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「あんたは私の子供なんだってね。職員が言っていたよ」
母はさらりと言う。
「そうだよ」
私は平静に答える。
「姉さんだと思っていたよ」
「あんたは職員と話をしないって言っていたよ」
本当の話かどうかは分からない。
それでもそうなのと答える。
「私は身分が高いんだよ」
「とても、巳代治は私と結婚出来るような身分じゃなかった」
母はこの頃はこの話だ。
母の結婚へのコンプレックスは父との身分の違いだった。
それが今実際は自分が由緒正しい家の出だという妄想を生んでいる。
父方はかなり裕福な家だった。
いつも母を見下げていた。
「あんたは身分が低いから何も似合わない」
母にそう言った叔母の言葉をはっきり私は覚えている。
「私の親は大久保彦左衛門だよ」
母は平気な顔で言う。
大久保彦左衛門は何百年も前に生きた人なのに。
あんなに好きだった祖父を忘れている。
私は幼子のように確認する。
「マー坊って知っている」
母は笑顔になる。
「マー坊、会いたいね」
この部分だけは母の記憶がはっきりしている。
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お母さんは、身分違いのことで苦労されたのですね。
2012/4/22(日) 午後 6:11 [ たこ焼き ]
実際に低い人ほど、身分がどうのこうのと言いますね。
父が、こちらは私が物心ついた頃からなので40-50代の頃からなのですが、二言目には「武士の心得」「侍は」だのなんだのとわけのわからない事を言うので、「本当に士族の出ならともかく、◎◎の百姓だったんだから、何言ってもおかしいって」と言って殴られた事があります。
2012/4/22(日) 午後 6:34
現実から逃避したくなると妄想に変わったりするようですね。自分の娘を姉さんと思っていた、冗談も休み休み言ってよ、と言いたくなるけど、これが現実のおかぁ様の姿なのよね、切ないねー
2012/4/22(日) 午後 7:19
おはようございます。昔は身分のこと言われましたね。それが心に残っているんですね。
2012/4/23(月) 午前 6:30
お母さまも貴女もお元気そうで安心しました(^^。
身分?私も婚家で苦労しましたが色々教えて頂き助かった事も多かったです だから今は感謝です。
姑は薩摩の家老の血筋云々…行儀作法には厳しかったです。
2012/4/23(月) 午前 10:27
「身分」、この言葉は日常的にはあまり聞かなくなりましたねぇ。それだけ今の日本人が「身分」にこだわらなくなった、いうことでしょうねぇ。いいことです。
2012/4/24(火) 午前 7:24
たこ焼きさん
義父もよく自分の実家は名家だと自慢してました。
2012/4/25(水) 午後 4:25
こみちさん
姉の夫は庄屋だと言っていつも実家を馬鹿にしていました。
と言うか言葉の虐待でした。
2012/4/25(水) 午後 4:27
ちえこさん
私を娘だと分からなくなった母は後追いをしなくなりました。
2012/4/25(水) 午後 4:28
みゆきさん
男の人はたいした家柄でもないのに自慢するんでしょうね。
まあ言った者勝ちではあります。
事実は確かめられませんから。
2012/4/25(水) 午後 4:29
みねさん
今は人の価値はお金です。
いいかどうかは分かりません。
2012/4/25(水) 午後 4:30