艮斎先生研究室

安積国造神社社家の三男に生まれた安積艮斎先生に関して調べております。

洋外紀略出版の反響

3月、安積艮斎『洋外紀略』の訳注書を明出版社から出版したが、各方面でご紹介をいただいているので、御礼かたがたここに列挙したい。

ロック詩人・辻元よしふみのブログ・・・

2017年3月21日 (火) 『洋外紀略』(安積艮斎)現代語訳が刊行されました!このたび、明徳出版社から『洋外紀略』(安積艮斎)が刊行されました。原書は幕末期に活躍した大学者、安積艮斎(あさか・ごんさい)が書いた本です。安積艮斉はこの時期で最も影響力のあった学者で、弟子には三菱グループの創始者・岩崎弥太郎、悲劇の幕臣として有名な小栗上野介、新選組の原型を組織した清河八郎、そしてあの吉田松陰など錚々たる人たちがいます。さらに、その松陰の門下生に高杉晋作や久坂玄瑞、伊藤博文、山縣有朋、品川弥二郎らがいたわけで、いわば幕末の志士たちのゴッドファーザーのような人物です。その艮斎さんが、当時としては異色の、海外諸国の事情を詳細にまとめ、国防の重要性を説いた一冊です。江戸にいてナポレオン戦争のこともアヘン戦争の経過も把握していた艮斎先生はすごい! 本書の名は森鴎外の代表作『渋江抽斉』にも出てくるぐらいで、当時において著名な本だったのですが、このほど、その艮斎さんの一族の末裔である安藤智重さんが原書の漢文を読み下し、現代語訳を完成させた次第です。大変な偉業です。なお、わたくしは僭越ながら帯文を書いております。こんな感じです。

「試みに鶏卵を机に卓(た)てんことを請う」
艮斎さんは、ナポレオンもピョートル大帝も、「コロンブスの卵」の話までも、知っていた。黒船が来航する前、もう世界を見通していた日本人が、幕末の江戸にいたのである! 

戦史・軍装史研究家 辻元よしふみ

本書には、あのコロンブスの有名な「卵を立てる」逸話も紹介されております。幕末においてこんなことまで知っていた人がいた。驚きですね。【基本データ】『洋外紀略』(ようがい・きりゃく)安積艮斎 安藤智重 訳注 村山吉廣 監修 定価 2,916 円 (本体2,700 円+税) ISBN 978-4-89619-946-8 発売日 2017/03

以上が辻元氏。大学時代同じサークルに所属。先輩である。

福島民友新聞・・・

「洋外紀略 安積艮斎」を出版 儒家的思考で国防論 4年かけ訳出 江戸時代後期の儒学者安積艮斎を研究している郡山市の安積国造神社宮司の安藤智重さんは20日までに、「洋外紀略 安積艮斎」(訳注 明徳出版社)を出版した。「洋外紀略」は西洋列強の世界侵略が日本に及ぼうとしていた時代に、艮斎が学識に基づいて書いた国防論。国家の重大な危機を認識していた艮斎は、儒家的な合理思考で、国防を鋭意検討した。上巻は世界11の大国の歴史地理について、軍事に重きを置いて叙述。中巻はコロンブス・ワシントンなどの小伝と通商論、宗教論を収めた。下巻は国防論についてまとめた。安藤さんは早大、鹿児島大、県立図書館、安積国造神社が所蔵する写本5種を校合して本文を確定。4年がかりで訳出し、多くの人々が艮斎の思想を学んでもらう内容とした。原文、訓読文、現代文を掲載している。安藤さんは、「艮斎の思想は現代の国防論に直結している。今の日本に何が大切なのかを多くの人々に知ってもらいたい」と話している。

福島民報・・・

「洋外紀略 安積艮斎」を発刊 国防論を現代語訳 郡山市の安積国造神社宮司の安藤智重さんは、幕末期を中心に活躍した郡山出身の儒学者安積艮斎(一七九一〜一八六〇)の国防論「洋外紀略」を現代語訳し、「洋外紀略 安積艮斎」として明徳出版社から発刊した。「洋外紀略」は、艮斎が昌平坂学問所教授に就任する二年前の五十八歳の時の作で、写本の形で各地の図書館などに伝存している。西洋列強の世界侵略が日本に及ぼうとしていた幕末に広遠な知識に基づいて書かれ、西洋列強との圧倒的な軍事力の差を認めつつも、決して希望を失わずに儒家的な合理思考で国防を検討している。安藤さんは宮司の傍ら約四年がかりで訳し、早稲田大の村山吉廣名誉教授が監修した。「洋外紀略 安積艮斎」は全三百五十蓮2然覆脇鸚藜敬官漾弊琶漫法0惰さんは平成二十六年に「艮斎文略 訳注」で第三十七回福島民報出版文化賞を受賞した。「現在の世界情勢を見極め、日本の在り方を深く考える手掛かりとなり得る論考だと思う」と話している。

産経抄(2017.4.2)・・・

幕末の儒学者、安積艮斎の国防論『洋外紀略』は、「徳川の平和」による安穏に慣れた民たちが、西洋列強という「素早くて荒い虎狼(ころう)の異民族」に対抗することの困難を憂えた上で、幕府にこう説いている。「沿海の要害の地にはりつき、砲台を並べ、のろし台を設け、士気を鼓舞し…」。北朝鮮や中国の脅威にさらされる今で言えば、ミサイル防衛システムに当たろうか。明治維新の功労者であり、事実上の薩摩藩主だった島津久光は同書全文を書き写したという。先人たちの危機感のほどがうかがえる。新幹線の車中で先日、手に取った雑誌『ウェッジ』4月号の巻頭記事は、「“四面『核』歌”状態の日本が生き残る道」という題だった。記事中、中国が日本を対象とできる中距離ミサイルを数百基保有していることが指摘されていた。自民党は先月30日、敵基地攻撃能力を保有するための検討を求める提言をまとめ、安倍晋三首相に提出した。敵基地攻撃能力の保有は合憲であり、座して自滅を待たないためには当然の検討だろう。ところが、この提言に早速かみついた人たちがいる。「平和国家の礎がガラガラと音を立てて崩れているように見え、非常に懸念している」。民進党の蓮舫代表はこう眉をひそめ、安住淳代表代行は早くも国会戦術に言及した。「徹底的に反対した方がいい」。安積が聞いたらどう思うだろうか。(以下略)

洋学史学会 会員からの推薦図書・・・

洋外紀略 安積艮斎
 安積艮斎(あさかごんさい 1790〜1860)をご存知の方も多くいらっしゃると思います。奥州二本松藩の郡山の安積国造神社の神職の家に生まれ、向学心から江戸に出奔し、林家に学び、幕府儒者・昌平黌教授となりました。また漢詩で名前をあげた人物でもあります。蘭学史・洋学史と関係あるのか、と思われるでしょうが、最近、艮斎の世界史的知識をもとにした海防論『洋外紀略』が出版されました(安藤智重訳注『洋外紀略』2017年3月、350ページ、2700円+税)。現代語訳文・読み下し文、語釈、原文(漢文)の構成で、読みやすいです。全三巻で、巻一は、ロシア・トルコ・ドイツ・スペイン・ポルトガル・フランス・イギリス・オランダ・シャム・ニューヨーク・コロンビアの比較的簡略な歴史叙述であり、巻二はコロンブス、ワシントン、キンスベルゲン(オランダの海軍軍人、英蘭戦争で活躍)の伝記、互市(交易)やキリスト教に関する論評、巻三は、艮斎の海防論(当時として幕府に物申している、献策)です。成立は、嘉永元年(1848)で、もちろん、いわゆる「鎖国」時代当時の、情報的、思想的な限界はあります。確かに、最先端の海外情報は、長崎や北方から入ってきて、いわゆる蘭学者が入手し、分析・考察しましたが(拙稿『江戸のナポレオン伝説』、同『江戸の海外情報ネットワーク』)、儒学の大家が、どの程度海外情報を知っていたのかは、もっと知られてもいいと思います。なぜなら、江戸時代は、儒者のほうが権力に近く、各種情報に接しやすかったようですし、権力に献策するのも比較的容易だったからです(ただ、私見では、蘭学者も儒学を学んでおり、儒学だ、蘭学だと区別することもどうかなと思っています)。つまり政策決定にある程度は関与していた点で、もっと知られてもいいと思います。もちろん、これまでにもこうした点を解明した、前田勉『近世日本の儒学と兵学』、眞壁仁『江戸後期の学問と政治』などはありますし、知られていることではありますが、艮斎の『洋外紀略』はもっと知られてもよいと思います。さらにいえば、艮斎の弟子には、思いつくままにあげると、三島中州、小栗忠順、木村喜毅、秋月悌次郎、長井雅樂、木戸孝允、楫取素彦、吉田松陰、高杉晋作、清河八郎、吉田東洋、谷干城、岩崎弥太郎、前島密、中村敬宇、箕作麟祥、福地源一郎、神田幸平、宇田川興斎、佐藤尚中など。いわゆる洋学者もかなりいます。幕末維新史や日本の近代化に名前の出てくるような人々ばかりです。そうした点でも、『洋外紀略』の現代語訳文や読み下し文の出版はうれしい限りです。お勧めしたい一冊です。

文章の最後に、「東洋大学文学部教授岩下哲典」とご署名がある。岩下先生は高名な歴史学者で、専門は幕末維新史(情報活動史)。ご著作『予告されていたペリー来航と幕末情報戦争』等。


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