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1956年、田宮虎彦原作、新藤兼人脚本、監督。ここでも少し当時の流行を拾って見ると、映画関係では東京では敗戦当時より四倍の映画館が増え、観客動員10億1270万人と有ります。1987年には1億4400万人と減少。30年余り間に実に10分の1程度凋落した事が解ります。当時は映画が娯楽王様であった事が伺われます。「太陽の季節」「ビルマの竪琴」「早春」「夜の河」洋画では「王様と私」「理由なき反抗」「ヘッドライト」「誇り高き男」等。歌謡曲では「哀愁列車」「リンゴ村から」「別れの一本杉」「東京の人よさようなら」「ハ−ト・ブレイク ・ホテル」「ハウンド・ドック」とプレスリ−全盛時代でも有ります。
さて、映画の方は。
石川理髪店を営む夫婦喜一(宇野重吉)と幸恵を頼って縁戚の虎太郎(長門裕之)が働きにやって来ます。叔父、叔母の関係になる虎太郎の理髪店二階の一間に寝起きをするようになります。折から、硫黄島陥落、米軍沖縄に迫ると言う記事が新聞の紙面を賑わす中、店主喜一に召集令状が届きます。女房一人での店の運営には危惧を抱くものの、虎太郎がいるお陰でその分には安心して行けるという喜一。その夜階段を下りようとすると泣き声が聞こえ、一階の寝屋の蚊帳の中には、喜一、幸恵が抱き合いすがる妻に「きっと帰って来る」と慰めるのを見てしまいます。街には日毎空襲警報が鳴り響き、一層不安で深刻な状況になりりつつ有ります。そんな折、虎太郎も甲種合格、戦争に行く事になり、出征兵士を見送る幸恵の姿があります。列車の中で手を振る虎太郎に幸恵は列車を追いかけるようにして見送り列車は駅を離れて行きます。帰って呆然とする幸恵。やがて空襲は一段と激しさを増す、その頃夫喜一の戦死が知らされます。そして空襲により理髪店も焼失してしまいます。
一時、田舎の兄夫婦の元に身を寄せますが、戦争が終った聞き、再び東京に舞い戻り、理髪店の住み込み店員に身をやつすものの、体の具合がすぐれないと部屋に寝転んではゴロゴロとしている始末。雇い主の店主は女房に文句を言われながら、女房の留守になると、二階に上がると寝そべったままの幸恵にいい寄ります。「パンパンじゃないよ」と包丁をかざすに及び、亭主はひるみそのままその店を出て行こうとした入り口の向こうに、復員した虎太郎を発見するのです。
二人邂逅、叔父喜一の戦死、そして何とか家を建てようと云う虎太郎に励まされ別々に理髪店に働き、休みの逢瀬にホテルに入った二人。やがて小さなバラック建ての石川理髪店が復活します。そして忙しく働く二人の店に戦死と聞いた亭主喜一がひょつこりと帰って来るのです。やがて夫に二人の関係が知れるものの、戦死をしたと聞いた二人の状況は一概に責められるものでも無く、その機に虎太郎は出奔、行方が解らなくなります。幸恵は必死に行方を探し、ある理髪店に勤める虎太郎に再会するものの、二人の逢瀬に虎太郎は叔父に済まないと言う気持ちから幸恵を突き放す。そして帰るとは、喜一は「何処へ行ってた、虎太郎に会っていたのだろう」と詮索。
夫は虎太郎と別れてくれと云う。だが幸恵は諦め切れず、又再会をするものの、二人の逢瀬もつかの間、今度は喜一、そして幸恵の兄とともに部屋に踏み込まれ連れ帰される。行方が解らなくなって6年の歳月が流れ、漸く夫婦の仲も落ち着きを取り戻したと言うその頃、終い間際に飛び込んだ客の世間話の中で、
銀温泉で理髪師として働く虎太郎に会ったという情報を知る。幸恵はその日夫には一言も告げず銀温泉に向かう。一面雪景色の中、酌婦たちとの中に混じって酒を飲む虎太郎を発見。
幸恵はもう家へは帰らないと言う。しかし、虎太郎は帰ってくれと云う。スッパリ別れてくれと云う。
そうして傷心の中、山を下りようとするが、結局は帰れないと幸恵は舞い戻る。虎太郎はまたもや姿をくらますが、探し当てての再会に「帰ってくれ、帰れ!」と言う虎太郎には幸恵を受け入れる事は無い。
旅籠の下働きの男(殿山泰司」はそんな幸恵をはげますが、降りしきる雪の中幸恵は飛び出し、さ迷った挙句、翌日、崖下の川の側に俯けに倒れる幸恵が発見される。そして側にはカミソリが落ちている。
戦争によるいたずらが女の一生を狂わせ、その情念に翻弄され、受け入れられない女の悲しさをこのような形でしか清算出来なかった主人公を乙羽は懸命に演じています。近代英協の乙羽参加の契機は「原爆の子」の出演依頼に、出演したいと意思を伝えて来た事で実現する。当時百万ドルのエクボと騒がれた娘役スタ−。そして大映専属だった彼女が五社協定に違反をすれば俳優生命を絶たれると危惧したが、乙羽は一旦言い出したらテコでも動かず、その無鉄砲さに感心した永田雅一大映社長が契約書を破ってやろうとの大英断で片がついたと新藤監督は回想しています。かくの通り乙羽さんは中々の鉄火肌の人だったらしく、その後の新藤監督のコンビでの汚れ役での体当たり演技もこの人ならではものだと言えるかも知れません。そして切っても切れないのが、殿山泰司さん。この二人のコンビの「裸の島」が又見たくなりました。
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長文、拝見しました。戦争による、それぞれの人間模様、・・・・・ 昨日の夜のテレビ、「俺たちの大和」11時半まで、見入ってしまいました。戦争で残したもの・・・・・・考えさせられます。
2007/4/9(月) 午前 5:50 [ マッチー ]
恐れ入ります。拙い文章で、訂正を掛けないでそのままでしたので、途中で名前が変わっていたり。若い頃にはこうした戦争映画は飛行機や、艦船の戦闘と言うだけの捕らえ方で見ていましたが、そこには大勢人間がいたと言う事実。その事を思うといたたまれなくなりなります。
2007/4/9(月) 午前 7:04 [ max ]