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午後4時のバスで雲仙温泉に向かった。小浜温泉で下車してしまったので、1時間遅れで宿に着いたのは7時ちょっと前になった。標高800メートルということで、非常に寒かった。ここだけは北海道のようであった。かせや旅館という明治21年創業の古湯の宿、客室13部屋の小さな旅館に宿泊する。現代的なサービスはないが、大きな旅館とは違って一人旅でも気軽に泊まれること、古き良き時代の家族的な人情味が味わえる宿でもある。
この宿にハプニングが起きたのは翌朝6時半のことである。
4軒隣に火の手が上がり、火事になったのである。6時半に周りのホテル客が火の手が上がっているのを見つけ通報した時には、まだ裏手のほうが燃えているものの、通りに面した店は全く大丈夫のようであった。放水が始まったのですぐに消えると思っていたのだが、1時間後の7時半になってもまだおさまらず、ついには火元はまるこげに全焼し、隣の薬屋も水浸しになった。
そこから1軒はさんだ隣がかせや旅館であるので、風向きもあり煙も入り込んで心配はあったが、2軒目までで火事は収束した。かせや旅館とは親戚の家が火元ということで、その家の人は早くに病院に連れてゆかれたと聞いたので、大丈夫らしいが大変なこととなった。ボイラーが原因だということを耳にはさんだ。戸じまりが厳重であることがあだとなり、消防の人が素早く中に入れず手動で、家と家の間の狭い脇から入りこんで放水していたのが、全焼の原因となったかもしれないと、素人ながら思った。
火事が原因でバスの運行が大幅に遅れたことから、バスの営業所の女性係員はてんてこ舞いであった。引きも切らずにかかってくる電話に応対したり、てきぱきとまた親切に対処する女性の方言を聞くのは楽しかった。文化が画一化している今の時代、土地の言葉というものは本当に貴重なものだと思う。諫早方面に帰る2組の夫婦づれと一緒にタクシーで山の下の小浜まで降りることになり、ひと時旅の仲間づれに花が咲いた。
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