北新体制、多難な構築 「重要空白ポスト」どう継承 ■党総書記/国防委員長/軍最高司令官 金正日総書記の死去により、北朝鮮の最高指導者が持ついくつかの重要ポストが空席とな った。金総書記の後継者、金正恩氏はこれらの地位を引き継いで、形の上でも正式に金正 日体制を後継することになる。 空席のうち、特に重要なのは国防委員長、朝鮮労働党総書記、朝鮮人民軍最高司令官だ。 国防委員会は国家主権の最高軍事指導機関。頂点に立つ国防委員長は国防全般を指導し、 すべての武力を統率、指揮する。人民武力部や傘下に位置する人民軍も、その指導に従う。 国防委員長は2009年の憲法改正で「最高領導者」とされ、国の最高指導者に位置づけ られた。 党総書記は朝鮮労働党のトップで、党中央委員会傘下の中央軍事委員会が人民軍を指揮す る。 金正日総書記は金日成主席存命中の1991年、軍の最高司令官に、93年、国防委員長 に選ばれた。さらに、98年の最高人民会議で国防委員長に改めて「推戴(すいたい)」 された。総書記には、94年の金日成主席の死去後、3年あまりの“服喪期間”を経て、 推戴されるかたちで選ばれた。 ◆既成事実化進む 金正恩氏は金総書記の死後“不世出の統帥者”(朝鮮中央通信)と呼ばれ、後継者である ことの既成事実化がすでに北朝鮮国内では進められている。いずれ国防委員長や総書記な ど“空白の重要ポスト”を引き継ぐことが予想される。 ただ、金正恩氏が軍や党で持つ肩書は現時点で、人民軍大将と党中央軍事委員会副委員長 ぐらい。これらは、金正恩氏が公式に登場した昨年につけられた。 ◆超法規的方法も 金正日総書記は、80年の党大会で公式デビューしており、その後17年をかけ段階的に 軍最高司令官、国防委員長、総書記になった。亡命者らの話によれば、軍内部では「軍隊 経験もないのに最高司令官とは」との批判もあったという。 また、総書記は本来、党大会で選ばれ、国防委員長は最高人民会議で選ばれるはずだが、 金正日総書記は「推戴」や「推挙」という超法規的なかたちで就任した。憲法の中には、 金総書記の肩書を正当化するために改正されたとみられるものが少なくない。 それでも金総書記の場合、時間をかけ後継基盤を作った。金正恩氏は公式に登場して1年 あまり。しかも父の死に伴う世襲の時点での肩書にも、金総書記とは差がありすぎる。 重要ポストの後継について北朝鮮では、正式な手続きを経ない超法規的な方法が“常識化” しており、金正恩氏も父親にならい国防委員長や総書記に推戴されるかもしれない。問題 は、短期間での後継就任が北朝鮮でどう受け止められるか。また、金正恩氏がそれらの重 責を背負っていけるかどうかだ。(名村隆寛) (産経新聞 2011/12/21) 北朝鮮の新体制については、これから徐々に明らかになっていくと 思われますが、比較的はっきりと判っている事が一つあります。 日本にとっては非常に残念ではありますが、拉致問題の解決が望み 薄となったというのがそれです。 政治家や評論家の中には、金正日の死が拉致問題解決の大きな機会 になると言っている人もいますが、北朝鮮の金政権を全く誤解して いるとしか言い様がないのです。 金正恩が、どの様にリーダーシップを発揮していくかは、未知数で あるにせよ、その政権の正当性は、金正日の息子であり、後継者と して指名されたからに他なりません。つまり、金正恩は金正日政権 の政策を引き継ぐ事でしか正当性を確立する事が出来ません。 金正日は、訪朝した小泉首相に対し拉致事件が北朝鮮による事を認 め謝罪しましたが、これは拉致事件が、彼が承認して、行わせた行 為であった事と、金正日が拉致に関係する部門を黙らせるだけの権 力を持っていたからに他なりません。もし、拉致が金日成が行った 行為であれば、金正日であっても、それを謝罪する様な事はできな かったに違いありません。 つまり金正日以上に指導者としての政権基盤の弱い金正恩に、先代 の指導者の行為を否定するような政策転換ができる筈がないのです。 金正日は、拉致問題を既に解決済の問題としましたが、金正恩がそ の立場を変更する為には、金正日以上に権力基盤を確立する事が必 要です。その為には、金正日が求めて止まなかった対米直接交渉に よる体制存続保障の確保や金正日と金日成が成し得なかった北朝鮮 経済の再生を実現する必要があるでしょう。 北朝鮮の経済再生を実現する為には、ある程度の経済的な自由化や 市場化を実現する必要があります。しかし独裁体制が体制の危機を 迎えるのは、こういったある程度の自由化を許容した時なのです。 そう考えれば、金正恩が拉致事件を解決する為には、北朝鮮が体制 崩壊の危機を克服して社会主義市場経済の実現に軟着陸する事が必 要という事になります。これは、北朝鮮を崩壊させるよりは容易か も知れませんが、北朝鮮にとってシジフォス的な巨大な努力を必要 とするに違いありません。拉致事件を解決するにはそれ程大きな政 策転換が必要なのです。 |
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