地、歩ク。

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四精霊記2章シーン6

Scene 6

 ガザの街に威容を誇るメインストリートをだいぶ離れた、うらぶれた通り。
 そこもかつては活気に溢れていたのだろう、その跡くらいは今でも見てとれた。
 幾つもの古い、寂れた石造りの家々が立ち並ぶ中に、一際、大きな建物がある。
 外装はたいそう立派だったのだろうが、今は見る影もない。疾うに営業をやめてしまった宿のようだったが、一画だけ、人の手が入っていて、ひっそりとした生活感を漂わせていた。
 ガフとシオがちょうどガザの街の門をくぐった頃、そこで密やかに囁かれる会話があった。
「明日はどうする?」
「予定通りよ」
「準備は?」
「万全だ。ぬかりは無い」
 会話は若い者から歳のいった者まで、数人の男女が額をくっつけあうようして行われていた。
 黄師の一個分隊がそこに踏み込んできたのは、そんな時である。ちなみに黄師とは、火の国の治安を担当する組織である王師を所轄によって赤青白黒黄の五色に色分けし、そのうち首都の治安及び王の身辺警護を担当する者たちのことである。
「黄師である! 全員、その場を動……!」
 黄師の分隊長は、この元は宿であるこの廃館に凶悪な企み有りと聞き、いささかの緊張とともに踏み込んできた。
 だがその強張った面持ちは、あまりにも場違い――分隊長にしてみれば――に弛緩した視線よって睨み据えられ、すぐ次には緊張を失うこととなる。
「シーッ」
 何事が起きたのか、自分の頭の中の現場と実際がすぐには結び付かず、呆気にとられる分隊長。
 そこには、若い女の腕の中に抱えられ、すやすやと穏やかな寝息をたてる赤ん坊がいたのであった。
「兵隊さん、いったい、何事ですか〜?」
 赤ん坊を抱く女の隣にいた若い男が、顔を緩くしかめながら、一歩前に出ていた分隊長にひそひそと話しかけてきた。
「通報がぁ、ありまして〜」
 周りの雰囲気につられたのか、男に会わせてひそひそと話し始める分隊長。
「はい〜?」
「それによると〜、ここで人が集まって〜」
「はい〜」
 話の見えない男が分隊長に先を促し、分隊長が一呼吸おいてそれに応える。
 ちなみにその途端赤ん坊が泣き出したのは、決して分隊長のせいではない。
 分隊長の言葉を聞いた男たち全員の、驚愕の声のためであった。
「ため込んだ武器で、王城を襲撃するとのことで〜」

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