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「貯金通帳を返して!」
母は顔を見るなり言った。
「何に使うの?」
私は母の言葉の強さに驚きながら答えた。
「孫が30人遊びに来るんだよ」
「もてなしてやりたいからね」
孫は8人しかいない。
「子供は3人、孫は30人いるよ」
母はそれでも繰り返す。
「3人の名前が言える?」
誰が抜けているのか。
「えーと、元に、美代子に正志」
やはり抜けているのは私だった。
「美代子は赤ちゃんを産んでね」
母は話し続ける。
「名前を美代子と自分と同じ名をつけたんだよ」
「あの子は大人しいから自分を忘れないでと言えなかったんだね」
私は耳を疑った。
「姉さんが大人しいの?」
聞き返した。
「大人しい子だった」
母は優しい目をしていた。
「あの子が懐かしい」
「姉さんはお母さんを蹴ったり踏んだりしたのよ」
「忘れたの?」
私はそう言わないではいられなかった。
姉の虐待を受けて母がどんなに心の傷を負ったか。
母の精神を正常に保つのに私がどれだけ苦労したか。
それなのに母は私を忘れている。
「そうだったかね」
「美代子は芯は強かったからね」
母の姉への憎しみは消えたように思える。
姉も母を恋しく思う日が訪れて欲しい。
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母にしてみれば 優しかったと思いたいんでしょう
その思いが強すぎたのかも知れませんね
2012/9/22(土) 午後 6:06
記憶ってあいまいですね。自分で作られていくのかな。
2012/9/23(日) 午前 5:24
お孫さんたちが小さかった頃の夢でも見られたのでしょうかねぇ。
2012/9/23(日) 午後 3:33 [ たこ焼き ]
ムサシさん
きっと思い込みが強すぎて姉を信じすぎたのでしょう。
2012/9/23(日) 午後 6:38
パークさん
多分思いたいように作られるんでしょうね。
2012/9/23(日) 午後 6:39
たこ焼きさん
最初の孫が出来たのは母が44歳の時でした。
今なら44歳って若いのにね。
2012/9/23(日) 午後 6:40
母も記憶が錯誤していたり、通帳を返してということが多くなりました。
私が使い込んで 母に自由に使わせないように言うのでたまりかねて返してあげました。
案の定、預けた事は覚えているのに返したことは忘れています。
返してもらったという書付を取っておいて正解でしたが それすら忘れて怪訝な顔をしていました。
しかも、すぐにしまい場所を忘れて管理できません。
でも・・・郵便局の局長さんにも事情を話してあるので、いざとなったら再発行をしてもらう覚悟で預けました。
お金の管理が出来なくなるのが一番困りますね。
2012/9/28(金) 午後 2:28
あぁちゃん
お金って年を取っても執着するんですね。
自分もああいう風にならなければいいがと思います。
2012/12/7(金) 午前 10:27