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日本音楽の黎明

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日本音楽学校(現東京藝術大学)の初代校長伊澤修二については、これまで以下の記事で取り上げてきました。

<「君が代」の成立>2006/1/3(火)
<日本音楽の成立ち(3)/團伊玖磨の講演録「創るということ」から>2006/2/15(水)
<「日本人作曲家の誕生」/日本音楽の成立ち(16/21)>2006/3/28(火)

本書の著者・奥中康人さんは、京都市立芸術大学日本伝統音楽研究センター特別研究員で、ご専門は近現代日本の音楽史。本書では西洋音楽を日本にどのように移植していったかがつぶさに述べられています。そういった意味で、伊澤修二が携わった「君が代」についての記述はなく、唱歌についてもあまりページがさかれていません。

とは言え、西洋音楽が明治維新前後の当時において、どのように受け止められ、それを日本に移植するに至ったかについて知ることによって、現代における唱歌の存亡の実態が理解できます。伊澤修二が唱歌を通じて目指したものは、国家、民族としての意識の再構築だったと著者は述べます。

〜維新まで幕藩体制による地方分権下の日本人は、国民意識に乏しく、方言もまちまち、国語も統一されていなかった。また、ドレミが歌えない国は、当時西欧諸国から未開とみなされていたらしい。七音音階を歌えるようにしつつ、歌に国家意識を盛り込んで発音を標準化すること、テレビのようなメディアもなかった時代、国際的に先進国家と認められ、各人に国民意識を持たせる為の政策として、「唱歌」に代表される「音楽教育」はうってつけだったのである。〜(出版社HP)

なぜ、国民意識の構築と唱歌が結びつくのか?伊澤は次のように考えていたようです。

「(伊澤が)関心をもっていたのは、ただ鳴り響く音声だけではなく、音声を発する身体器官そのものと、声にかかわる技術一般、つまり、口腔内の軟口蓋や咽頭や口唇、舌等の器官とその運動にもおよんだ。日本人には特定の音がうまく発音できないこと、特定のピッチが出ないことをまず確認し、近代教育を受けていない日本人の発声器官が、教育を受けている先進諸国の西洋人にくらべて野蛮で未発達であると考えた」。

「洗練された話し言葉をもち、あるいは歌うことのできる欧米の国民のように、日本人が文明的な国民の声をもつためには、その身体能力の差を解消することによって可能となる。つまり、音声器官が改良・矯正の対象となり、その解決のために有効な方法として学んだのが、ベルの視話法やメーソンの唱歌教授法なのである」。

「唱歌は、科学によって裏づけられている(と考えられていた)七音音階で歌われていることが重要であり、そこに文化相対主義的な価値観が入り込む余地はまったくなかった。トレーニングによって音声器官が改良されると、日本音楽も改良されるだろうという楽観的なヴィジョンが伊澤の頭の中にはあったはずだ」

「これは国語問題を例にすればわかりやすい。伊澤は文明国であるアメリカの国語(英語)を日本に移植しようなどとはまったく考えていなかった。言語障害者への啓蒙活動や地方の方言矯正によって、それまでにあった日本語を改良すれば、標準的な国語によって円滑なコミュニケーションがおこなわれるとかれは信じていた」。

「視話法が、英語普及のための道具でなかったように、メーソンの唱歌教授のメソッドは、必ずしも西洋音楽を普及するための道具ではなかった。日本のさまざまな声の文化を均質化、標準化して、それまでにまったく存在していなかった、全国民が同じメロディで声をあわせて歌うためのメソッドなのである」

伊澤修二は明治政府の文部官僚であり、西洋音楽の実相に最初に触れた日本人でした。そういった意味で当然ながら「音楽家」ではありませんでした。ですから西洋音楽そのものを純粋に日本に移植しようとしなかったと言って、彼の功績が失われることがあってはならないと思います。彼の最大の関心は、言葉とその発声でした。晩年の伊澤は、吃音矯正事業に務めたり、東京盲唖学校の校長となって、こうした人々のサポートを行っています。

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