日刊ゲンダイ中野晃一上智大教授「政治家が暴走すれば主権者が処罰する」中野晃一・上智大教授(C)日刊ゲンダイ (抜粋) 安保法案反対の運動が「アベ政治を許さない」になり、いま「安倍やめろ」に変わった。反安倍のうねりは安保法が成立しても止まらないというのが、大方の見方だ。「立憲デモクラシーの会」や「安全保障関連法案に反対する学者の会」のメンバーとして、デモの先頭にも立ってきた気鋭の政治学者、中野晃一・上智大教授が、新しい社会運動のこれからを語るとともに、安倍政治をメッタ切り。
――今回、若者に引っ張られるように、学者も会をつくって反対運動に参加しました。 学者の大半が声を上げているかといえば、割合からすれば少数派です。ただ、変わりつつあるのは間違いありません。1960年代の学生運動を経て、政治にはタッチしないのが学者のあり方だという空気があった。しかし安倍政権が、自由民主主義を前提とした政治の土俵そのものを壊すようなことをしているわけです。保守だとかリベラル、左とかではなく、自由民主主義を共有している人ならば声を上げなければいけない。そうしたことで運動への参加に踏み切った学者が一定数いました。
――それも、憲法学者が大勢いました。 私は政治学ですから驚いているんです。法学の方々というのは政治的と受け止められるような行動はされないものでした。法はある意味、政治の上にあるような、ましてや憲法はその上にあるような意識でしたし、学問的にもかなりお堅い。政府の審議会に入ることはあっても、デモに参加などしないような方が多かった。そうした方々が今回、立ち上がった。路上でトラメガを持って発言するなんていう事態は、ちょっと衝撃です。つまり、それだけ今の日本が危機的なんだということです。ですから、学者の運動も簡単には終わりません。法律ができちゃったから諦める、という話にはならない。違憲訴訟や選挙で自民党の暴走をせき止める。最終的には法律の廃止を目標に動いていくことになるでしょう。 ■自民党は破滅に向かう以外にない
――来夏の参院選に向けての運動は? シールズやママの会、学者の会など、今回できた連携の枠組みは今後も続いていく。すでに定期的な会議のような形もできています。それをどう発展させていくか。何カ月か経った段階で、日比谷で大きな集会を開くようなこともあると思います。法律が成立し、しばらくは何もしないということではなく、やはり反対を可視化する必要がありますから。もちろん学者たちは、シンポジウムや勉強会、講演会で引き続き訴えていきます。
――安保法案反対運動は安倍首相の退陣を求める運動に変わりました。 政治家というのは、われわれの代理人にすぎません。代理人が暴走した時は、主権者としてきちんと処罰しなければいけない。動物のしつけじゃないですけど、こういったことをしてはダメだと、鼻づらをたたいて教えてあげなければいけません。「安倍やめろ」というのは、そういうことだと思います。
――かつて自民党は自ら「国民政党」と呼んでいたように、もう少し国民の声に耳を傾けていたと思うのですが。 強権政治は安倍さんが顕著だと思います。もちろん転換点は小泉さんくらいから始まっているのですが、あの時は民主党が上り調子だったので、一定のチェック機能が働いていた。安倍さんの第2次政権は、民主党政権崩壊後の焼け野原みたいなところで誕生したので、緊張感がないのです。加えて、(現在政権中枢にいる)小泉さんが登用した当時の若手・中堅は、世襲議員や右に寄っている人が多かった。ある種の特権階級意識があるんだと思います。 普通の人には興味がないと言いますか、分からないし、ある種の蔑みの対象にさえなっているんでしょう。自分たちと異質なものは、すべて左翼。仲間か左翼か、なんです。国会でのヤジもそうですが、首相でありながら、口をとがらせ、日教組と言う。やはり、ネトウヨが首相になってしまったということです。今までいろんな首相がいましたが、あそこまで知性も品性もない人は珍しい。一方で、それが右寄りの人には支持される。
――ネトウヨ首相が無投票再選する自民党に未来はあるのでしょうか? もともと焼け野原に成立した政権が、さらに野に火を放つような政策や政治手法で永続できると幻想している。果たしてこれが保守政治なのか。保守ならば、持続可能で、将来世代につなげることが大きな価値のはずです。いまの自民党にはそうしたものが見えない。その場しのぎで、今がよければいいという政治をやっている。この先、自民党は破滅に向かっていく以外にないと思います。内部分裂して破裂する、あるいは国際社会から本当に追放されてしまうようなネオナチの暴走みたいなこともあり得る。日本にとって悲劇的なことになるかもしれません。 だからこそ、新しい社会運動や主権者意識の高まりが政治的になんらかの形をとって、オルタナティブ(代替)を次に用意していくということを、慎重に、しかし急がなければならないのです。根気よく石を積んでいくような作業にはなるけれども、政治のバランスを回復するためにも、市民社会の側からそれを進めていく必要があると思います。 ▽なかの・こういち 1970年東京生まれ。東大(哲学)および英オックスフォード大(哲学・政治)卒。米プリンストン大で博士号(政治学)を取得。専門は比較政治学、日本政治、政治思想。近著に「右傾化する日本政治」。
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