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フランスは思うに、自由平等の気ちがい病院というべきで …… これがフランスの短所であり、長所であり、困難であり、幸福である。

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monsieur rené magritte, interview
 
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M=ルネ・マグリット、Q=インタビュアー、W=パトリック・ワルドベルグ
 
 
Q 平凡なもの、なじみのあるものを親しく慣れさせないことが、あなたのこれまでの芸術活動に欠くことのできない考え方に思えるのですが。
 
M ええ。それでも実のところ、私は詩(ポエジー)に親しむ感情はあると思っています。この詩に親しむ感情ですが、例えて言えば、ツーリストたちの感情と言いましょうか、彼らははるかかなたまで詩を求めに出かけます。そして彼らの感じる詩、それは彼らにとってはすでに知っている詩なのです。大切なのは、なじみのない状況が生みだす、なじみのある詩なのです。通常、親しいということはなじみのない詩、つまり未知の詩を発見するチャンス足りうるものなのですが。
 
『困難な航海』、それがこの絵画の題名である。外見の向こうに、不鮮明なものの向こうに存在するものを見透かす能力を備えた目によって、航海は可能となろう。マグリット作品は驚異の劇場である。
 
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困難な航海
La traversée difficile
1963年
 
Q いわば人間の欲求のようにお考えでしょうか? 人間はある種の状態や状況のなかで対象を見ることに慣れているわけですが、ふだん見慣れているのとはちがう仕方で対象を見てみたいというような。
 
M ああ! 実にそう思いますよ。その欲求は人間にはあります。ずっと昔からできるものなら空飛ぶ人間を見てみたかったものでしょうし、飛行機も考えました。ふだんとはちがう人間が見てみたかったのです。
 
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ゴルコンダ
Golconde
1953年
 
Q マグリット絵画というものは、この世のどこかに存在するであろう秘められた生活ともいうべきものが表現されているのかどうか……
 
W ええ、おっしゃるとおりですよ。彼が私たちに見せるのは物事のこういった別の側面であると私は考えます。具体的なイメージのこの延長を、抽象的と言ってよければ抽象的なその外観に表現しているのです。しかし、思考の観点からです。マグリットについて語るとき、私は絵画とは絶対に言いません。私が言うのは「思考=イメージ」です。「思考=イメージ」、私が非常に大切にしている言葉ですが、彼も同意してくれると思います。あらゆる物体がひらめきの果実であり、事物の神秘を、世界の神秘を、じっくりと眺められた物体を通して発見させてくれるのです。こういったものを私たちは彼から受け取っています。貴重かつ得難いものであります。
 
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アルンハイムの領土
Le domaine d'Arnheim
1962年
 
M 私に関する限り、二つのかけ離れたイメージが出会わなければならないなどといった詩の概念とは逆をイメージした、描いてきたと言えるでしょう。一枚の扉があって、穴が開いている。通り抜けられるし、この穴から空を、夜も見ることができます。目に見えるすべての物体は、目に見える別の物体を隠しています。この場合は空と夜です。
 
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意外な返事
La réponse imprévue
1933年
 
Q それ自体で詩でありながらも、観る者を驚かすような題名をあなたは付けられます。例えば、2個のリンゴを描いたもので、ともにルーをかけた、たしか題名は……
 
M 『司祭の結婚』。
 
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司祭の結婚
Le prêtre marié
1961年
 
Q ええ、これなども鑑賞者を驚かせるのですが。
 
M ええ。
 
Q なぜこのような題名をお付けになられるのでしょう?
 
M 題名はイメージに見合うものでなければならないからです。題名も観る者を驚かせねばなりません。
 
Q 題名それ自体も疑いえないような確実なものに思えるのですが?
 
M けれども題名と絵は呼応しています。合理的な方法や論理的な方法によるのではなく、詩的な交感です。
 
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ピレネーの城
Le château des Pyrénées
1961年
 
Q あなたの絵画を前にすると、そこから発散される非常に奇妙な感覚を味わうことがあります。例えば大空に浮かんだ岩石を見ると、私などは不安な気持ちを抱いてしまうのですが、不安とはちがう別のなにかも感じとれるのではないかとも。
 
M ええ。あなたが不安な気持ちを抱くのは、あなたがこのイメージにとても敏感だからです。感受性の豊かな人ならば、目のくらむような、不安な気持ちを味わうはずです。けれども私は神秘をなにか認識可能なものとは思っていません。それは認識できないものです。この認識できないということが私たちによろこびさえも呼びおこすことがあります。経験したことのないイメージに出会うと私たちは違和感を覚えるものですが、しかし実際は、私たちは居心地の良さを感じているのではないかと私は思うのです。私たちが生きるのはそのような世界です。私たちはそのなかで自分たちの今いる居場所を知りたいと思っているのです。
 
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会話術
L'art de la conversation
1950年
 
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ルネ・マグリット René Magritte 1898.11.21〜1967.08.15
 
ベルギーの画家。シレーヌに生まれる。1904〜1916年まで少年時代の大部分をシャルルロワ近郊のシャトレで過ごすが、1912年に母親が入水自殺をするという事件が起こり、のちの彼の人格形成に影響を与えたといわれる。1916年ブリュッセルの美術学校に入学。この時期にキュビスム、未来派、ダダ、デ・スティルなどの運動を知り、ピエール・ブルジョワ(詩人)、E.L.T.メセンス(詩人、画家、音楽家)らの前衛的な芸術家と親交を結ぶ。生活費を得るためにグラフィックデザインや広告ポスターなどの仕事を行い、抽象画やキュビスムの影響を受けた作品を描いた。1922年に幼馴染みのジョルジェット・ベルジェと結婚したが、彼女はマグリット作品の多くに登場する女性像のモデルとなった。1923年にジョルジュ・デ・キリコの『愛の歌』に感銘を受け、これを機にシュルレアリスムの方向へと進む事になる。1926年に初めてのシュルレアリスム的作品である『迷える騎士』を発表。1927年ブリュッセルのル・サントール画廊で初個展開催。以後3年間はパリに滞在し、シュルレアリスト達と交流したが、シュルレアリスム運動の理論的指導者アンドレ・ブルトンと対立し、1930年ブリュッセルに戻る。以後生涯の殆どをベルギーでの制作活動に費やした。彼が生み出す合理的に構成されて見える明るくて静謐な作品は、事物そのものの不可思議さを暴き出し、平明に見える現実の中に、目に見えない世界を想像させるものであり、それらの不可思議で独特な作品世界ゆえに「イメージの魔術師」と称された。代表作は『レイプ』『大家族』『自然の贈り物』『光の帝国』など。
 
(順天出版『世界芸術家辞典』より)
 
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