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経営再建を進めると報道されました。
ヤマトヤシキは長年にわたるデフレ、姫路駅周辺の再開発や郊外大型店との熾烈な競合にさらされ、
ここ数年にわたって売上高が大きく減少を続けてきました。
それに伴ってヤマトヤシキでは5期連続の最終赤字を計上し、経営は厳しさを増していました。
(ヤマトヤシキ姫路店) 今回、ヤマトヤシキが債務超過の解消と経営再建のために採った手段が、
「事業再生ADR」というものです。
これは民事再生法適用など裁判所による法的な債務整理ではなく、
事業再生実務家協会という国に指定された第三者機関の仲立ちによって自主的に財務状態の改善を目指すものです。
このSDRという再生手段では事業を継続しながら再建することができるため、
私たちにはただちに影響はありません。
「経営再建」というセンセーショナルな響きを持つ発表に驚きはしましたが、姫路店・加古川点ともに営業はこれまで通り続けられます。
(ヤマトヤシキ加古川店)
ヤマトヤシキの公式プレスリリースで発表されていますが、
あくまでも姫路加古川二店舗体制での再建を目指すとのことです。
再建にあたっては、次の軸が掲げられています。
1.姫路・加古川ともに店舗は存続させる
2.姫路店の大幅改装による動線改善
3.ロイヤルカスタマーへのサービス強化
4.雇用と外商事業、カード事業の維持
そして、今回の再建では長年続いてきた創業家経営にピリオドが打たれることとなります。
再建を委託した「マイルストーンターンアラウンドマネジメント」社によって社外取締役などが選任されることとなっており、全面的な経営体制と経営基盤の刷新が図られることとなりました。
2017年決算では黒字転換することを目指していますが、これからどこまで旧来態勢に切り込み、
消費者のニーズをくみ取ることができるかがカギを握っています。
ヤマトヤシキはここ数年、持株会社である「ヤマトヤシキリテイリング」の設立をはじめ、
社長の交代に伴う積極的なテナントの誘致などが進められてきました。
加古川店では2011年の東急ハンズトラックマーケットの導入を皮切りに、
現在では雑貨店ハンプティーダンプティの導入による若年層の取り込みが図られています。
もともと婦人服売り場であった4階部分の大半がハンプティ―ダンプティとなったことは、
百貨店の売り上げの多くを占める婦人服の売上を切り捨てたも同然で、かなり思い切られたことでした。
さらにタリーズコーヒー、ファクトリーシン、さらにはリラクゼーションサロン、アートネイチャーなどのテナントが立て続けに導入されています。
姫路店でも手芸店である「ユザワヤ」が導入されたり、営業時間の短縮などによる営業コストの削減などのある程度目に見える形での経営努力が続けられてきました。
しかし、姫路駅周辺では2013年以降立て続けに商業施設のオープン、増床が続き、
駅から距離のあるヤマトヤシキ姫路店はますます苦境に立たされていました。 (ヤマトヤシキ姫路店の回転式自動ドア)
姫路市には山陽百貨店があり、こちらも大幅な増床を決めています。
人口50万人程、あるいはそれ以下の地方都市では百貨店の淘汰が進んでおり、
1都市に成立させられる百貨店は1店舗に限られるような時代になっています。
ここ最近でも近畿では人口37万人の和歌山市で高島屋が閉店、近鉄の一店舗体制になりました。
百貨店を巡る情勢は厳しく、県庁所在地である長崎市、熊本市も一都市一店舗となりました。
政令市である相模原市でも来年には一都市一店舗になる予定です。
特に姫路は、神戸・大阪への交通アクセスも良いことから、
市内に2店舗の百貨店がある現在の体制も淘汰される可能性があります。
そのなかで今回、ヤマトヤシキが経営危機に陥ったことで、
この再建が今後の姫路の商業の構図を大きく左右することとなります。
加古川では旧加古川そごうの後継として店舗を開設したヤマトヤシキですが、
現在では姫路店を上回る売り上げを計上しています。
加古川には百貨店がないうえ、駅前商業地盤を支える中核となっていることから、
今後もヤマトヤシキという存在は不可欠です。
姫路店は大幅改装に踏み切られるとのことですが、すでに築後50年を迎え、
施設そのものの老朽化が否めなくなっています。
また、姫路店の什器も「百貨店らしさ」の全く感じられないものが多く、購買意欲を削がれます。
財務状況からして、姫路店の新築はきわめて難しいでしょうが、
せめて百貨店としてのアイデンティティが取り戻されなければ経営再建は難しいでしょう。
姫路店のライバル、山陽百貨店はこの点で徹底されており、フロアは石のタイルが敷かれ、
百貨店らしい什器に商品が陳列されています。
立地面、売場面積ともに劣勢で、山陽には人気のロフトが導入されています。
姫路店では催会場をフル活用できていないことも問題です。
たしかにコストの問題もありますが、シャワー効果の見込める上層階において、
このように催会場のスペースが無駄にされていることは甚だ疑問です。
もちろん通常は催会場において何らかのイベントがされているのでしょうが、いかなる理由があろうとも
集客の要に化ける可能性のある催会場を持ち腐れているわけにはいきません。
また、姫路店においては「デパ地下」への動線にも重要な課題があります。
そもそもの面積が小さいうえ、エスカレーターは一本のみ、動線そのものが錯綜としており、
このままでは(もしくはすでに)消費者は山陽百貨店に流出してしまいます。
姫路店の印象として、全体的に無駄なスペースが多く、かつ百貨店にしては照明が暗いように感じられました。
姫路店1階には、なぜかファクトリーシンなどの本来デパ地下にあるべきテナントが「散在」しています。
加古川店のように、何らかの一貫性が感じられるようにスイーツの店舗がまとめてあれば効果的といえますが、
姫路店の場合は婦人向けのフロアに「なんとなく」「とりあえず」「無理やり」配置した感が否めません。
姫路店地下の構造上、おそらくデパ地下に配置できなかったという都合があるのでしょうが、
これでは単なる「雑居ビル」に成り下がってしまいます。
そもそも百貨店の存在意義が問われ、買付力が乏しくバイヤーが力を発揮できない地方百貨店では、
「場所貸し」のような様相を呈しつつある中で、一貫性と購買客層のシチュエーションが十分に考慮されていないことは大きな問題です。
一方、レストランフロアである8階は「リノベーション」と呼ばれても差し支えないほど美しく改装の手が行き届いています。
これは百貨店にふさわしい品格を感じさせ、ほかの飲食店とは一線を画すことができていると感じられます。
すべてのフロアには難しいかもしれませんが、まずは無駄なスペースを解消し、
どの客層をメインターゲットに据えて売り場を展開していくのかをじっくり考慮していかなければなりません。
(このレストランフロアでもトイレが3か所あり、これには疑問符がつきますが・・・)
加古川店では隣接する専門店街、「カピル21」を含めた一体的な運用が始められるべきかと思います。
一般消費者にとって、カピルとヤマトヤシキの区別はつかず、建物全体の店舗を「ヤマトヤシキ」とみなします。
特に2階のカピル側店舗では百貨店というよりも商店街のような雰囲気が感じられ、
百貨店らしく昇華させられなければなりません。
姫路店とは異なり、加古川店の施設はまだまだ新しく、各フロアでまとまった面積が運用可能です。
姫路店よりも柔軟な売り場の改造が可能であり、将来性は加古川にこそあります。
そごう跡を引き継いだことが間違いだったとされることもありますが、
ヤマトヤシキはすでに加古川店なしには成立しえない状況になっています。
経営再建とは言えども、単に財務状況を改善するだけでなく、姫路店の老朽化にどう対応するのかなど、
中長期的な懸念も見据えながら再建が進められると好ましいですね。
時代は移り変わろうとも、やはり地方商業の中核は百貨店です。
ヤマトヤシキの再興を応援しています。
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