100歳の母

母は元気に100歳になりました。

全体表示

[ リスト | 詳細 ]

記事検索
検索

夫の隠し子?

退院してからしばらく経った頃だった。
一本の電話が有った。
 
声の主は女性。
暗い、重い声をしていた。
 
「おばちゃん元気?」
そう言って名前を名乗った。
電話の主は夫の友人の娘だった。
 
地獄から掛けているのかと思うくらい暗い声をしていた。
 
「元気だよ」
答えながら何故電話をしてきたのだろうかといぶかしく思った。
 
「頼みが有るの。おじちゃんの写真が欲しいの」
幽霊の様な声で話した。
 
何故夫の写真が欲しいのだろう?
 
 
「知り合いが写真占いをやるの」
「それでおじちゃんを占いたいの」
彼女は続ける。
 
「この頃、写真をあまり撮らないのよね」
「主人に伝えておくわ」
私は彼女の真意が分からないまま答える。
 
「お願いね」
彼女はほっとしたように答えた。
 
「皆さんお変わりない?」
私は聞いた。
彼女の家族と連絡が取れなくなってもう何年も経つ。
 
「母は死にました」
「○○さんはどうしているか知りません」
 
彼女が結婚するまで父親だった人を彼女は他人の様に話した。
 
そう父親は他人だった。
 
身重の母親を見かねて彼は結婚したのだ。
そして子供が結婚し孫も生まれた時に離婚を申し出た。
 
彼女には二人の妹がいたが。
 
父親が彼でない事は多分友人たちは知らない。
私は母親からそれを聞いた。
 
何故母親は私に話したのだろう?
そう思った瞬間に彼女が写真を欲しい理由が分かった。
 
夫が父親でないかと疑っている。
それで写真占いをするのだ。
 
「今度、遊びに来てよ」
私は動揺を隠した。
 
「はい」
彼女はもう暗い声ではなかった。
 
夫が帰るとその話をした。
 
「あなたが父親じゃないの?」
聞くと夫はもちろん否定した。
 
私は本心から聞いた訳ではない。
身重の恋人を見捨てる事が出来る男は滅多にいない。
 
捨てるのは家庭のある男だけだろう。
 
それでもその日の夫は妙にテンションが高かった。
彼女の母親とは過去に何か有ったのだろう。
 
それにしても彼女の戸籍上の父親は嘘をつき続けるべきだった。
 
 
 
 
 
 
 

母への愛が醒める時

「マー坊は結婚しているの?」
母は聞く。
 
「してるよ」
私の返事を聞いて母は大きなため息をつく。
 
そして言う。
「やっぱりね。そうだったんだね」
 
この前次兄夫婦が来たのに嫁の事は忘れている。
 
「がっかりしたの?よっぽどマー坊が好きなのね」
私は皮肉を言う。
 
「末っ子だもの。可愛いよ!」
母は次兄を好きでたまらないらしい。
 
「私が末っ子よ」
忘れられた私は言わないではいられない。
 
母は怪訝そうな顔をして私の顔を覗き込んだ。
 
「あんなひどい目に遭わされても兄さんが好きなのね」
私は呆れてしまった。
 
「もう、マー坊がした事は忘れた」
「あの子が可愛いもの」
母はすらすらと口にした。
 
「ばあさんを頼む」
「お墓を建ててくれ」
父は死ぬ間際に次兄に頼んだ。
 
次兄は返事しなかった。
 
布団をかぶって泣いていた父の姿を今も思い出す。
 
次兄が母を引き取り、墓を建てれば何事もうまく運んだ。
 
 
結局私は次兄にはかなわない。
 
自分が母を何故見てきたか。
それは私が母に愛されたかったから。
 
でもそれは無駄な努力だった。
 
結婚してからも母は次兄への配慮が足りないといつも怒っていた。
それは次兄が嘘の報告をするからだけど。
 
今はもういいやと言う気持ち。
母が次兄を思って幸せならそれでいい。
 
「マー坊と暮らしたいの?」
聞くと母は大きくうなずいた。
 
「それが、よかよか」
笑顔だった。
 
母名義のお金もかなり有る。
次兄と暮らすのが母には幸せだろう。
 
私は母への愛が醒めてしまった。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

母の記憶の取捨選択

ホームに行くと母は入浴中だった。
私は母の乱雑に脱ぎ散らかされた服を片付けた。
 
母の誕生日に贈ったフリーザフラワーはゴミ箱に捨ててある。
替わりに次兄が持って来たベゴニアがテーブルの上に飾ってある。
 
手術の前の日に母に会いに行った。
夫に運転してもらい痛み止めを注射して出かけた。
 
「骨折したからしばらく行けないよ」
母に伝えるためにだ。
 
「見せて!」
骨折したと伝えると母はねだった。
 
袖をまくって紫色に腫れた腕を見せた。
 
「たいした事無いね」
母はつまらなさそうに言った。
 
 
「昨日、お坊ちゃまが来てね。お母様にと花を呉れたの」
その方が大事と言わんばかりの笑顔で話した。
 
 
母にとって私の傷の心配よりもよりも次兄の来訪がウェートが有る。
馬鹿な自分に腹が立った。
 
 
そんな事を思い出していると母が部屋に戻って来た。
 
私は持って来たみかんを母に渡した。
母は食べながら言った。
 
「ねえ、知ってる?明子は死んだんだよ」
 
何を言うのだろうと私は笑いながら答える。
 
「明子は死んでいないよ」
「ここにいる」
私は自分を指差した。
 
「でも、死んでいると聞いたもの」
母は言い張る。
 
「じゃ私は誰?」
聞くと母は自信無い顔で答える。
 
「えーと、明子だったかね」
「死んだって聞いたけど」
 
「葬式で骨が風呂敷きに包んであったけどね」
 
母は納得しない顔で答える。
 
 
もう母は自分の子供も分からないのだろうか。
認知症だから仕方が無い事だ。
そう思った。
 
おやつの時間を潮に帰ろうとした。
 
「じゃ、また来るね」
私は母をおやつの場所であるホールに連れて行った。
車椅子のブレーキをかけた。
 
 
「マー坊の所に行こうよ」
母は車椅子で追いかけて来た。
笑顔だった。
 
次兄の事は忘れていない。
 
「行かないよ。忙しいから」
私は愛想無しに答えた。
 
そんなマー坊がいいならマー坊の所へ行け!と心の中で叫んだ。
 
母を人殺しと言いふらした次兄。
 
「俺はお袋が嫌いだからね」
言い放った次兄。
 
それでも母は次兄がいとおしい。
 
母の記憶は取捨選択している。
次兄の記憶は母に決して忘れられない。
 
 
 
 
 

入院してます

自宅の階段から落ちた。
 
100円ショップで買った靴下が原因。
 
滑りやすい靴下だと思っていたが。
 
安物を買って大きな出費を強いられた。
 
月曜日には手術。
生まれて始めての経験だ。
 
退院しても車の運転はしばらく出来ない。
 
母が寂しいだろうと自分の不注意に腹が立つ。

あなたの寿命は?

「俺は長生きはしない」
夫は言う。
 
毎日浴びるほど酒を飲む。
人の3倍以上食べる。
 
母親は心臓病で亡くなった。
 
悪い条件が重なっている。
 
それでも自分が死んだ後の事を考えてはいない。
 
「いいようにしてよ」
無責任に言う。
 
葬式出すのもだって高い。
「家族葬にしてよ」
 
夫は気楽だ。
お坊さんに払うお金だって100万を超える。
 
それに固定資産税。
息子は払えるのだろうか。
 
夫の寿命をあるサイトで調べてみた。
予想どおり後4年。
 
私は後20年。
 
20年もあるのか。
そしてその日は必ずやって来るんだ。
 
20年生きても両親の年には及ばない。
それまでしっかりと生きていたい。
 
「お前は長生きだね」
「お父さんの家系だね」
 
母はいつだったか私の顔を覗き込んで言った。
 
「私はそんなには長生きはしないよ」
そして付け足した。
 
 
 

.
アリス
アリス
女性 / 非公開
人気度
Yahoo!ブログヘルプ - ブログ人気度について
1 2 3 4 5 6 7
8 9 10 11 12 13 14
15 16 17 18 19 20 21
22 23 24 25 26 27 28
29 30 31

ブログバナー

標準グループ

スマートフォンで見る

モバイル版Yahoo!ブログにアクセス!

スマートフォン版Yahoo!ブログにアクセス!

友だち(8)
  • あぁ茶ん
  • 初詣は靖国神社
  • こもちゃん
  • タイガー
  • lonsan
  • たこ焼き
友だち一覧

よしもとブログランキング

もっと見る

[PR]お得情報

CMで話題のふるさと納税サイトさとふる
毎日お礼品ランキング更新中!
2019年のふるさと納税は≪12/31まで≫

その他のキャンペーン


プライバシー -  利用規約 -  メディアステートメント -  ガイドライン -  順守事項 -  ご意見・ご要望 -  ヘルプ・お問い合わせ

Copyright (C) 2019 Yahoo Japan Corporation. All Rights Reserved.

みんなの更新記事