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退院してからしばらく経った頃だった。
一本の電話が有った。
声の主は女性。
暗い、重い声をしていた。
「おばちゃん元気?」
そう言って名前を名乗った。
電話の主は夫の友人の娘だった。
地獄から掛けているのかと思うくらい暗い声をしていた。
「元気だよ」
答えながら何故電話をしてきたのだろうかといぶかしく思った。
「頼みが有るの。おじちゃんの写真が欲しいの」
幽霊の様な声で話した。
何故夫の写真が欲しいのだろう?
「知り合いが写真占いをやるの」
「それでおじちゃんを占いたいの」
彼女は続ける。
「この頃、写真をあまり撮らないのよね」
「主人に伝えておくわ」
私は彼女の真意が分からないまま答える。
「お願いね」
彼女はほっとしたように答えた。
「皆さんお変わりない?」
私は聞いた。
彼女の家族と連絡が取れなくなってもう何年も経つ。
「母は死にました」
「○○さんはどうしているか知りません」
彼女が結婚するまで父親だった人を彼女は他人の様に話した。
そう父親は他人だった。
身重の母親を見かねて彼は結婚したのだ。
そして子供が結婚し孫も生まれた時に離婚を申し出た。
彼女には二人の妹がいたが。
父親が彼でない事は多分友人たちは知らない。
私は母親からそれを聞いた。
何故母親は私に話したのだろう?
そう思った瞬間に彼女が写真を欲しい理由が分かった。
夫が父親でないかと疑っている。
それで写真占いをするのだ。
「今度、遊びに来てよ」
私は動揺を隠した。
「はい」
彼女はもう暗い声ではなかった。
夫が帰るとその話をした。
「あなたが父親じゃないの?」
聞くと夫はもちろん否定した。
私は本心から聞いた訳ではない。
身重の恋人を見捨てる事が出来る男は滅多にいない。
捨てるのは家庭のある男だけだろう。
それでもその日の夫は妙にテンションが高かった。
彼女の母親とは過去に何か有ったのだろう。
それにしても彼女の戸籍上の父親は嘘をつき続けるべきだった。
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