【監督】イ・ジュニク
(王の男(2005)、ラジオスター(2006)、楽しい人生(2007)、あなたは遠いところに(2008)他)
【キャスト】
ファン・ジョンミン → ファン・ジョンハク 伝説の盲人刺客(大同契創設メンバー)
チャ・スンウォン → イ・モンハク 「大同契」の新しい首長
ハン・ジヘ → ペクチ イ・モンハクの恋人 妓生(芸妓)
ペク・ソンヒョン → ギョンジャ(犬の子) ハン・ギョンジュ ハン・シンギュンの庶子(私生児)
キム・チャンワン → 宣祖(ソンジョ) 李氏朝鮮第14代王
ソン・ヨンチャン → ハン・シンギュン大監(ギョンジュの父) 西人派
シン・ジョングン → ユ大監 東人派 朝廷
リュ・スンニョン → チョン大監 西人派 朝廷
チョン・ギュス → アンソンの真鍮商 (大同契創設メンバー)
イム・ジェギュン → チョン・ヨリブ 「大同契」発起人
【ストーリー】
「ただちに大同契(テドンゲ)を解散しろ」朝廷西人派ハン・シンギュン大監(ソン・ヨンチャン)と西人派チョン大監(リュ・スンニョン)が、大同契の主導者チョン・ヨリブ(イム・ジェギュン)に迫る。チョン・ヨリブは、朝廷すら統治できない王を非難し「腐った朝廷が倭軍に対抗できるのか?」と問い返す。ハン・シンギュンは、「大同契の解散は王命だ」と警告して去る。「王に取り入るためには西人は何でもする」と蔑む東人派ユ大監(シン・ジョングン)だが、現実は大同契の解散命令が王命である以上、いくら東人派が大同契を支持しているとはいえ、火の粉が自分たち振り掛かることは避けたい。大同契を解散する考えはまったくないチョン・ヨリブに対し「反逆者に陥れられるぞ」と暗に解散を要求する東人。「私は東人でも西人でもない。党派争いに巻き込むな」というチョン・ヨリブの答えに、東人派たちも「わからずやめ!」と言い捨てて立ち去る。
ヨリブの言葉を聞いて嬉しそうに笑うのはヨリブの友人であり同志である盲目の剣客ファン・ジョンハク(ファン・ジョンミン)、そしてそんなジョンハクを忌々しげに見るイ・モンハク(チャ・スンウォン)。「俺たちは倭軍を阻もう」と言う大同契発足時のメンバー、ジョンハク。「阻んだら次は我々が殺される」と新参加入のモンハク。モンハクは「先生、官僚を殺しましょう」とヨリブに提案するが、ジョンハクに「反乱でも起こす気か?」と問われる。モンハクは「大同(=平等)の世を築くためにはやむを得ない」と急進的な発言をする。モンハクとジョンハクの考えは永遠に平行線をたどるばかりだ。「ヨリブ、コイツをよく見張っておけ」という言葉を残してジョンハクが立ち去る----。
時は、壬辰倭乱(文禄の役:豊臣秀吉による1回目の朝鮮出兵)によって息の根が止まりかけて、民衆の生活は疲弊するばかりだった李氏朝鮮第14代宣祖25年(1592年)。宣祖下の李氏朝鮮は、最大の国難といっても過言ではない事態にも関わらず、朝廷内は東人派・西人派が派閥覇権争いを繰り広げることに終始し、引き続き迫る国難に対して何の打つ手も無く、ひたすら無能さを露わにするだけだった。
そんな中、両班出身だが宣祖に疎まれ地方に下ったチョン・ヨリブは、他国からの脅威にさえなす術を持たない無能な朝廷に頼ることなく、自らが倭軍と戦うために下層民を率いて民衆武装組織「大同契」を結成する。そしてその中には、設立時からのメンバーで志を同じくする同志であり、チョン・ヨリブの友人でもあり彼を師とも仰ぐ盲目の剣客ファン・ジョンハク(ファン・ジョンミン)や、王族の一員である父が妓生(芸妓)に産ませた庶子(私生児)だったため王族の血を引きながらもハニャン(漢陽)から追われて無念な日々を送っていたが、大同契の大同(=太平)という概念に惹かれ途中加入したイ・モンハク(チャ・スンウォン)の姿があった。
大同契は官軍に代わって倭軍と対抗するが、何者かの誣告(陥れることを目的として訴えること)により反逆組織とされ、朝廷に解散を命じられる。大同契の主導者チョン・ヨリブは責めを負って自害するが、その亡骸は朝廷によって掘り起こされ、大逆罪人として首を切り落とされ、子や連帯者たちも処刑される。ヨリブに非難されていた宣祖(キム・チャンワン)は、ヨリブの体を八つ裂きにし、国中に晒して見せしめにせよと命令する。
主導者を失った大同契を新たに率いたイ・モンハクはチョン・ヨリブを大逆罪人に陥れた朝廷の要職者たちの暗殺を開始。一方、ジョンハクは晒し首にされていたヨリブの首を取り返す。そして時を同じくして2人は、朝廷内の筆頭権力者であり、チョン・ヨリブに大同契の解散を迫り、民衆にチョン・ヨリブを大反逆人だと公布した西人派ハン・シンギュン大監邸へ向かう。
ハン大監邸では一族が集まり法事が執り行われている。そこに無作法に祭壇に近づく一人の若者。ハン大監が芸妓に産ませた庶子(私生児)ハン・ギョンジュ(ペク·ソンヒョン)だ。庶子であるという理由で兄弟たちから蔑まれ、袋叩きにされ、一族の面汚しと呼ばれるギョンジュは、己の出自による葛藤に押しつぶされて無謀な振る舞いを繰り返している。ひっそりとギョンジュを助けに来た父ハン大監に「周囲から父が王の言いなり(犬)だと揶揄され、付いたあだ名がギョンジャ(犬の子)、犬畜生だ!」と怒りをぶつけるが、父ハン大監は「庶子が犬畜生なら、お前は犬畜生だ。意気地なしめ!この国の王も庶子だ。一生夢も無く生きるつもりか?」と言って部屋を出て行く。
ハン大監邸にイ・モンハク率いる大同契一団が突入し、法事会場は一転、殺戮の場と化す。ハン大監の喉元に剣を突きつけ「貴様はチョン・ヨリブ先生を逆賊に仕立てた。大同契が成敗する」とモンハク。「東人派の差し金か?」と問うハン大監に、間髪いれずに剣を突き刺したモンハクは「私は東人でも西人でもない!」と言ってトドメを刺し、父を守ろうとした息子たちも次々に抹殺される。法事に参加できず部屋に縛られ閉じ込められていたギョンジャは、やっと縄を抜け一歩遅れて父の亡骸にすがりつく。そしてもう一人、ハン大監の嫡男ハン・ピルジュ(イ・へヨン)は床下に身を潜めて、父の体から滴る血を浴びながら体を震わせていた。
「おい!モンハク!」立ち去ろうとしたモンハクを呼び止める声ジョンハクだ。笑ながら「いつから大同契がお前のものになったんだ?」とジョンハク。「今後、大同契は表街道を歩くことにしました」と答えるモンハクに、「剣士なら剣の後ろにいるもんだろ?」とジョンハク。そしてジョンハクは最大の疑問を投げつける。「誰がヨリブを殺したんだ?」、「わかってるでしょう?」、「ヨリブが死んだ時お前はどこにいた?自害じゃないだろ?」、かすかに揺れるモンハクのまなざし。「…もう二度と会いたくないですね。今度会った時は、私の剣で殺しますよ」そう言って立ち去るモンハク。そのとき「待てー!!」とギョンジャの声が響く。無謀にモンハクに切りかかったギョンジャは、かすり傷一つモンハクに付けられぬまま、一突きにされてしまう。何の迷いも無く子供に剣を突き立てるモンハクの気配を感じたジョンハクは友チョン・ヨリブが目指した大同契の精神を取り戻すためある決意を固める。
またしても朝廷を揺るがす問題が勃発する。豊臣秀吉が明に攻め入るという情報が入ったのだ。明に攻め入るには朝鮮の地を通過しなければならない、すなわち再び倭軍との戦が始まるのは確実だった。しかし、この期に及んでも東人派と西人派は対立し、一方の見解に同意したくないという幼稚な理由で来る、来ないの論戦を始める始末だ。その上、王の機嫌が悪くなるという理由で、今や真の反乱分子と化した大同契の話も黙殺する。
その頃、大同契内でもイ・モンハクの“大同契の表街道化”に反意を唱える古参メンバーが出る。モンハクは、覇権争いに終始し倭軍の侵略に対抗する術さえ無い朝廷を倒し、腐りきった世の中を覆して自らが新たな王になるという野望を隠しつつ、民衆の心を味方につけるために官庁を襲撃することを提案したのだ。しかし、創立期からのメンバーは大同契の本来の目的は倭軍に対抗するためだと言う。「腐った朝廷では倭軍を倒せません」、「だから俺たちが国を救うんだ!」、「救って…その後どうなりますか?王と西人に皆殺しにされる?チョン・ヨリブ先生が謀反の罪を着せらたのを見なかったのか!?」と声を荒げるモンハク。古参「つまり…反乱を起こすと言ってるのか!!」、次の瞬間、古参の喉元に剣を突きつけたモンハクは「やるのか?やらないのか?」と冷淡な視線を向け、返事を待たずに喉元を掻き切る。こうしてモンハク率いる大同契は本格的に逆賊としての道を歩むことになる。
ジョンハクの手当で一命を取り留めたギョンジャは父ハン大監の葬儀に行き酒を供える。ギョンジャの兄である嫡子は「二度と家に来るな」と言う。ギョンジャは、モンハクを捕まえると宣言。自分が捕まえるという兄に「床下に隠れていたくせに。一生法事でもして生きろ」と言葉を投げて生家を去る。ギョンジャは父の復讐のため、ジョンハクはチョン・ヨリブの復讐と大同契の進むべき道を正すため、イ・モンハクを殺すという共通の目的から行動を共にするようになる。そしてギョンジャは初めて、この盲目のとぼけた変人が優れた剣客であることを知り弟子入りを申し出るが、「剣術を習えば早死にする」と言ってジョンハクは相手にしない。
モンハクには逆賊として3千両という懸賞金が掛けられる。ジョンハクはモンハクの居所の手がかりを探して、モンハクの長年の恋人である妓生ペクチ(ハン・ジヘ)のいる妓楼を訪ねるが、そこにはモンハクに捨てられ哀しく歌うペクチの姿があった。「イ・モンハクはどこだ!」と問い詰めるギョンジャ、毅然した態度だったペクチが涙を浮かべて「ここよ!」と胸を叩く。そして「殺してくれる?自信あるの?」とギョンジャに問いかける。動揺するギョンジャ。その頃、モンハクは官庁を襲い、ついに宣祖もイ・モンハクの反乱を知ることとなり、朝廷はハン大監の嫡男(ギョンジャの兄)を差し向けて本格的に大同契の捕縛を開始する。
そしてついに倭軍が15万の大軍で釜山に上陸する。この期に及んで揉める東人と西人。この期を朝廷陥落の好機と考えたイ・モンハクは最終仕上げの手始めとして大同契討捕縛の捕盗庁が置かれている竜仁へと向かう。そしてそこでモンハクとジョンハクは剣を交えることになる。王さえも国を捨てて王宮を離れようとする絶体絶命の瞬間。モンハクの刃の先は無能な王・王宮に向かい、ギョンジャもモンハクを追って宮殿へと向かう。
砲火が押し寄せた王のいない空っぽの宮殿で出会った彼ら。
戦争と反乱の渦の中で、この世の果てまで駆け抜けた彼らの運命の対決が始まる。
【感想】
ジソビがイ・ジュニク監督の新作映画『思悼(サド)』にカメオ出演ということで…
というわけではないですが(笑) すみません、書いていませんでした『雲を抜けた月のように』。
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イ・ジュニョク監督作品は、
現代劇にしても史劇にしても、いわゆる世の中の弱者に光を当てるのが特徴のようです。
『黄山ケ原』は、歴史の表舞台で有名な武将たちのいざこざに翻弄される部下・兵士の話。
『王の男』は、王の身勝手に翻弄される男寺党(ナムサダン:旅回りの芸人)の話。
『ラジオスター』は、過去の栄光が忘れられない今や落ちぶれたロックスターの話。
『楽しき人生』は、今やただ落ちぶれた中年オヤジたちが再び夢を見る話。
『あなたは遠いところに』は、ベトナム出兵の夫にただ会うために戦地へ向かう妻の話。
制作年順は飛びますが、
『ソウォン/願い』は、性暴行の被害少女とその家族の絆の話。
そして…『雲を抜けた月のように』は、
権力者の政治倫理に振り回されて逆賊とされた男たちの話、です。
【ストーリー】書きすぎましたか?(笑)
これを読むと、イ・モンハクが邪悪な男のようでしょう?
本当はオイラが映画で感じ取ったイ・モンハクの哀愁を全部込めたいんですけども!
それはオイラ個人の思いなのでね…ご覧になって感じていただければと思います^^
映画を観れば…予告編の「私は逆賊だ」の箇所はズドーーンと来るんですよT-T)
この映画の中心となるのは、簡単な言葉で言えば…日陰の身です。
平等な世の中を夢見る盲目の剣客、ファン・ジョンハク(ファン・ジョンミン)。
王族出身の反乱軍首謀者、イ・モンハク(チャ・スンウォン)。
妓生の母と権力者の父を持つ庶子、ギョンジャ(ペク・ソンヒョン)。
恋人の野望のために捨てられた妓生(芸者)、ペクチ(ハン・ジヘ)。
そして、大同契を形成する下層民たちも李氏朝鮮王朝の統制下で疲弊する者たちですし、
大きく言えば、国全体・国民全体が暗雲立ち込める闇夜の中にいる状態です。
世の中を守りたいジョンハク、世の中を変えたいモンハク。
この映画はそれぞれの想いが言葉で表されてはいません。
それぞれの想いを背負って剣を交える時…言葉以上の感情のぶつかり合いを感じます。
そのなかでも…まぁ、チャ・スンウォン贔屓目と言われようが何しようが…
大義と自らの欲望の狭間で葛藤するモンハクの哀愁は…オイラの心に響きました。
でも、この映画を観終わった時に感じる余韻は、とても複雑です。。。
演技面で言えば…
兄の素晴らしさは言わずもがな、なんですが(笑)
ファン・ジョンミン、さすがですよねぇ。
兄の演技幅がスゴイのは、それも言わずもがな、ですけども(笑)
ファン・ジョンミンも…何を演じても…その映画で要求されている役にピッタリはまる役者ですよね。
この映画の盲人剣客という役どころ、完全に座頭市へのオマージュを感じるわけですが、
人情に厚くユーモラスさもありながら締めるところは締める演技…惚れ惚れします。
惚れ惚れしますが、兄のカリスマっぷりも…背筋ゾクゾクもんですよ、はい。
野望のために鬼と化すべきモンハクですが、完全に鬼にはなりきれない部分を抱えているわけです。
自分自身も、弱者であるから。
大同(天下太平)という志は同じでありながらも、その方法がモンハクとジョンハクでは違って。
この作品、感情構成が非常に複雑だと思います。
ジョンハクの愛国心と復讐心、モンハクの大義と野望、
ギョンジャのモンハクへの復讐心とペクチへの愛情、ペクチのモンハクへの思慕と憎しみ。
で、根底では…朝鮮という国への…愛と憎悪というか、ね。
観終わった後に感じる余韻が複雑な原因は、そこなんでしょうね。
そして、エンディングクレジットの最後のシーンですよ。
アレがなかったら、もうね…観終わった後の感情が虚しすぎてやってられないと思います。
オイラはあのシーンで救われました。泣きながらね。。。
おススメですので、
まだ未鑑賞でしたら、お時間が有れば見てみてください^^
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