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昨日取り上げたアルケミストの即興には目を見張るものがありましたが、即興ということに関して、先日読んだ茂木健一郎さんの対談集「芸術脳」で、対談者の一人であるジャズ・ミュージシャンの菊地成孔(なるよし)さんとのこんな会話がありました。
茂木:クラシックも成り立ちはジャズみたいなもんですよね。モーツァルトの時代とか。
菊地:作演一致の時代はそうですよね。作曲家と演奏者が一致しているって、いまはもう現代音楽しかないですよね。ジョン・ケージなんかは、ある意味そう。でも、ロマンティックな、前近代のものはもう作演一致と一緒に失われてますよね。
茂木:バッハの「音楽の捧げ物」って、たしか即興ですよね。しかも、その演奏をしたときって、バッハが初めてピアノという楽器を目にしたときでもあるそうで。
菊地:そうそう、そうです。
茂木:ピアノという楽器が発明されたばかりで、王様がバッハに向って「この楽器でこんな曲を作っちゃたよ」って言ったのを受けて、バッハが「では、私も」って即興で作って演奏したのが「音楽の捧げ物」でしょ。今の時代からするとびっくりなエピソードなんですけど。
菊地:そうですね。当時のクラシックの現場ってサロンですから。それがオペラの発生ぐらいから、音楽会で一般から入場料を取って音楽を聴かせるという形になった。音楽が商品になったんですね。それ以前の即興というのは、モーツァルトだとサロンやパーティでの即興だけど、その前のバッハになると、もうちょっとトランシーな状態での即興だと思うんですよ。
茂木:トランシー?
菊地:そう。キリスト教に対する、極端に敬虔な気持ちというのがまずあって、礼拝のときにオルガンに向って、一気に弾いていったっていう側面があると思います。
菊地成孔さんのことは今回初めて知りましたが、クラシックからジャズへ転進されたそうで、音楽家として私塾「私立ペンギン音楽大学」を主宰するほか、アテネフランセ映画美学校の音楽美学講座メソッド科主任講師、東京大学教養学部(04-05)、国立音楽大学(06-)、東京芸術大学(07-)、慶應義塾大学(08-)などでも非常勤講師を務められ、著書も多数の博学な方なんですね。
ちなみに、ここ話されている「王様」とは、第3代プロイセン王(在位:1740年- 1786年)のフリードヒ2世(1712年 - 1786年)のことで、「フルート演奏をはじめとする芸術的才能の持ち主でもあり、ロココ的な宮廷人らしい万能ぶりを発揮した。その功績を称えてフリードリヒ大王と尊称されている」そうです。バッハが1747年5月7日にフリードリヒ大王の宮廷を訪ねた際、ハ短調のテーマをこの大王から与えられて書いた「音楽の捧げ物」とは、こんな曲です。
<音楽の捧げもの>
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E9%9F%B3%E6%A5%BD%E3%81%AE%E6%8D%A7%E3%81%92%E3%82%82%E3%81%AE
<J.S. Bach- The Musical Offering Part1>
http://www.youtube.com/watch?v=ZQWsOG7IJA0&feature=related
<Bach - Musicalisches Opfer - 1. Ricercar A 3>
http://www.youtube.com/watch?v=W_1JCqjHMzM&feature=related
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