 運って大いなるシステムの造作みたいなもので 木が二酸化炭素を吸って酸素を吐き 生き物が酸素を吸って二酸化炭素を吐き出す相互関係を持つよう作られた仕組みのような知恵
誰の知恵かわからないけども 有機物が単独では生きられないようになっていること
シリアで紛争があっても 何万の移民が食べるものがあって移動できることが
つねに貧しい国でも 争いがあっても 現在の生きている人たちに命が繋がっていることを思うと 生命が何かに生かされているんだ と感じる
生まれ持った性格や障害も 多種の組み合わせは親が考えて与えたものではなく 奇跡の遺伝子の組み合わせで 生き物が生まれるんだったら どの生き物も唯一無二の歓迎されるべき命なんだよね
誰もが自分を卑下するべきではない
宇宙の法則みたいな力が作った唯一の存在が君なんだよ
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LA BIRDO (鳥) −1− <作 安房直子 少年少女短編名作偏 風と木の歌より>
ある町に,耳のお医者さんがいました。
小さな診療所で,来る日も,来る日も人の耳をのぞいていました。 Estis orelkuracisto en iu urbo. Tagon post tagon li enrigaradis internon de or elo en sia malgranda kuracejo, とても, 腕の良いお医者さんでしたから.待合室は, いつも満員でした。 Pro lia bontekniko, c^iam atendejo estis plena de malsanuloj. 遠い村から, 何時間も列車にゆられて通う人もありました。 Kelkaj el la malsanuloj vizitis lin per fervojo longan tempon veturante malproksima vilag^o. このお医者さんのおかげで,耳の病気がすっかり治ったと言う話は, 数えきれません。 Oni diris ke sennombloj malsanuloj tute resanig^is dank'al li.http://www2u.biglobe.ne.jp/~fukuto/bird3.JPG そんなふうで,毎日が,あんまり忙しかったものですから,お医者さんは,このところ,少し, 疲れていました. Tial, c^iutage li estis tre okupita, kaj nun iomete lacig^is. 「私も,たまに,健康診断しなくちゃいけないな。」夕方の診療室で,カルテの整理をしながら, お医者さんは,つぶやきました。 " Devas mi mem ekzamenig^i pri mian sanon de tempo al tempo. " ordigante kartojn li murmuris en sia kuracejo vespere. いつも,看護婦役をしてくれる奥さんは,ついさっき出かけてしまい,今,お医者さんは, たった一人でした。 夏の夕日が,その小さい白い部屋を,赤々と照らしていました。 Antau^ momento lia edzino,kiu laboris c^iam kiel flegistino foriris, nun li estis sola. Vespersuno de somero rug^igis la malgrandan blankan c^ambron. と,不意に, 後ろのカーテンが,しゃらんとゆれて, 甲高い声が響きました。 「せんせ,大急ぎでお願いします! 」 耳のお医 者さんは,くるりと,回転いすを回しました。 Neatendite, susure sving^ig^is malantau^ a kurteno, sonoris akra voc^o. " Sinjoro, rapidu mi petas. " La orelkuracisto turnis sian seg^on. カーテンのところに,少女が一人立っていま した。 片方の耳をおさえて,髪を振り乱し, まるで,地の果てからでも走ってきたように ,あらい息をしていました。 C^e la kurteno staris knabino. Premante sian orelon kun senordig^itaj haroj, s^i s piregis kvazau^ veninte kure de la ekstermo de tero. LA BIRDO (鳥) −2− <作 安房直子 少年少女短編名作偏 風と木の歌より> 「どうしたの。いったいどこから来たんだね。」
お医者さんは,あっけにとられて訊ねました。 「海から。」 と,少女は答えました。 " kio okazis ? De kie vi venis ? " surprizite li demandis al s^i. " De maro " respondis s^i. 「海から。ほう,バスに乗って?」 「ううん,走って。 走ってきたの。」http://www2u.biglobe.ne.jp/~fukuto/bird2.JPG 「ほう。」 "De maro, Ho! C^u per au^tobuso? " "Ne, kurinte. Venis kurinte. " " Ho! " お医者さんは,ずり落ちた眼鏡を上げました。 それから,「まあ,かけなさい。」と,目の前の椅子を示しました。 Li g^ustigis okulvitrojn . Kaj ,montrante antau^an seg^on, diris li "nu! sidig^u". 少女は,真っ青な顔をしていました。 その目は,大きく見開かれ,まるで,毒を飲んでしまった子供のようでした。 S^ia vizag^o estis pala. Kun okuloj larg^e malfermitaj kvazau^ s^i estus infano kiu englutis venenon. 「それで ? どうしたの? 」 お医者さんは,手を洗いながら, いつもの調子でたずねました。 すると,少女は,自分の右の耳を指して叫びました。 "Do ? Kio okazis ? " lavante liajn manojn, li demadis kiel kutime. Tiam s^i montris la dekstran orelon kaj kriis. 「耳の中に,大変なものがはいってしまったんです。早く取つてください。」 " En mian orelon io stranga eniris. Bonvolu forpreni rapide. " そこで,お医者さんは,ガ繝[や,ピンセットを取り出しました。 Tial la kuracisto elprenis gazon kaj pinc^ileton. そうしている間にも,少女は,甲高い声で,早く早くとせきたてます。 Dume s^i rapidigis al lin per akra voc^o. けれど,お医者さんは,落ち着いていました。 こんなことは,しょっちゅうでしたもの。 Sed li restis trankvila, c^ar tiaj aferoj estis kutimaj.
LA BIRDO (鳥) −3− <作 安房直子 少年少女短編名作偏 風と木の歌より> 昨日も,小さな虫が生きたまま耳の中に入つたという人が,飛び込んで来て,うるさいうるさいと,大騒ぎしたのでした。
Ankau^ hierau^ iu ensaltis, en kies orelon malgranda insekteto ens^ovig^is viva, kaj tumultis pro g^ia bruo. 今日もそれにちがいないと,お医者さんは,思いました。 そこで,ゆったりと椅子に座り,「何が入ったんだね。」 と,たずねました。 Li pensis ke ankau^ la hodiau^a afero devas esti sama. Tial li sidig^is malrapide, kaj demandis s^in :" Kio ens^ovig^is ? " すると,少女は,とても悲しい顔をして,「あのね,秘密なんです。」と,言いました。 Tiam, kun malg^oja mieno s^i diris :" Sed en sekreto." お医者さんは,顔をしかめました。 「秘密ってことはないだろ。それじゃ,治せないじゃいか。」 Li grimacis kaj diris "C^u sekreto ? Se tiel, mi ne povas resanigi vin." すると,少女は,しょんぼりうつむいて,「だから,秘密なんです。 秘密が,あたしたちの耳の中に入ってしまったんです。」 Tiam, klinante malgaje sian kapon, la knabino diris " Do, g^i estas en sekreto. La sekreto estis s^ovig^inta en niajn orelojn." 「 。」 あたしはね,決して聞いてはいけない秘密を,たった今聞いてしまったんです。 だからそれを,おおいそぎで取り出してほしいんです。 " " "Nur nun, mi mem au^dis sekreton kiun neniam informig^as. Tial bonvolu rapide elpreni g^in . 今すぐ取り出せば,だいじょうぶなんです。 ちょっと前に,コトンと,耳のなかにおちたんだから。 Se tuj oni elprenus g^in, estas bona. C^ar nur antau^e g^i estis falinta en mia orelo . でもね,早くしないと,手遅れになります。 日が沈んでしまったら,もう,おしまいです。」 お医者さんは,目をしばしばさせました。 Sed, se vi ne rapidfarus g^in , estas tro malfrue. Estas jam fina, se la suno estus subirinta ." La kuracisto palpebrumis.
LA BIRDO (鳥) −4− <作 安房直子 少年少女短編名作偏 風と木の歌より> こんな患者は,初めてでした。
そこで,これはまず,ゆっくり話し合うことだとおもって , 「で,いったい,どんな秘密を聞いたの。」 ,優しく尋ねました。 Li havis por la unuafoje tian malsanulon. Tial li pripensis, ke unue li devas interparoli sufic^e kun s^i. "Nu, efektive kian sekreton vi au^dis ? " milde demandis li . すると,少女は,ぼそぼそとこう言いました。 「あたしのだいすきな人が,実は,鳥なんだっていう話。魔法にかけられカモメなんだっていう話。」 Tiam la knabino diris mallau^te " Verdire mia amiko estas birdo,kaj sorc^ita mevo." 「ふうん。」 とてもみょうな顔つきで,お医者さんはうなずきました。 それから,いすを引き寄せて,少女の顔をのぞきこみました。 " Hmm ! " La kuracisto kun duba mieno kapjesis. Kaj, altirinte la seg^on li enrigardis s^ian vizag^on. もっと,くわしく聞きたいな,君の話。 "Pri via rakonto, mi volas au^skulti pli detale." それから,耳をみてあげることにしても,ちっともおそくないと思うよ。 Poste mi ekzamenu viajn orelojn. Sed estas tute ne malfrue,mi pensas. 日がすっかり沈むまでには,そう,あと三十分はあるからね。 なあに,そんな秘密のひとかけらぐらい,すぐ取り出せるよ。 ぼくは,名医なんだから。 C^ar ni havas c^irkauajn tridekminutoj g^is la sunmallevig^o. Ja, pecon de tia sekreto mi tuj povas fac^ile elpreni. Tial ke mi estas eminenta kuracisto. 少女は,素直にうなずくと, こんな話をはじめました。 S^i kapjeste naive komecis rakonti jene. あたしが,初めて,あの人と会ったのは,夕暮れの海の,ボートの上でした。 Unuafoje mi renkontis lin sur boato sur la maro en vespera krepusko. あたしは,独りぼっちの女の子で,貸しボートの小屋で働いていました。 Mi estis soleca knabino kaj laboris en budo de la boato. LA BIRDO (鳥) −5− <作 安房直子 少年少女短編名作偏 風と木の歌より> 小屋の前に,一列につながれた ,十九隻のボートの一番前に,その時,あたしは,座ってていました。
Tiam mi sidis en la plej antau^a boato el la deknau^ en vico. 日が沈んでも,戻ってこない,たった一隻のボートを,あたしは待っていました。 Mi atendis nur la solan boaton kiu ne revenis kvankam la suno subiris. けれどこの時,あたしは,すっかり待ちくたびれて,うとうと眠りかけていました。 Sed tiam tute lacigite pro la atendado ekdormetis. と,そんなあたしの耳もとで,ぴしゃっと水の跳ねる音がしました。 Kaj mi au^dis plau^don apu^de. 「すみません。」 その声で,あたしは,はっと目を開けました。 "Pardonon ! " Frapite de la alvoko, mi malfermis la okulojn. 目の前に,ボートに乗った,少年がいました。 青いペンキぬりのボート,それは,たしかに,うちの店のものでした。 Antau^ mi trovig^is knabo sur la boato. Blue fabrita boato, g^i estis certe boato de mia vendejo. たちまち,あたしは,不機嫌になりました。 「どうしたの? もう,とっくに,時間,切れてるんですよ。」 Tuj mi farig^is malbonhumola. "Kio okazis al vi ? Jam finig^is via tempo. " すると,少年は,恥ずかしそうに笑って,こう言いました。 Kaj ridante honte li diris; 「ずっと沖の方まで行ってたものだから。」 "C^ar mi iris malproksime de la bordo." 小年の目は,不思議な灰色でした。 Liaj okuloj koloris mistere grizaj. 「いったい,何処まで行ってたの。?」 "Efektive g^is kie vi iris ? " あたしは,半ばあきれた顔つきでたずねました。 Mi demandis al li kun mirigita mieno. すると少年は,すまして言いました。 Tiam trankvile li diris; 「水平線のずっと向こう。ふたご岩のまだむこう。かみなり島のもっと向こう。」 " Tre malproksime de la horizonto. Ankorau^ malantau^e dunaskitroko. Pli malantau^e tondrinsulo. " LA BIRDO (鳥) −6− <作 安房直子 少年少女短編名作偏 風と木の歌より> 「うそばっかり。」
「うそなもんかい。鯨が潮をふいていたよ。大きな客船がいたよ。」 " Ne mensogu. " " Mi tute ne mensogas. Mi vidis ke baleno supren blovis tajdon kaj grandan gasts^ipon." 「ふざけないで,早くボート返してちょうだい。」 " Ne serc^u. Tuj redonu mian boaton." すると少年は,立ち上がって,ひょいと,あたしのボートに跳び移り,それから,まるで石けりでもするように, ぴょんぴょんと,十九隻のボートを伝わって岸に行ってしまいました。 Tiam li ekstaris kaj transsaltis en mian boaton. Kaj kvazau^ ludante per s^toneto, li iris al bordo saltetante deknau^ajn boatojn. 最後に,「さよなら!」 と,言いました。 Fine "G^is la revido ! " li diris. 少年の乗り捨てたボートには,白い花びらが散っていました。 En lia forlasita boato blankaj petaloj restis. あたしは,思わず,それを手に取りました。 Mi prenis ilin senkoscie. すると,花びらは,羽に変わっていました。 鳥の羽でした。 Tiam la petaloj estis sangigite sangitaj en plumojn. Jen plumoj de birdo. あたしは,不思議な,夏の夢を見たような気がしました。 Mi pensis ke tio estis mirinda somersong^o. その少年が,浜の貧しい小屋に住む海女の息子だと知った時の,あたしの驚きは,たとえようもありませんでした。 Kiam mi eksciis ke li estas filo de subakvistino kiu log^as en malric^a budo de la marbordo, mia mirego povis kompari tion kunnenio. その海女は,すっかり年をとっていましたから,海に潜るのはやめて,貝や魚を売り歩いていました。 La subakvistino estis tute maljuna,tial s^i kolportis konkojn kaj fis^ojn anstatau^ subakvig^i sub maro. 茶色い肌は,くしゃくしゃで, おちくぼんだ目は,とろんと曇っていました。 Sia bruna hau^to estis c^ifita kaj la kavaj okuloj malklarig^is. LA BIRDO (鳥) −7− <作 安房直子 少年少女短編名作偏 風と木の歌より> そんな年寄りの海女が,あの少年の母親だということが,あたしには,とうてい信じられないほど不思議でした。
Mi nenie povas kredi, ke tia maljuna subakvistino estas la patrino de la knabo. けれど,海女は,ある日,ボート小屋へ来て,確かにこう言ったのです。 Sed en iu tagon veninte la boatbudon s^i diris certe ; 「こないだは,息子が,迷惑かけて,すまなかったね。」 "Pardonon mi petas ke antau^ nelonge mia filo embarasis vin." 海女は,笑いました。 ぞくっとするような笑顔でした。 S^i ridis. Estis tremiga ridetanta mieno. 「だけど,もう,ボート遊びは,させないでおくれ。あれは,あたしだけの,大事な息子なんだから。」 "Sed bonvole jam ne ludigu al li boatludon, c^ar li estas nur mia kara filo." けれど,少年は,それから毎日ボートに乗りにきました。 Sed poste li venis c^iutage por preni boaton. あたしの耳もとで,「ほんのちょっとだけさ。母さんには,ないしょだよ。」と,ささやいて。 Flustrante c^e mia orelo "Nur iomete. Ni tenu tion en sekreto al mia patrino." やがてあたしは,少年と,友達になりました。 初めは,おずおずと,それから,だんだん親しく。 Tiel mi amikig^is kun li. Komence hazite kaj iom post iom kun intimeco. 夕方になると,少年は,あたしが,ボートを杭に繋ぐのを手伝ってくれました。 Kiam vesperig^is li helpis mian laboron s^nuri la boatojn al paliso. あたしよりずっと速く,まるで,水のうえに散らばった木の葉をまとめるように。http://www2u.biglobe.ne.jp/~fukuto/bird9.JPG Li faris tion tiel pli rapide ol mi ,kiel kvazau^ grupigi falintajn foliojn sur akvo. 「これ全部, 僕のボートだったら,すてきだろうな。」と,少年は言いました。 " Belege, se c^iuj boatoj estus miaj." Li diris. 「そうしたら,一列に繋いで,先頭のボートを漕いで,沖へ行くんだ。」 "Kaj mi irus al malproksima maro remante la unua boaton kun la aliaj ligitaj en unu vico. " 「あら,そんなこと,出来るかしら。」 "Vi povas fari tion, c^u ? " LA BIRDO (鳥)−8−<作 安房直子 少年少女短編名作偏 風と木の歌より> 「うん。僕には出来るだろうな。僕の腕は,強いもの。ずっと前には,もっといろんな冒険をしたもの。」 「冒険? どんな?」 あたしは,体を乗り出して尋ねました。 すると,少年は急に,気のぬけたような声で,「もう,忘れたな。」と,言いました。 それから,虚ろな目で,遠くを見つめました。 この人は,いつも,そうなのでした。 昔の事は,みんな忘れているのでした。 まるで,忘れ薬を飲まされた王子のように。 もっとも,あたしも,そうでしたけども。 心に残っている,昔の思いでなんて,一つもないのでしたけれど. ボートをしまってから,日が暮れるまでの一時を,二人は,楽しく過ごしました。 貝を並べたり,ほおずきを分け合ったり,花火をしたり。 ほの暗いボート小屋のかげで,せんこう花火は,小さく,ちりちりと燃えました。 けれど,あたしたちは,もっと広い所で,一緒に遊びたかったのです。 昼の日ざかりに,砂浜や海で,おもいっきり,走ったり泳いだりしたかったのです。 が,あたしたちは,いつも海女の目をおそれていました。 LA BIRDO (鳥)−9−<作 安房直子 少年少女短編名作偏 風と木の歌より> 小屋の後ろで,二人の様子をうかがっているかもしれない海女のかげに,何時もおびえていました。
ある時,少年は言いました。 「ねえ,二人で遠くへ行かないか。」 「遠くってどこへ?」 「水平線のずっと向こう,ふたご岩のまだ向こう,かみなり島のまだ向こうさ。」 「だって,母さんは?」 あたしは,声をひそめて聞きました。 「あなたの母さんは,いけないって言うでしょ。」 少年は,うなずきました。 「うん。母さんは,ぼくたちのこと,怒ってるんだ。 おまえは,あの娘といっしょに,どこかに逃げていく気だろうって。 だけど,決してそうはさせないよって。 母さんは,こわい人なんだよ。魔法を使うんだから。」 あたしは,息をのみました。 そういえば,あの顔は魔法使いの顔でした。 特に,あの目は繙繩Cの底に,百年も二百年もすんでいる魚の目の,不思議なよどみに似ていました。 「ね,だから,ぼくたち,こっそりにげなけりゃいけない。」 少年は,とても,真剣な顔をしました。 あたしは,胸をドキドキさせながら,うなずきました。 LA BIRDO (鳥)−10−<作 安房直子 少年少女短編名作偏 風と木の歌より> 「ねえ,あした,にげよう。」
「あした ! どうして急に。」 「母さんが,海にもぐれっていうんだもの。 海の底から,貝をたくさん採つておいでって言うんだもの。 僕は, 嫌なんだ。あれは,とっても苦しいから。」 「・・・・」 「僕は,思いっきり広い所へ行きたいんだ。ね,だから,あした逃げよう。 ボートを 一隻, あの岩の陰に隠しておいて欲しいな。」 "
少年は,ずっとむこうの岩を指さしました。 海に突き出た, 大きな岩の陰に,ボートが一隻, すっぽり隠せるくらいの窪みのあることを, あたしも知っていました。 「あしたの夕方, ボートの上で, 待ってるよ。」 少年は, 灰色の目で笑いました。この時, 後ろで, カサリと音がしました。 黒い影が水のうえに, ゆらっと動いたような気がしました。 あたしは, ぎょっとして振り向きました。 が,誰もいませんでした。 ああ,それが,つい昨日の出来事なのです。 なんだかずっと昔みたいな気がするけれど,ほんの昨日の事なのです。 LA BIRDO (鳥) -11- 作 安房直子 少年少女短編名作偏 風と木の歌より>
そうして,今日の夕方--ついさっきになります--, 約束どうり, あたしは,あの岩影に急ぎました。
朝のうちに, こっそり隠しておいたボートの上で, あの人が待っているはずなのです。 あの人は,青い海水パンツをはいているでしょうか。 大きな麦わら帽子をかぶっているでしょうか。 そして,灰色の目でじっと, あたしを待っているでしょうか・・・・ あたしの胸は,コトコトとおどりました。 これから,素晴らしい冒険が始まるのだと思いました。 浜の西日は,大きな黄金の車でした。 ぎんぎん音たてて回る, まぶしい光の輪でした。 急げ,急げ。 あたしは,いちもくさんに走りました。 まぶしい砂浜から,岩の陰に回ると, 急に, 薄暗くなりました。 あたしのゴム草履が,ぴたぴたと,水を跳ねました。 と,「ご苦労さん」 突然, しわがれ声がしたのです。 あたしは,ドキリと顔を上げました。 LA BIRDO (鳥)-12-<作 安房直子 少年少女短編名作偏 風と木の歌より> 青いボートの上には,少年の代わりに,海女が一人, ひざをかかえて座っていました。
あのぞくっとするような笑顔をうかべて。にわかに,あたしは, わなわなと震えました。 うわずった声で, あの人は何処にいるのかと尋ねました。 「うちにいるよ。」 つっけんどんに, 海女は答えました。 「鍵をかけた小屋に閉じ込めてあるよ。だけど, 屋根に小さい穴があるから,逃げてしまうだろうな。 もう逃がしてやっても,いいとおもってるんだがね。」 「 屋根の穴ですって ? そんな所から出たら, 危ないわ。」 「 危ないもんかい。あいつには,翼があるんだから。」 あたしは,きょとんと海女を見つめました。 すると,海女は,そっくり返って笑いました。 それから,不意に手招きをして,「こっちへおいで。とっておきの秘密を話してあげるから。」 と,言ったのです。 あたしは, どぎまぎしながら, ボートのへりに腰掛けました。 すると,海女は, こちらへ,にじりよってきて, あたしの耳に,ぴったり口をつけました。 そして,たった一言, こう言いました。 「あいつは, 鳥なんだよ。」 LA BIRDO (鳥) -13- <作 安房直子 少年少女短編名作偏 風と木の歌より> この一言は,鋭いナイフのようになって, あたしの耳の中で踊りました。
すると海女は,ひどく意地悪な目をして,なおもこんな話をしました。 「実は, 魔法をかけられたカモメなのさ。 もう, だいぶ前になるけどね,わたしの小屋に,怪我をしたカモメが迷いこんできた。 可愛そうだから, 薬をつけて,包帯を巻いて, 毎日食べ物をやっているうちに, わたしゃ,このカモメが,すっかり気に入ってしまった。 なんだか,息子みたいに可愛くなった。 怪我が治っても, ずっと,手元に置きたくなった。 ところが,ある日, 海から雌のカモメが一羽やってきて, 毎朝, 窓のところで鳴くんだ。 その時, 私は鳥の言葉がわかったんだよ。 雌のカモメが,「海へ行こう, 海へ行こう。」って, 呼び掛けているのが,本当にちゃあんと聞こえたのさ。 すると,うちの息子は,治りかけた翼を,パタパタさせて飛び立とうとする。 雌のカモメの歌声は, 日に日に高くなった。 いくら追っぱらっても,またやって来る。 私は, 雌のカモメが, ただもう憎らしくてたまらなかった。 今のあんたほどにね。」 LA BIRDO (鳥) -14- <作 安房直子 少年少女短編名作偏 風と木の歌より> ここで,海女は,あらい息をして,あたしをにらみました。
それから,低い声で,また続けました。 「そのうち,わたしは,いいことを思いついた。魔法を使ってうちのカモメを,人間に変えてしまうことさ。 ほんものの, わたしの息子にしてしまうことさ。 わたしは,箪笥の中に, 赤い海草の実を,二つぶしまっておいた。 昔, 海の底で見つけた, とても珍しいものさ。 わたしは,これに, はっはっと息をかけて,カモメ食べさせた。 すると,その効き目の良さといったら ! 一つぶ食べただけで, カモメは, 人間の男の子の姿になった。 わたしは,嬉しくて嬉しくて, 残りの一つぶを,どこかに落として仕舞ったのも気がつかない程だった。 立派な息子が出来て, なによりだと思った これから,海に潜ることも,魚を売ることも教えようと思った。 ところが,どうだろう。 ほんの一月もたたない内に, 今度はおまえさんが現れて, また,あいつといっしょに遠くへ行こうとする・・・・。 LA BIRDO (鳥) -15- <作 安房直子 少年少女短編名作編 風と木の歌より>
だから,わたしは,もうあきらめたよ。
もう,あいつは,海へ追っ払ってやることに決めたよ。だけどね,」 急に,海女は,声を大きくし,はきすてるように言いました。 「あんたが,一緒に行くことは出来ないよ。あいつは,鳥なんだから。」 けれど,あたしは,怯みませんでした。 「それでもいいのよ! あの人,今は,ちゃんと人間の姿してるんだから。 あたしは,それでいいのよ。」 すると,海女はにんまり笑いました。 「ところが,もうすぐ魔法がとけるんだ。 この秘密を,誰か一人でも知ったら,その日のうちに,魔法は解けてしまうんだ。 だから,今日,海に日が落ちるまでに,あいつは鳥に戻ってしまうよ。 もっとも,あんたが,今の話を,ケロリと忘れる事が出来るなら別だけどね。 腕のいい,耳のお医者にでも駆け込んで,大急ぎ,秘密を取り出して貰えるなら,別だけどね。」 . <耳のお医者・・・・>
この時,あたしの頭に,先生のことが浮かんだのです。 浜の人が,とても立派なお医者様だって言ってました。 LA BIRDO (鳥) -16- <作 安房直子 少年少女短編名作編 風と木の歌より> それであたし,走ってきたんです。
ね,あなたなら,簡単でしょ。 長いピンセット使えば,すぐできるでしょ。 日が沈んでしまったら,もうおしまいなんです。 早くしてください。 「なるほど。」 耳のお医者さんは,うなずきました。 自分を頼って駆け込んで来た,この少女の願いを,是非きいてあげたいと思いました。 「それじゃ,ちょっとみてあげよう。」 お医者さんは,貝殻のような少女の耳の中を,のぞきこみました。 それから,<はあん> と,うなずきました。 確かに,耳に奥に,何かが光っているのです。 ちょうど,こぶしの花が一輪咲いているような感じでした。 < あれだな,あれが秘密なんだな。> と,お医者さんは思いました。 けれど,それは,あんまり奥でした。 どんなに長いピンセットを使っても,届きそうにありません。 「ねえ,早くして,早く,早く。」 少女は,せきたてます。 その声が,変に頭に響いて,お医者さんは,腕が上手く動かなくなりました。 LA BIRDO (鳥) -17- <作 安房直子 少年少女短編名作編 風と木の歌より> 薬の瓶を取り出したものの,それがなんの薬だったか,分からなくなりました。
<今日は調子が悪いな。疲れてるせいだろうか。> お医者さんは,頭をふりました。 「鳥?」 お医者さんは,思わず窓へ目を移しました。 窓の外には,ほんの少しの,細長い夕空が見えるだけでした。 「何言ってるんだ。」 すると少女は,目をつぶって,こう言いました。 「あたしの耳の中よ。ほら,海があるわ。砂浜があるわ。 砂の上にカモメになったあの人がいるわ。 あの鳥を,早くつかまえなけりゃ。」 お医者さんは,駆け寄って,少女の耳の中をもう一度覗きました。 そして,「ほう。」と,大きな声を上げました。 本当なのです。少女の耳の中には,確かに海があるのでした。 真っ青な夏の海と,砂浜とが,ちょうど,小人の国の風景のように納まっているのです。 そして,その砂浜の上に,白い花が一輪 --- いいえ,それは,花でなくて,鳥なのでしょうか。 そう,カモメが一羽,羽を休めているようにも思える小さいものが,ぽつんと見えるのでした。 . LA BIRDO (鳥) -18- <作 安房直子 少年少女短編名作編 風と木の歌より> お医者さんは, 急に, 頭がくらくらして,目をつぶりました。ほんの,二,三秒。
それから目を開けた時, お医者さんは,なんと,自分がその海岸に,ぽつんと立っていることに気づきました。 一面青い海原。 長い長い海岸線。 そして,ほんの五メ−トルほど先に, カモメが一羽 , 羽を休めていました。 「しめた。」 お医者さんは,両手を伸ばすと, 後ろから,ぬき足差し足近寄りました。 そっと,そっと,・・・・・・。 けれど,ほんの二,三歩近ずいただけで,鳥は, ぱあっと,翼をひろげたのです。 まるで,つぼみの花が開くように。 そして,ついと,飛び立ちました。 「しまった。」 お医者さんは, 追いかけました。 「おおい,待てえ,待てえ。」 お医者さんは,走りました。 ただもう,めちゃくちゃに走りました。 走りながら,お医者さんは,自分が今,少女の耳の中にいることを,なんとなく分かっていました。 ちょうど人間は皆,自分が,地球の上にいることを,分かっていながら,忘れているように。 ともかく,あの二秒ほどの間に,何かがあったのです LA BIRDO ( 鳥) -19- < 作 安房直子 少年少女短編名作編 風と木の歌より> お医者さんの体が, 虫のように小さくなるか, 少女の耳が, 途方もなく大きくなるか,
それとも, もっと別のなにかが起きたのです。 でも, お医者さんは, そんな事をあれこれ考えていませんでした。 鳥をつかまえることで, 頭はいっぱいでした。 あれをつかまえてもどらなくては, 診療所の名前にかかわるような気がしました。 http://www2u.biglobe.ne.jp/~fukuto/bird11.JPG けれど, カモメはずんずん高く上がっていき, やがてゆらりと海へ出ました。 「あっ, ああ,ああ。」 お医者さんは, 砂の上にぺたんと座って, カモメを見送りました。 と,突然, 「ねえ,早くして, 早く, 早く。」という声が, まるで, かみなりにように辺りに ひびいたのです。 お医者さんは, 思わず目をつぶりました。ほんの, 二, 三秒。 「どうしてもだめ?」
そんな声がして,お医者さんがはっと目を明けると, 少女がじっと自分を見つめていました。 薄暗い診療所でした。 「秘密, 取れませんか」と少女はたずねました LA BIRDO ( 鳥) -20- < 作 安房直子 少年少女短編名作編 風と木の歌より>
お医者さんは, すっかりどぎまぎしてうなずくと,
「ええ。今, のがしてしまいました。」と,小さな声で答えました。 「今日は, 少し疲れているんでね。」 すると,少女は立ち上がって, とても悲しい顔をして, 「じゃあ,もうだめだわ。」と,言いました。 「日が沈んでしまったもの。あの人, 鳥になってしまったわ。」 お医者さんは, うつむきました。 何だか, とてもすまない思いでいっぱいでした。 少女は黙って, 帰っていきました。 診療室のカーテンがしゃらんとゆれました。 耳のお医者さんは, 大きな溜め息をついて, 自分の椅子にどしんと座りました。 この時です。お医者さんは, 目の前の椅子の上に, 白いものが散らばっているのを見たのです。 「・・・」お医者さんは, それを取り上げて, しげしげとながめました。 羽でした。 それも, カモメの。 お医者さんは,驚いて立ち上がりました。 それから,しばらく考えて, 「なるほど。」と, うなずきました。 「教えてやらなきゃいけない! 」 LA BIRDO ( 鳥) -21- < 作 安房直子 少年少女短編名作編風と木の歌より>
そうさけぶと, お医者さんは, 外へ飛び出しました。
夕暮れの道を, いちもくさんに走りました。 < あの子は, 知らずにいるんだ。自分も, カモメなんだっていうことを。 たぶんあの時, 海女が落とした赤い実を食べた雌のカモメなんだっていうことを,ちっとも知らずにいるんだ。 耳のお医者さんは走りました。
少女の耳に中に, もう一つの, 素敵な秘密を入れてあげるために, 一心に, 追い掛けていきました。 * * * * * * 1989.07.28
作者 安房 直子 1943 東京都に生まれた。 児童文学者。 作品に 「ハンカチの上の花畑」「白いおうむの森」 「銀のくじゃく」「きつねの窓」 などがある。 1993 没 |
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日本政府が学校の環境改善事業の一環として改装して建てたフィリピンの学校。その学校の外壁にはフィリピンの国旗と日の丸が描かれていたが、韓国アラウ部隊により太極旗に書き換えられてしまったのだ。
これらの学校は昨年11月の台風により8棟が崩壊。これを改修したアラウ部隊(??? ??)が外壁に描かれていた日本の日の丸を太極旗に書き換えてしまったのだ。第三者が変えるならともかく、自分たちで自国の国旗に変えるという凄い神経である。 http://news.livedoor.com/article/detail/9016014/ 26日(現地時間)、フィリピンレイテ州パルロシパラス小学校の壁にフィリピンの国旗と太極旗が一緒に描かれている。この学校は、昨年11月初めに強力な台風で教室と 付帯施設8棟が崩れた。アラウ部隊員たちは現在まで3市14校の屋根と割れた窓ガラスを補修し、外観まで変えてしまった。 http://news.naver.com/main/read.nhn?mode=LSD&mid=sec&sid1=100&oid=421&aid=0000895049 【韓国】日本の支援で作られたフィリピンの小学校から「日の丸」が消され「太極旗」が描かれる[06/27] http://awabi.2ch.sc/test/read.cgi/news4plus/1404558489/ |






