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それだけで気持ちが強く惹きつけられる「風に舞い上がるビニールシート」という題名。 みなさんはこの題名からどんな思いを浮かべるでしょうか。 みんなが浮かべる十人十色の思いやイメージそのまま、 そしてそれ以上の厚みをもった感情がきっと広がる短編集です。 とはいっても、全6本の短編小説のうちまだ2本しか読んでませんが。 いつもよりは少し早めに仕事をあがって、すこし手持ち無沙汰気味に職場の最寄り駅に向かう途中。 こんなときのいつもの癖で本屋にふらり。 自宅の寝床付近に重ねられた読みかけの本たちの様子が頭をよぎりながらも、 何かちょっと別なものを読みたいと思って本屋に吸い込まれる。 以前から気になっていた幾つかの小説を手に取りながらも、 最終的に、日本人作家で読み易そうで軽くいい感じになれそう、 くらいの理由とタイトルに惹かれて購入。 駅のホームで電車を待つ間に早速読み始める。 次の駅で電車を乗り換え、自分には珍しく電車を一本待って次の電車で座って帰ることにする。 車中で最初の作品「器を探して」を読了。 次に最後の作品で表題作「風に舞い上がるビニールシート」を読み始め、 ますます作品に引き込まれだしたら。。。自宅最寄駅にもう到着。 文字通り時間が過ぎるのを忘れて読んでしまった。久しぶりな感じ。 主人公たちは親近感があるようで、やはり少し自分にはありえない職業のひとたち。 だけどこの距離のありようがとてもよい。 遠いことを近く感じさせてくれるとともに、自分を客観的に見させてくれる。 別に自分を客観視するんじゃなくて、自分にも時間が流れていることを感じさせてくれる。 特に「風に。。。」は不意にどこかに飛んで言ってしまうような、 その軽やかな題名と物語りの流れに反して、むしろしっかりと着地点を見据えた先に、 読む自分を連れて行ってくれる。 読み易いことは確か。だけど容易に読み去ってしまうことはできない。 それは別段深刻な問題を突きつけてくるわけではない。だけど重く深いところへ魂を誘う。 ゆっくりと着実に進む飛行船のような速度で。 時間も忘れてこの本を読んでいることで、自分にも時間があることを気付かされた。 仕事やいろんな私事にかまかけて慌しく時間があっという間に過ぎてく(ように思える) 間は気付かなかった、確かに「過ごしている」ということを。 車中と車外の出来事が全て一瞬のうちに風景としてと通り過ぎるような満員電車の中で、 しっかりと時間の流れの肌触りを感じさせてくれた熱い短編だった。 微温が続きそして最後の一行で、フッ、と何かが抜ける。
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