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フランスは思うに、自由平等の気ちがい病院というべきで …… これがフランスの短所であり、長所であり、困難であり、幸福である。

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ハンス・ベルメール
Hans Bellmer
1902、カトーヴィツェ(ポーランド) - パリ、1975

「痙攣的な美 beauté convulsive 」を求めて
遅ればせにグループに見出され、すぐさま認められ、ナチズムを逃れフランスにやって来た彼は、きわめて私的なエロチシズムに打ち込むも、シュルレアリスムの思想から逸脱することは一度もなかった。

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フランスに移り住んだこのドイツ人の絵画、デッサン、テキストの特徴は、それらのほとんどすべてが「人形 (仏) la poupée (独) Die Puppe 」というただ一つのテーマをめぐる、ということである。

強迫観念にも似たこのテーマは、厳格かつ権威的な父に恐怖に陥れられた、また、やや倒錯したイノセンスな従妹の思い出に育まれた、もっぱら女性に関する驚異に逃げ場を求めるようになる子供時代に生まれた。

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第一次世界大戦後、ベルリンでゲオルゲ・グロッス Georges Grosz と親交を結び、デッサンをはじめ、ドイツのダダイストたちと接触する。

1932年に人形コッペリアが登場するE.T.A.ホフマン Hoffmann の物語(『砂男 L’Homme au sable 』、レオ・ドリーブ Léo Delibes の有名なバレエ作品『コッペリア Coppélia 』の原作)の上演に魅了され、彼自身気の赴くままに組立て式の動く女性像の制作を試みる。

彼の手で多様なポーズで写真に収められた人形は、テキストを付し、写真集『人形 Die Puppe 』として自費出版される。

フランスの雑誌『ミノトール』は作品を受け取り、その抜粋を「関節のある少女の組立てに関するヴァリエーション」のタイトルのもと、発表する(1935年)。

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■ 遅まきの名声
その時からシュルレアリスム・グループに加えられ、またドイツではナチスの迫害を受け、妻にも先立たれていたベルメールは、1937年にパリに移住する。

彼はエリュアールの、ジョー・ブースケの友人となる。

戦中は身を隠さねばならず、数知れぬ経済的困窮を知るが、シュルレアリスムの思想に忠実であり続け、運動の活動には定期的に参加する。

彼が自身の作品についての省察を書き表した『肉体的無意識の小解剖学あるいはイメージの解剖学 Petite anatomie de l'inconscient physique ou l'Anatomie de l'image 』(1957年)の出版以後、1960年頃になってようやく広く認められ、栄光とも言うべきものを当初のエロティックな妄想を捨て去ることなく手にする。

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■ ウニカ・チュルン Unica Zürn
1950年代に彼はウニカ・チュルンと出会っている。
1916年生まれの彼女は、画家であり作家であった。
緊密な関係が二人の間に築かれる。
彼は彼女のグワッシュやデッサンの展覧会を支援する。
彼のおかげで、彼女は1959年−1960年のシュルレアリスム国際展(コルディエ画廊 Galerie Cordier )に参加する。
しかし、彼は彼女の病気を前にしては無力であった。
1970年の彼女の自殺は、脳卒中で半身不随になっていたベルメールの晩年をいっそう暗いものにする。
過酷な結末、それは彼の作品が表現した不安、それと全く無関係ではあるまい。

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驚異なるものへの探究的逃避はもっぱら女性の世界から得ていたが、夢幻的な素材(バッファロー・ビルの冒険、カレードスコープ〔万華鏡〕、緑色のビー玉…)からも得ていた。


最初の、短いパリ滞在時(1924年冬から1925年)、彼はシュルレアリストたちと出会っていた。
しかし、彼が実際彼らと親しくなったのはそれからおよそ10年後、彼がドイツを逃れる決心をした時であった。

Référence:
Bellmer, n°spécial de la revue Obliques (1975).

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* Unica Zürn は『ダダ・シュルレアリスムを学ぶ人のために』では、ユニカ・ツェルンと表記。




日本アートNipponArtでは、 Alain et Odette Virmaux, Les Grandes figures du surréalisme international, Bordas, Paris, 1994.を「シュルレアリスム人名事典」と題して翻訳中です。あくまでも、ご参考までに。

今後とも日本アートNipponArtをよろしくお願いいたします。
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