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いつもと変わらないある日の朝、突然少女ソウォンの身に振りかかった恐ろしい事件。 心を閉ざす娘と彼女の傷を癒そうとする家族の絆の物語。 【監 督】イ・ジュニク 【キャスト】ソル・ギョング →(ソウォンの父) イム・ドンフン オム・ジウォン →(ソウォンの母) ミヒ ソウォン文具店主 イ・レ → イム・ソウォン キム・サンホ →(ヨンソクの父) クァンシク ドンフンが勤める工場の工場長 ラ・ミラン →(ヨンソクの母) 小学校の保護者会副会長 キム・ドヨブ → ヨンソク ソウォンの同級生・幼なじみ キム・ヘスク → ソン・ジョンスク ひまわり児童センター心理療法士 ヤン・ジンソン → イ・ドギョン 巡査 カン・ソンヘ → チェ・ジョンスル 【ストーリー】 8歳の小学生ソウォン(イ・レ)の母ミヒ(オム・ジウォン)は娘ソウォンの同級生ヨンソクの母(ラ・ミラン)、PTAの役員会に必ず出席しろという催促の電話に出ながら身支度中だ。気の遣う集まりの上に食事会場が補身湯店と聞いてますます行く気が失せるが、ヨンソクの母に強引に押し切られ渋々行くために準備している。最近一回り大きくなったおなか周りのためにスカートのファスナーがしまらない。居心地の悪い場に嫌々行った上、食べることも出来ない補身湯店の会計全部を支払わされたミヒ。ヨンソクの母が、役員会にいつも出席しないミヒが役員から悪く言われないようにした心遣いだったが、19万8千ウォンという大金を払わされイライラMAXで、夫ドンフン(ソル・ギョング)の給料をあげろとヨンソクの母に言う。 ソウォンの家族とヨンソクの家族は、お互いの子供たちが同級生であり、夫ドンフンはヨンソクの父クァンシク(キム・サンホ)と友人でもあり、クァンシクの経営する工場の従業員であり、つまりは家族ぐるみで仲良く付き合う間柄だ。お互いの妻たちが補身湯店から帰る頃、工場では夫たちが一緒に昼食を食べている。今日の昼飯は参鶏湯。鶏は一人ひとつずつ!と従業員たちに念を押したにもかかわらず、2人が鍋をかき混ぜても鶏は残っていない。やっと一切れ見つけた鶏を奪い合うドンフンとクァンシク。肉のついていない鶏を見ながらドンフンは「最近、嫁の腹回りばかり肥える…」とつぶやく。ミヒは8年ぶりに妊娠したことを夫ドンフンにまだ話していないのだ。 ソウォンの家はソウォン文房具店、母ミヒが切り盛りしている。学校から帰ってきたソウォンは店の前に設置してあるゲーム機で興奮して遊ぶ工場長の息子ヨンソク(キム・ドヨブ)たち同級生を見て、もっと大事に扱って!と注意する。そんなソウォンに悪態をつくヨンソク。家に入ったソウォンは、母ミヒが夕食を作る台所で宿題をするが算数の宿題が1問解けないと悩む。「ヨンスが9本ジニが3本持っている鉛筆を2人で同じだけ持つにはどうしたらいいか」という問題。自分の同級生に当てはめて考えてみたら?と言う母ミヒに、9本持っているヨンスが3本ジニに渡せば同じ数になることはわかっているけれど、ヨンスが悪い奴でジニに3本あげたりしないはずだと言い切る。ソウォンはヨンスをヨンシクと重ねたようだ。父ドンフンは野球中継に夢中で2人の会話に興味がない。口癖は「お母さんの言うことをちゃんと聞け」だ。ミヒはますます二番目の子供のことをドンフンに話す機会を失っている。 ある雨の朝、工場長のクァンシクからドンフンへ電話が入る。急用が入って自分が工場を開けられないから工場を開けてくれというお願いだ。機械の電源も入れておく、と言ってドンフンは急いで出かけようとするが、こんな時に限って傘が見つからない。傘を取りに店に降りたドンフンはカーテン越しに店の前に立つ人影を見る。人影はすぐに消えたがそこには空の焼酎瓶が転がっていた。そしてドンフンはそのまま工場へ出勤する。 支度が少し遅くなったソウォン。店の前に出た母ミヒがソウォンを促す。店の前をヨンソクたちが通りかかりソウォンと一緒に行ってくれるようにお願いするが、ヨンソクは同級生たちの手前承諾できずにそのまま行ってしまう。家を出たソウォンの後ろから「大通りを行きなさい」と声をかける母ミヒ。学校に行くには小道の近道があるのだ。先を行ったヨンソクたちは小道に入る。小道を通りかかったソウォンはチラリとそちらを見るが、母の言いつけ通り大通りを学校に歩いていく。時間が遅かったため道を歩いているのはソウォンだけだ。小学校の校門が見えて来た時、ソウォンの前に薄汚い酔っぱらい男が一人立ちふさがる。 「傘を貸してくれ」という男。その男を避けて校門へ向かうソウォン。次の瞬間、男がソウォンを抱え込み、建設倉庫に入っていく…。 クァンシクの代わりに工場を開けた父ドンフン。従業員たちがやってきて自身も仕事を始める。母ミヒはドンフンとソウォンを送り出し残り物でやっと朝食を食べ始める。建設倉庫、血まみれの手で携帯電話を探すソウォン…。 母ミヒの携帯が鳴る。ヨンソクの母からで、小学校の前に警官やパトカーがたくさん止まっている、校門前の建設倉庫で瀕死の状態の少女が発見されたらしい、という内容だった。その頃、仕事をしていたドンフンの携帯が鳴る。電話口の刑事は思いもよらないことを告げられるドンフン。「お宅の娘ソウォンちゃんが意識不明の状態で病院に運ばれ重体だ」と。 病院に駆け付けたドンフンは救急治療室のベッドに横たわるソウォンのあまりに痛ましい姿に言葉を失う。さらに追い打ちをかけるように警察と医者から信じがたい現実を突きつけられる。凄まじい暴行に遭ったソウォンは体に生涯消すことができない障害を負った。娘の身に振りかかったあまりにむごい状況に泣き崩れる父ドンフンと母ミヒ。しかし、気丈にもソウォンは動揺する父母の心配までして、悪いおじさんを捕まえるために警察に協力するとまで言う。ソウォンの心の傷をケアするため、ひまわり児童センターの心理療法士ソン・ジョンスク(キム・ヘスク)が派遣される。ソン心理療法士の立会いの下、集中治療室のベッドに横たわったままで犯人の顔写真を見せる警察。一人の男の写真を指さしたソウォン。警察は男を逮捕に向かう。 今は気丈に振る舞うソウォンだが、ソン心理療法士はこれから色々な面で心の傷が現れてくると両親に告げる。そしてそれが現実となる。あることがきっかけとなり、ソウォンは父ドンフンを見る度に事件の際の犯人の男の記憶が蘇って怯えるようになり、ドンフンは娘に近寄ることさえ出来なくなってしまう。しかも、事件を知ったマスコミが病院に殺到し、両親はソウォンを社会の好奇の目から懸命に守ろうと必死な中、犯人の有罪を立証するために、裁判で傷ついたソウォン自身の証言が必要となり、家族はさらに追い詰められることに。 母ミヒは娘の事件の衝撃と妊娠中という不安定さから人間不信に陥り友人であるヨンフンの母親さえも遠ざけ、父ドンフンは犯人への怒りから友人であるヨンフンの父クァンシクの助言も拒絶する。この家族が絶望の淵から立ち上がるための闘いが始まった…。 【感想】 イ・ジュニョク監督の9作目『ソウォン/願い』です。 この映画は恐ろしい事件に巻き込まれた少女とその家族の苦しみと再起の話。 そして、この映画もまた実犯罪をモチーフにしています。 あらすじ紹介の中では、ソウォンの受けた身体的傷については書きませんでしたが、 というよりも…書けませんでした、あまりに…むごいので。 映画の中ではその部分についても語られています。 この映画のオファーを受ける際、 父ドンフン役のソル・ギョングは、あまりにも辛い素材を含むので出演をためらったと言います。 そして児童性暴行被害者の家族についてインターネットで調べるうちに、 ある被害者の父親がつづった嘆願書を目にして、出演を決心したそうです。 そこには、被害者でありながら被害者であるという事実を知られることを恐れ、 メディアと隣人の視線から隠れて生活しなければならない苦悩が綴られていたそうです。 それを読んだソル・ギョングは、そういう被害者家族たちの実情を世に知らせるべく、出演を決意。 また、母ミヒ役のオム・ジウォンもこのような壮絶な体験をした家族の母親を演じることが 自分自身可能なのかと自問し、当初は出演を断ったそうです。 それほどまでに、この映画は壮絶な内容を含んでいます。 このような映画が今までになかったとは言いませんが、 ここまで忠実に被害者家族の苦悩を描いた作品はなかったかもしれません。 この映画は復讐の話ではなく、再起する希望を与えるための作られた映画です。 出演する大人の俳優たちさえためらいを覚える映画で、被害少女ソウォンを演じたイ・レ。 その他にもこの映画には、子役たちが出演しますが、 この映画が扱う内容が壮絶であるため、子役たちの精神の安全を守ることが不可欠だったため、 小児精神科医学会の協力の下で、配役後遺症の予防や治療を子役たちに行い、 精神面のフォローを徹底的に管理して、映画が製作された、とのこと。 この映画を観れば、そのフォローが絶対的に必要不可欠であることがわかります。 あまりにも辛い体験を強いられた家族たち。 本人たちの辛さも壮絶ですが、同級生ヨンフンの家族たちの姿も印象的です。 犯人への怒りに震える父ドンフンに対して癒す気持ちで掛けた言葉が届かないクァンソク。 人間不信になった母ミヒから事件を言い触らしたと誤解を受けるヨンソクの母。 事件当日ソウォンと一緒に登校することを断ったヨンフン。 当事者家族だけではなく友人家族たちにも事件は暗い影を落とすわけです。 でも、友人家族たちは、心を閉ざす被害者家族たちを見守ってくれます。 ヨンソク母は、自分が誤解されて傷ついても、もっと傷ついたソウォンの母ミヒの心を察して、 お見舞いに来たい気持ちを抑えて、誤解も解かずに逢わずにいた。 そして、ミヒが辛い気持ちを口に出すことが出来る時まで、待っていてくれた。 ミヒの心にあるやり場のない怒りの気持ちが、自分に向かうことで少しは楽になればと。 なかなか出来ることではないですよね…。 「幸せに生きていく それが最大の復讐」 予告編の最後に流れるこの言葉の重さ。 ソウォンという名前は日本語で言えば「願い」です。 そして、ソウォンの弟ソマンという名前は日本語だと「希望」です。 映画のラストシーン、ソマンのお姉ちゃんになったソウォンの優しい笑顔に涙が止まりませんでした。 とても重い映画ですから、おススメです!と明るく声高に言うことは控えますが、 是非観ていただきたい映画ですし、この映画を制作したイ・ジュニョク監督をはじめ、 出演した俳優陣、そしてスタッフさん、この映画に関わったすべての方々に…拍手です。 先日、イ・ジュニョク監督の新作映画『思悼』の話題でも触れましたが、 ん?『雲を抜けた月のように』で触れたんだったかな??? イ・ジュニョク監督は時代の弱者を取り上げた映画を作るのがライフワークのようです。 オイラが監督括り(この監督の作品だから観てみようと思う)は数人います。 キム・ギドク、チャンジン等…イ・ジュニョク監督もその一人です。 あまりイ・ジュニョク監督作品に触れたことがない方がいらっしゃいましたら、 これを機会に「イ・ジュニョク監督括り」の映画鑑賞もおススメ致します。 ではでは、また。
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