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「生と死の結界である二上山に抱かれる當麻寺には、浄土にまつわる数多くの物語がある。 物語はフィクションである。 しかし、様々な理論や学説や思想などが古びても、物語を必要とする人間の心は、永遠に変わらない。 浄土の物語を紡ぐこの寺が、千四百年にわたって庶民によって支えられてきた秘密を解く鍵は、 ここにあると思う」(五木寛之「百寺巡礼」第1巻奈良) 中将姫が一夜で織った蓮糸の曼荼羅を本尊とすることで知られる当麻寺は、二上山(517)のこんもりした 樹影を背景として静かな佇まいを見せていた。 修理工事中で素屋根が架けられた仁王門を過ぎ、境内に入る。 寺伝によれば、用明天皇の第3皇子麻呂子親王が異母兄の聖徳太子に薦められて、推古天皇20年(612) 河内味曾路(ミソロ 現大阪府太子町)に創建した万法蔵院に始まる。 天武天皇9年(687)麻呂子の孫・当麻真人国見(タイマノマヒトクニミ)が夢告によって役行者が修行した故地である 現在地に移し、この地方の豪族でもあった当麻氏の氏寺として伽藍整備した。 さらに、百済の恵灌僧正を導師として諸堂諸仏の供養を修し、寺号を当麻寺としたと伝えられる。 金堂、講堂が南北一直線に並びその西に本堂、金堂の南に、東西2つの三重塔が建つが、南北一直線に対 して左右対称ではない独特の伽藍配置をしていた。 なお、古代建立された東西両塔が完備しているのは全国でも当麻寺だけだそうだ。 宗旨としては始めは、南都六宗の一つ・三論宗であったが、弘仁14年(823)弘法大師が参籠してから真言宗 に替わった。さらに、鎌倉時代には浄土宗の霊場ともなり、南北朝時代に知恩院の僧が当麻寺に往生院 (奥院)を建立して浄土宗が加わり、以後現在まで、真言・浄土の二宗を併せる。 境内案内図 向かって左側に建つ。 梵鐘は白鳳時代のもので 我が国最古のもので国宝 仁王門(東大門)から本堂に向かう途中にあった。 中将姫が植えた松とか。 現在は枯れ、株だけである。 金堂・本堂・講堂 向かって左(南)が金堂、中央が本堂(曼荼羅堂)、右(北)が講堂 天平時代建立された千手堂、永暦2年(1161)旧堂を取り込む形で拡張。 現在の内陣が旧堂部分。国宝 本尊 文亀曼荼羅 天平宝字7年(763)中将姫が蓮糸で織ったと伝えられる蓮糸曼荼羅(国宝)を文亀年間(1501〜1504)転写したもの。 図柄は観無量寿経に説かれている西方浄土を描いたもの(浄土変相図) 約4m四方あり、保護の為か、網で覆ってあった上、近くに寄れなかったので、中央に阿弥陀如来、その左右に観音菩薩、勢至菩薩が描かれていることは分ったが、それ以上の細かい点はよく分らなかった。 曼荼羅を納める厨子と須弥壇は美しい螺鈿細工で国宝 他に、織姫観音と呼ばれる十一面観音像(く弘仁時代 重文)や中将姫自作と伝わる中将姫29歳像、恵心僧都作と伝えられる来迎仏等が安置してあり、身近に拝観できた。 鎌倉時代建立 重文 本尊阿弥陀如来坐像(平安時代 重文) 重文5体を含む平安・鎌倉時代の仏が安置してあった。 金堂は鎌倉時代建立 重文 元本尊の弥勒仏坐像(白鳳時代 塑像 国宝)を中心に 重文の四天王(多聞天鎌倉時代の木像、他は白鳳時代の塑像) と不動明王(平安時代の木像)が安置してあった。 東塔と共に天平時代建立の三重塔 国宝 法輪は八輪で東西両塔が現存するのは当麻寺のみ。 金堂の東側に建つ。 重文 白鳳時代作 松香石で作られた物 中将姫について、寺の境内の説明板などによれば、次の通りである。 「中将姫は奈良時代の右大臣藤原豊成の娘。5歳の時幼くして母を失い、継母に嫌われ、雲雀山に捨てら れた。 その後、父・豊成と再会し、一度は都に戻ったが、世をはかなんだ姫の願いにより当麻寺に入った。 称讃浄土経の一千巻の写経を達成し、17歳で中将法如として仏門に入った。 姫は、生身の弥陀を拝みたいと、毎日毎夜念じていると霊感が得られ、曼荼羅を織ることを決意した。 百駄の蓮茎を集めて蓮糸を繰り、これを井戸にひたすと糸は5色に染まった。 そして、その蓮糸を一夜にして1丈5尺(約4m)四方もの阿弥陀浄土図(蓮糸曼荼羅)を織り上げた。 姫が29歳の春、雲間から一条の光明と共に阿弥陀如来を始めとする25菩薩が来迎し、姫は西方浄土へ向か われたと伝えられている。 当麻寺では、毎年5月14日に練供養が行われるが、その伝承を再現したものである。」 勿論、中将姫については、あくまで伝承の世界であり、種々のバリエーションが伝わっている。 また、当麻寺に伝わる曼荼羅は、年月経過や浄土教の広まりと共に、神秘化し、極楽往生を願う中将姫 が、仏の力を得て、一夜にして織った蓮糸曼荼羅となってしまった。 科学の力によると、蓮糸曼荼羅と言われるものは勿論蓮糸でない。絹と麻の綴れ織りという。
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2011年10月08日
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