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月前の菊

能楽堂二階和室にある床の間のお軸を、
師匠は毎月架けかえられます。

押入れの中に積んであるお軸たちは
飾るために買い集められたものではなく
ひとつひとつに由緒や思い出のある
お軸たちです。

先月の鮮やかな「萩に鳥」のお軸は
師匠のお母様の作品でした。
(103才現役のお母様‥)

今日架けかえられたお軸、
毎年目にしてはいるのに
じっくりとその内容を伺うのは
初めてのことでした。

天を群青の雲、地を金茶の山麓で描き
全体に美しい金霞をかけた地紙に、

澄んだ黒色の、繊細ながら豊かな筆跡で


「月前の菊」  光澤

か気う都す(かげうつす)

月のかつらの(つきのかつらの)

枝なして(えだなして)

手に登流ば可り(てにとるばかり)

見遊る 白菊(みゆる しらぎく)


漆黒の夜空に煌々と光る白い月、
その光をうけて輝く白菊が
目に浮かびます。

どんな白菊でしょうね。
和菓子のようなまあるいかわいい白菊が、
たわわに咲いているのかもしれない。

月の天女が頭にかざすような、
大輪の高貴な白菊かもしれない。

こんな美しい光景を
愛でる日常‥
失われつつある日本の季節感への
美意識を、今日は特別大切に感じました。

玄象の琵琶

朝から能楽堂で師匠のお稽古の手伝い。

晩は9月24日湊川神社梅若能の
「玄象」の稽古で梅若六郎師が来られました。

「玄象」は素敵なお能です。

琵琶の奥義を極めるために
須磨から唐へ渡ろうとする藤原師長は
ところの老夫婦に一夜の宿を借りました。

師長に琵琶の演奏を所望する老爺。
妙なる音色に聴き入る折節、
村雨が降って演奏をとどめます。

老夫婦は貧しい小屋の屋根板に、
「とま」を敷きひろげます。

師長さまの演奏される琵琶の調子はオウシキ。
(オウシキ:雅楽の調子で低めの音色)
板屋根を叩く村雨の音はバンシキ。
(バンシキ:雅楽の調子で高い音色)
とまを敷いて、雨音もオウシキとなり、
琵琶の音色とひとつになりました。
さあさあ、演奏をお続けください。

なんと風雅な侘人でありましょう。
こんな田舎の老人でさえ
このような風雅な心を持つこの国を
離れる必要がないではないか。

なんだか鼻、たかだか〜となりますネ。

ただしこのおふたりは、村上天皇と梨壺女御、
いにしへ世に名高い芸術の守護神のような
貴人の化身だったのですが‥

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