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秋の訪れを先触れするえぞ山萩
小さな葉波にピンクの花を交互につけた花枝が
オホーツクの野道にしだれ咲く
盆が過ぎ、東北の被災地にも朝晩
初秋の涼しさが戻っただろうかと
被災地支援から帰った夫と話し合っていた矢先だった
思いもかけない ひとの死の知らせが届いた
かかりつけの歯科医に受診に行った夫が
「青山さんの奥さんが死んだ」と電話で告げた
盆が明けた8月19日のことだと
沈んだ声で呟くのが精いっぱいだった
ほんの一月前にわたしは歯科医院の受付で
そのやさしく美しい立ち居振る舞いに
明るい人柄に接したばかりだった
信じがたい話を帰宅した夫から恐る恐る聞くと
診察が終わった時、院長がぼそぼそと
「家内が死んだ」「癌だった」と告げたそうだ
いつもはエネルギーの塊のような活発な院長の
蚊の鳴くような言葉に
同じく機関車のような勝気な夫が
茫然として声を失った
相手の声を遠くに、とぎれとぎれに聞き取った
歯科医院の院長は三足のわらじを履いていた
家業の歯科医院のほかに
故郷に帰省する以前に国立大学で
生命科学研究者として追及していた課題を
自ら造った研究所で、研究を続け
また地元の名士の義務として
国内の一流音楽家を招いての音楽会を催すなどの
地域の文化活動や、
おしゃれな地元産品チョコレートの製造販売の
ベンチャー企業の社長業
このような夫の活動のすべてに助力を傾けてきたのが
文字通り女房殿の彼女だった
その上、子供三人を医者として育て上げた
ぼそぼそとしたか細い声で
「僕がいろいろなことをやることが、彼女に負担を与えてしまった」
「思い出を語り合える人がいなくなった」
と小さな、力ない声で語る男の声を
夫は茫然自失の頭で、とぎれとぎれに聴いた
あまりにも急な知らせだった
病に伏せることもなく
残されたものたちが、心の準備をする間もなく
彼女はこの世を立ち去ってしまったから
あのひとが残した波紋は
忍耐とやさしさと明るさ
一言でいえば、「人の美しさ」を描いて広がってゆく
医師の資格を持ちながら、医院の受付を受け持ち、
母として、また夫の女房としてしなやかに生き、
患者や周りの他人に、
人間への信頼を残してくれた人
被災地支援にまた旅立った夫が次に帰ってきたとき
二人でお線香をあげさせてもらいにゆき
彼女の霊に向かいたいとの言づてをして
その美しき女 ( ひと )を偲び
あまりにも早い旅立ちを悼み
えぞ山萩のしだれ咲く山野道を
哀しみを感じながら
オホーツクの碧い秋空の下を
歩くわたし
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poems
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午前3時に目覚め
ゲーテ『ファウスト』の続きを読む
ふと眼をあげると暗闇の中に
神話の中の都市炎上のごとく
真っ赤に燃えるあかつきの
水平線上の空海の出現
4時10分、
闇と真紅を繋ぐ、心を吸い込むような水色が
徐々に大きくなり白んでゆく
大空に伝令雲が勇壮にたなびく
明けゆく空の今朝の伝令は
巨大な黒い竜神ではなく
北に頭を向けた白イルカが三頭
日輪のさきぶれとしておおらかに空を泳ぐ
南に向かっては
天女が金色の裳裾を翻し
崇めるべき陽の神の来臨を伝える
地上では湖水も
影絵のような黒い木立も
浅墨色の草原の草も
みな息を殺し静止している
一羽の黒い鳥がこの聖画の中を
羽ばたき飛んでゆく
すると徐々に万物に
色彩がよみがえり
もののかたちがあたえられる
湿原の草むらは青みを取り戻し
ピヨピヨと啼く鳥の声が聞こえ
道路からは波音のような
ザーという車の音がきこえてくる
能取岬の山の端が
黄金色に縁取りされて燃え上がり
静止した湖面に
金色の光の柱がゆらめき立つ
カラスが一声鳴いた
4時半、岬の山の端に
昨夜の満月のような日輪が
その御姿を現し鎮座された
このような壮大な聖画の中から
新しい一日が始った
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チューイ、チューイ
午前3時半、まだ暗い
リリリリリリリ、リューイ、リューイ
鳥の声か虫の音か
開けた窓の外の湿原から
かわいらしい声が聞こえる
小さきいのちの声
人間の赤ちゃんの泣き声に似た声
耳にするものにいとおしさを
湧きあがらせずにはいられない声だ
聞くものにしあわせを与えてくれる声
生きていることのしあわせを深く感じさせる
無防備なもの、愛されなければ死んでしまうもの
そのような小さなものを愛することを無上の幸せと感じる
これが天の采配で無くてなんだろう
小さきもののいのちのうた
共鳴するいのち、愛し合う喜び
無心なもののいのちのうたが
人の心に、生きている喜びを与えてくれる
天地万物共尊するいのち
ともに愛を与え合う地球をまもりたい
うぶで純真な人間や生き物たちが知らない間に
地球には悪魔=狂人がはびこってしまったようだ
謀略によって、少数のエリートが地球を支配し
ほとんどの人間を奴隷にし、獣扱いし、殺害することをよしとする体制を
何百年もかけて造ってきたらしい
支配するものとされるものの世界を
究極までつきつめた悪魔の世界を
この世に実現しようとしている狂人が
国際金融を支配し
秘密の結社を通して国際的諜報機関を張り巡らし
強力な武器と核兵器と監獄と、生物兵器で大量殺戮をすると脅し
世界中の(日本もアメリカも)政府と情報・諜報機関を操り、支配下に置く
そんな悪魔=狂人がいま、地球を乗っ取ろうとしている
うぶで純真なものたちが、世界中に張り巡らされた謀略装置
買収と脅しに屈した、マスゴミをはじめとする報道機関、官僚組織、司法、裁判所、教育機関、大学、その他あらゆる権力装置が乗っ取られ、
庶民はそれらの謀略にだまされ、洗脳され、何も考えないでいる間に
自分を殺し、奴隷にする世界を造るるために働かされていることに
気が付かないようにされてしまった
ここは地獄の一歩手前なのだ
悪が善人を逮捕し、牢に入れ、殺害し、
権力を悪の手に簒奪するために
選挙民をだますために、新聞テレビは声の限りに
嘘と暴略をわめきたてている
目覚めよ
そんな世界は生きるに値しない
獣人だけが生きろ
醜く無様な欲望の世界をうごめきまわれ
狂人の思考を知ることもなければ知りたくもない
良き人、弱き人、正しき人、悪を知らない人
悪には全く無防備な多くの人間を
謀略、買収、脅迫、嘘、暴力、殺害など、悪徳の限りを尽くして
権力を簒奪した悪魔が支配し、奴隷にしようとしている
信じがたいがために
信じたくないために、悪魔に取りつかれた狂人を野放しにしているうちに
わたしたちの地球の文明は、悪魔に乗っ取られようとしている
民衆を支配し蹂躙する悪の論理に
この世界をこれ以上乗っ取らせてはいけない
清らかなよろこび
小さきものが与えてくれる
生の喜び
チューイ、チューイ
リリリリリリリ、
リューイ、リューイ
この美しい地球を守りたい
民草のうつくしいいのちを愛したい
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8月9日
朝の湿原は白い霧に包まれ
湖に注ぐ小川の土手には、並木が亡霊のように浮かんでいる
早朝の空気をつんざくギャーというアオサギのダミ声
森にはサビタの花が咲いている
灌木に満開の白い花が匂う
8月9日
66年前、長崎にプルトニウム原爆がまきちらされた日
戦争を終わらせるために落とされたと
長い間教えられてきた
邪悪な日本軍の息の根を止めるため、正義のアメリカ軍が原爆を投下したと
長い間、半世紀以上も、わたしたちは騙されてきた
爆撃、破壊、大量殺戮、原爆投下の後
米軍は笑いながら焼け跡の子どもたちに
飴とチョコレートを差し出した
日本を戦争に導いた悪い日本軍人
それを退治した救世軍のふりをして
罪のない市民、人間が集中して住む都市を狙って
広島と長崎に、それぞれウラン爆弾とプルトニウム爆弾を落として
人体実験を行った
何十万もの人を殺しながら原爆に
「リトルボーイ」と「ファットマン」というふざけたニックネームをつけた
医療班を結成し、原爆被災者を助けるふりをしながら
大量殺戮によってモルモットとされた瀕死の病人の血清を取った
原爆病の情報を集め、これからどうやって金もうけしようか
医薬品の開発、これは儲かるだろう
原子力の平和利用と銘打って
原発を後戻りできないように売りつけよう、
すべては金のためだ―儲けよう
今、明らかになってきた
原爆投下の謎が、隠されていた嘘が、悪魔の所業が
圧倒的な脅しと恐怖で凍りつかせ、
そのあとに甘い言葉をささやいて
相手の心をつかみ取る
これが洗脳のテクニックだ
アメリカさんはいい人なんだ
悪いのは日本軍なんだ
戦後教育を受けた私たちはそう思い込んで育った
アメリカを羨望させるラジオやテレビの娯楽番組
麻薬の入ったコカコーラ
スポーツ、セックス、スキャンダルのテレビという娯楽を与えられ
何も考えず頭を空っぽにしている間に
日本庶民が働いて納めた税金は
脅しと甘い汁で懐柔されてしまった
売国日本人支配層によって
政府、司法、検察、マスコミ業界、金融業、産業界、教育界、農漁業
あらゆる分野に張り巡らされた蜘蛛の糸によって
がっぽりアメリカ、いや、アメリカ政府をも操る闇の権力に
流れてゆく美しい仕組みが整備されていた
いやといえば殺され、破廉恥罪をなすりつけられ、投獄され
日本全国に設置された原発を
人工地震で破壊するぞと脅される
そして見せつけられた大津波大震災、福島原発爆発メルトダウン
広島、長崎を知らない世代
言葉だけは知ってはいても、洗脳され続けてきた
真実がわからなかったわたしたち戦後世代
60歳を過ぎてやっとわかるようになった
なんということだ
なんということだ
戦争を仕掛け、拡大すればするほどもうかるおいしい仕掛け
正―反―合の弁証法を悪用すればいい
両陣営に資金を流し、戦争を長引かせれば長引かせるほど
両陣営から金が流れ込む
戦争に負けた国からは、国民を奴隷労働に追いやり搾り取ればいい
戦勝国からは金にものをいわせて
欠陥のある男を一国の大統領や首相にして脅せばいい
その国をどうにでも操ることができるチェスの駒だ
何世紀にもわたって作り上げられた邪悪のシステムは
人間を悪魔に変えるシステムまで完成させている
『長崎の鐘』に残された永井隆博士の言葉
放射線治療の学者として、長崎原爆病患者を治療する医師でありつつ、
自らも原爆病患者としての生を生き抜いた
生命の言葉を残した人だ
放射線の平和利用を信じ、
科学の真理探究のために身をささげた先達研究者への敬意と
原子病の治療記録を残した『生命の河―原子病の話』の結びには
「明るい明るい平和の原子時代!希望に満ちた原子時代!」
の言葉が残されている
60年前に亡くなった彼は、いまの祖国をなんというだろう
朝の湿原は白い霧に包まれ
並木が亡霊のように浮かぶ小川の橋下には
カルガモ一家のお母さんが、通りかかったわたしを見張りながら
砂州から川に飛び込もうかどうかと考えている
サビタの灌木に白い花咲く森の小道に
丈高い夏草と一緒に除草車に刈りはらわれた
オオウバユリが道端の枯れ草の中から
生き返り立ち上がった
蛇のように首を起こし
10センチほどの高さから30センチにまで丈を伸ばし
花びらを落として青い実をつけて立っている
白くうつくしいサビタの花は
原爆で死んだ多くの魂の再訪であれ
けなげなオオウバユリの青い実は
大震災と原発事故にめげることない
日本の未来の子らであれ
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木々がうっそうとした森を創り
道端の花たちの丈が高くなる
小さな花から大きな花へ
光を渇望する早春の小さな花たちと
真夏の強い光を避ける日陰の大きな花
夏の赤い太陽が岬の上に現れ
赤い光をゆっくりと湖と地上に放射してゆく
ものみな眼覚め、カッコーが鳴く
新しい日が始まる
早朝、小暗い森の道端に
青い百合がほのかな面差しでたたずんでいた
いくつもの蕾をつけながら
緑陰にすっきりと立つオオウバユリの花
木漏れ日がその凛とした姿に
自信に満ちたたたずまいに
真打登場とばかりに威厳を加える
オオウバユリは根に豊富なでんぷんを蓄え
北海道先住民アイヌは
その根をつぶし、水にさらして粉にして
祭の時と大切な客をもてなす時に
調理して食に供した
冬、森が白い雪原の一部となる時
その中に茶色い、オオウバユリの枯れ茎が
大きな実をつけてしっかり立っている
実には種がぎっしり詰まり
強い風が吹き、実がはじけると
小さな翼をつけた種が風に乗り
遠くへと広がり、飛んでゆく
オオウバユリは賢者のように
枯れ茎になっても凛として
子孫を増やす仕事を風にゆだねる
八月、夏草茂る森の中で、
緑葉の無限の波を天蓋として
オオウバユリの花が秘めやかに
ほほえんでいる
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